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米国 Vol.02リクルーターは専門職 採用のプロとして経営戦略をサポート

米国におけるリクルーターは専門職であり、その業務内容は日本とは大きく異なる。米国企業はリクルーターの育成に注力し、リクルーター本人も能力開発に余念がないという。米国リクルーターの実際を探る。

米国ではリクルーターは「採用」の専門職である

2016年卒者の就職活動解禁時期の後ろ倒しなどの影響で、新卒採用の一環としてリクルーター制度を導入する日本企業が相次いでいる。日本では、大学の研究室やサークルなどを訪問し、学生に事業内容や社風などを直接説明したり、質問に答えたり、助言を与えるという役割を担う若手社員のことをリクルーターと呼ぶケースが多いようだ。

一方、米国における「リクルーター」という職業は、日本と比べると、担当業務の広さや求められる専門性が根本的に大きく異なる。インターンや新卒の採用から、中途採用、採用ブランディング、バックグラウンドチェック(身元調査)、オンボーディング(新規採用者の組織への迅速な順応と定着のサポート)までさまざまな責務を担う。リクルーターが、人員の配置転換や昇進に適した人材を社内から発掘する場合さえある。

先進企業では、採用業務を担うだけでなく、現在の従業員構成を把握し、事業部が必要としている人材のニーズを深く理解し、将来どのような人材が必要になるのかを予測(ワークフォースプランニング)。外部労働市場に関する豊富な知識をもとに、タレントマネジメント全般に精通した社内コンサルタントとして事業部や経営幹部に対して助言し、経営戦略をサポートする「タレントアドバイザー」の役割もリクルーターに求めている。

優秀なリクルーターの育成に注力する米国企業

優秀なリクルーターを育成するため、各社は教育に力を入れている。

たとえば、フェイスブックでは社内の新人リクルーターの育成に、講習だけでなく、先輩リクルーターの面接の様子を観察するシャドウイング、リバースシャドウイングといった研修を受けさせている。独り立ちし、候補者と接点を持てるようになるまでに1年かける。

AT&Tでは20週間の営業向けカスタマーサービス研修をリクルーター全員にも義務付け、候補者と人間関係を構築し、自社の魅力を売り込む交渉・営業力を身につけさせている。

リンクトインでは、同社が求める優れたリクルーターの定義を明確にするため、ソーシング&人材パイプラインの構築、影響力、ストーリーを語る力、問題解決能力、クロージングといったリクルーターに求められる主要コンピテンシーを6つ洗い出し、これをもとに120時間に及ぶリクルーター研修プログラムを設計した。この研修では自社のコアバリューやビジネスモデルなどに関する試験も含まれ、ストーリーを語る力については、ロールプレイング研修の様子を撮影し、スコアをつけ、合否を判定している。

またペプシコでは、毎年世界中の拠点から採用担当者を集め、優良事例などを共有する「Global Talent Acquisition Summit」を実施。優れた業績を挙げたリクルーターを表彰する「Higher and Higher Award」を実施している。

リクルーターとして独り立ちした後も継続的な採用力の向上を要求する。AT&TやGEでは、候補者を採用した部署のマネジャーと新規採用者の双方を対象とした採用体験に関するアンケート調査を実施。リクルーターの対応は迅速だったか、プロフェッショナルだったか、採用プロセスについて十分な説明はあったかなど多面的にフィードバックを収集し、結果をリクルーターの査定に反映させている。

リクルーターに特化したカンファレンスもある

2014年4月、筆者はカリフォルニア州サンディエゴで行われた「ERE Recruiting Conference & Expo 2014 Spring」に参加した。これは、ERE.netやThe Fordyce Letterといった採用や人事のプロフェッショナル向け無料情報サイトを運営するメディア会社ERE Mediaが毎年春と秋に主催するリクルーター限定のカンファレンスだ。大手企業の採用担当者がノウハウと秘訣を明かす講演と、求人求職サイトや採用管理システム会社などが最新サービスを紹介する展示会から構成されている。過去にはロバート・ライシュ元米労働長官やペンシルベニア大学ウォートン経営大学院ピーター・カペリ教授などが基調講演を行った。15回目となる今大会には、アマゾン、アクセンチュア、グーグル、GE、デロイト、ナイキ、フォーシーズンズホテル&リゾート、ペプシコ、マイクロソフト、ホンダノースアメリカなどから約500人のリクルーターが参加した。

講演の内容は、IT人材の採用やグローバル採用戦略の構築、社風に合った人材の採用方法、優秀なリクルーターの採用と定着、採用活動のメトリクス(効果測定指標)といった普遍の課題に関するものから、高等教育に近年見られる変化と新卒採用へのインプリケーション、RPO(採用業務代行)サービスの選び方、リファラル(縁故)採用の効果など、近年の採用活動のトレンドの紹介まで多岐にわたった。

昼食は、業種や従業員規模、抱える課題など33のテーマに分かれたテーブルで食事をしながら交流する。講演終了後も、主催者や協賛企業によるアフターパーティ、チャリティポーカー大会、プライベートのワイン会といった交流の場が多数設けられている。

米国のリクルーターたちは、「採用のプロ」が集うEREのようなカンファレンスに毎回参加することで、企業の枠を超えた横のつながりを築き、課題解決策について情報交換し、先進企業の採用方法やリクルーター向けITサービスの最新トレンドについて学び、自社の取り組みに役立てている。

海外からの優秀な人材の確保を狙う日本企業の人事は、人材獲得競争においてこのような外資企業を相手にしていることを意識する必要があるだろう。

 

グローバルセンター 杉田万起