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米国 Vol.01“Post and pray” (求人広告を出して祈るように待つ)の終焉

採用手法は、国による違いだけでなく、地域や企業規模、職種によってもさまざまに異なる。ここでは、採用・求職活動においてもソーシャルメディアの活用が進む米国の動きをレポートする。

国によって異なる採用プロセス

世界において最適な採用経路は何だろうか。そんな疑問をもとに2014年3月、20カ国のリサーチを開始したが、十人十色、いや20カ国20通りと実に興味深い。答えはそんなに簡単なものではなく、地域、企業規模、職種やポジションなど多くの変数によってその結果が導き出されているようだ。共通して高い割合を占めているのは“縁故”で、また、若年層の採用ではインターネットを利用した採用手法が利用されている。

米CareerXroads 社の採用経路調査によると、米国の大手企業は下記のような採用手法を利用している。

・従業員による紹介(縁故)

・企業のウェブサイトの募集ページ

・求人・求職サイト

・ダイレクトソーシング (リクルーターが直接候補者を見つける)

・新卒採用(大学)

・元従業員の再雇用

・サードパーティエージェンシー

・ソーシャルメディア

・紙媒体

・紹介予定派遣・契約

・就職フェア

・飛び込み

この採用経路のなかで、どの求人・求職サイトやソーシャルメディアが効果的なのか、どの大学の何学部に自社にとって適切な人材が多いのか。激変する環境変化のなかで、どの採用プロセスが最も効率がよく、また効果的なのか。どの最先端のテクノロジーを利用したらよいのか……。過去15年間でリクルーティングが複雑化し、どのような手法を利用するかは結果に大きな影響を及ぼすようになったため、リクルーターは何が最適な方法なのか常にウォッチしている。

以下では、上記の採用手法のなかから、縁故とソーシャルメディアの関係性など、変化の大きいインターネットを介した採用プロセスについて述べる。

先頭を走る米国の採用のカギはテクノロジー

採用・求職活動はソーシャル化、モバイル化が進んでおり、リクルーターはテクノロジーを駆使して、より効果的、効率的な採用方法を追求し続けている。近年は、バーチャルキャリアフェアや動画面接を活用し、求職者のバーチャルな接触機会を増やすことで、採用コストや採用に要する時間を削減する企業も増えた。

ソーシャル化は、社員による紹介、いわゆる“縁故”が中心だが、企業は知人を紹介した従業員に対してボーナスを支給するなど、ソーシャルメディアとリアルな制度とを上手に接続し利用することで、潜在的な求職者の開拓に繋げている。“縁故”は、従業員という一次スクリーニングを通すことで、質の確保にも寄与している。

縁故のハブに利用されるFacebookやLinkedInなどのソーシャルメディアでは、企業ページで採用イベント、会社ブログの最新記事、社員紹介ビデオを公開するのは日常的で、ここ数年は、求人・求職機能を常時グレードアップし、紹介機能を向上させている。つまり、ソーシャルメディアの求人・求職サイト化である。

たとえば、LinkedInでは、紹介したい候補者の人物の顔写真と自分(紹介者)との共通点がピックアップされ、最も効果の高そうな人材を自動的に選ぶことができる“How You’re Connected機能”のサービスをはじめた。さらに、個人のプロフィールが閲覧された回数や、閲覧したユーザーの業種、職種、プロフィールなど、どのような人に自分が検索されたのかという詳細情報を知ることができるサービスなど、ソーシング(求職者へのアプローチ)する、される双方に対する機能を充実させている。

ソーシャルメディアの台頭で、苦戦していた大手求人・求職サイトのMonster.comやCareerBuilderも企業のニーズに対応して、従来の機能に、金融、人事、IT、マーケティング・広報、クリエイティブ、ヘルスケアなどの専門特化型“Talent Network”の機能を付加して、クロスポスティング化することで応戦するなど、専門人材にアプローチするためのテクノロジーは各社、各サービスともに日々進化している。

専門人材はどこにいるのか

近年の採用課題はソーシング、つまり世の中にある大量のデータから、どのように最適な人材を発掘できるかであり、“ソーサー”という名称の、ATS(Applicant Tracking System )を駆使して宝探しをするスペシャリストを利用する大手企業も多い。米国で年に2回行われるソーサーのための会議“Source con”では、人材争奪戦のための戦術、常に変わりゆく武器(ATSや最新のテクノロジー)などを研究する。

しかし、残念ながらテクノロジーを駆使してすべての情報が入手できるというわけではない。
なぜなら、米国は職種別労働市場であり、高度専門人材であるほどレジュメ(履歴書)は一般的なサイトには登録していない。企業内や、いわゆるニッチの世界に身を置いているため、顕在的な求職者も多くない。たとえば多くの人事担当者はSHRM(Society for Human Resource Management)という団体に個人で入会し、そこで流通する人事関連の求人情報などを得て転職するなど、クローズ化された情報の中で次のポストを獲得することも多い。

“祈って待つ”から“狩り”の時代へ

1980年代は求人広告を貼り求職者が見てくれるのを祈って待つ。1990年代はオンライン化。2000年代は登録された膨大なレジュメを検索する。2010年代はソーシャルメディアと融合したアプローチへと変化している。祈って待つ時代は終わり、リクルーターはテクノロジーを駆使した狩りをする時代になった。米国の採用プロセスは、過去15年間で大きく変化を遂げ、顕在化した採用領域から、潜在化された領域まで踏み込むことができるようになっている。英語圏では米国の採用手法をグローバルスタンダードとし、手本にしている国も多い。

今後は、職種ごとのコミュニティから、ニッチの世界まで踏み込み、さらに深いところに位置する潜在層にいかにリーチすることができるかが人材獲得の争点となるだろう。

 

グローバルセンター長 村田弘美