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チリ Vol.01ラテン的長期有給休暇のススメ

チリでは、労働法で有給休暇の10日間連続付与が義務付けられている。そのため、あらゆる所得階層においても長期休暇を取得し、ゆっくり休む。こうした法律のない日本では、長期の連続休暇は実現できないのだろうか。

10日間の連続取得が義務

クリスマスと年末年始が過ぎると、南米チリでは本格的な夏のバカンスシーズンを迎える。1~2月の間、多くのチリ人は2週間以上の長期休暇を取ってリフレッシュする。

チリの労働法で定められた有給休暇日数は年間15日間(1年以上勤務している従業員)と世界の平均的な日数だが、誰もが長い休暇を取っているのは、職場や道端で老若男女が常に休暇の話をしているからではなく、労働法で10日間の連続付与が義務付けられているためである。年間の有給休暇15日のうち営業日10日分は連続で付与しなければならず、全ての労働者が休・祝日の並びによっては2~3週間の休暇が取れる。

こうした法律はチリに限ったものではない。ほかにも世界的に有給の休暇日数が多く、取得率も高いとされるフランスやブラジルでは、労働法や休暇法で連続して休暇を付与するよう定めている。

法定年次休暇日数(2014年)

祝祭日

年次有給休暇

連続休暇の規定

フランス

11日

25日

連続12日

ブラジル

15日

12~30日(前年の欠勤日数による)

有給休暇は、原則として年1回、一括連続で供与する。例外的に2回の分割が認められる。

日本

15日

10~20日(継続勤務年数による)

規定なし

チリ

14日

15日

連続10日

出所:EIRO(フランス、労使協定による実際の年次有給休暇は平均30日)、OVTA(ブラジル)、厚生労働省(日本)、チリ労働省

長期休暇はカリブのビーチや国内のカバーニャで

チリ人はこの連続休暇をどう過ごしているのか。

チリは、北部のアタカマ砂漠や隣国アルゼンチンとの間に連なるアンデス山脈、南部のパタゴニア地域、サンチャゴ界隈のワイナリー、イースター島のモアイ像など、海外から多くの観光客が訪れる観光資源に恵まれている。しかし、そのような場所でチリ人の観光客を見かけることはほとんどない。

チリ人の富裕層の間では、ブラジルやカリブ海のビーチリゾートに滞在したり、米国や欧州を観光する過ごし方が人気だ。中所得層はサンチャゴ近郊の海沿いや森にある別荘、カバーニャと呼ばれるコテージ風の貸別荘などで、家族や友人とのんびり長期滞在する人が多い。中所得層以上の家庭はナナ(お手伝いさん)を雇っていることが多く、長期休暇にナナを同行させることもある。また、サンチャゴ在住の低~中所得層はチリ南部の出身者が多いため、安価な長距離バスやすし詰め状態で乗った自家用車で移動し、丘陵地帯や湖畔の避暑地にある南部の実家、親戚が所有する別荘に滞在する。別荘や実家だけでなく、低コストで長期滞在できるカバーニャが多いのは、長期休暇があらゆる所得階層に一般化している社会ならではといえるだろう。

2010年のサンホセ鉱山の落盤事故では、日本の報道で「まじめ」「忍耐力がある」などと評価されたチリ人だが、休暇に関しては連続取得の法的権利があるため大手を振って休む。チリの日系企業に長年勤める40代のチリ人女性は、「日本企業の『休みを取りづらい雰囲気』は社内でも感じる。でも私たちは毎年必ず2週間の休暇を取るし、連続休暇以外の5日間も上司と相談して必ず取るわ」と、当然の権利として毎年長期休暇を取っていると言う。

一方、チリに進出する日系企業からは、「全従業員が長期休暇を取得すると業務に支障をきたす場合がある」と業務への影響を懸念する声や、「2週間の長期休暇を望んでいない従業員も多いため、連続取得の義務は営業日5日間を限度としてほしい」といったより自由度の高い休暇取得方法を求める意見も聞かれおり(*1)、長期休暇に対する認識の違いが見られる。

日本でも2週間程の連続休暇を

翻って日本では、連続2週間程度の長期休暇を「取得したいと思うが、仕事の都合がつかなくて取れない」という人が56%と約半数を占め、取得のために必要なこととして、「長期休暇を取りやすくするような職場の雰囲気の改善」(61.5%)や「休暇中のサポート体制の整備」(53.1%)が求められている(*2)。連続休暇が法律で義務付けられていない日本では、製造業やサービス業などで夏季一斉休業を実施している企業もあるが、長期休暇と言えばゴールデンウィークやお盆、年末年始の1週間程度、という組織が一般的だろう。

チリの祝祭日と年次有給休暇日数を足すと、年間29日で日本とたいして変わらない。有給休暇の取りやすさは連続休暇を定める法律の有無に大きく影響を受けているとはいえ、年末年始や飛び石連休に有給休暇を組み合わせる、業務の閑散期に有給休暇の付与日を設けて大型連休とする、計画表を取り入れて交代制で個々に休暇を付与するなど、日本でも企業・部署・個人レベルでの工夫はできる。

週末では回復しきれない心身の疲れを取るためにも、工夫や計画を練って、チリ人のように長期間連続してのんびりできる時間を確保することが望まれる。

(*1)『日本チリ経済連携協定【EPA】における運用実態把握アンケート調査について』/日智商工会議所・ジェトロ
(*2)『年次有給休暇の取得に関する調査』労働政策研究・研修機構

グローバルセンター 北野愛子