Works Web Special

Vol.03津田大介氏

今月のGuest
津田大介氏
ジャーナリスト
メディア・アクティビスト

津田大介氏といえば、多くの人が想起する姿は「金髪のジャーナリスト」である。しかしここでは、「司会者」としての津田氏に注目したい。中竹竜二氏は津田氏が司会を務めるパネルディスカッションを観て、「掛け値なく面白い」と評価する。そして、津田氏の司会としての場づくりを「次世代のリーダーシップに応用できる」と言い切る。津田氏はなぜ、いい「場」を作り出せるのか。中竹氏が津田氏に問い掛け、「司会」と「リーダーシップ」の関係を考える。

Tsuda Daisuke_大阪経済大学客員教授。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。東京工業大学リベラルアーツセンター非常勤講師。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。ポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」の創業・運営にも携わる。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)など著書多数。

「話したいこと」を話させる。だから伸び伸び話せる

津田大介氏

中竹 津田さんが司会をすると、すごく面白い場になります。リスナーは、パネリストの言葉に深くうなずくときもあれば、思わず大笑いするときもある。そして、何より、パネリストが気持ちよく、楽しそうに話しています。組織に直結させるのならば、まずは会議の場に応用できますよね。司会者がリーダーで、パネリストは部下たち。リーダーが津田さんのような司会ができれば、会議で部下は生き生きと話せるようになる。まずは、パネリストに楽しんで話してもらうコツについて教えてください。

津田 気をつけていることは、「パネリストが話したいこと」を話してもらうことです。パネリストの話につぶさに耳を傾けて、「この話をしたいんだな」と思ったら、そこを深く突っ込んで聞きます。たとえ進行上、時間が押しているなとわかっていても、です。それはパネリスト同士のインタラクションが始まっても同じで、流れに任せます。それぞれのパネリストの「見せ場」を作ろうと司会者が努力すれば、パネリストは気持ちよく、伸び伸び話せます。

中竹 確かにそうですね。でも、人によっては質問を投げても、自分の意見をうまく言えなかったりすることはないですか。話すことの得手、不得手もあると思います。

津田 もちろん、話すことに慣れている人ばかりではありません。そして、たいていの人はいきなり振られると答えられません。でも、1度質問してうまく答えられなくても、質問を変えるといい答えが返ってくることがあります。だから、どんな質問の仕方だったらこの人はうまく答えられるのか、僕はいつも考えているんです。

中竹 経験談を話すのがうまい人もいれば、抽象的な概念を用いたほうがうまく説明できる人もいる。同じ質問を繰り返すよりは、質問する側は、違う方向からボールを投げたほうがいい答えが返ってくる確率が上がる、ということですね。

集団のなかでも1対1で向き合えば、場へのコミットは上がる

中竹氏

中竹 津田さんの場合、パネルディスカッションと言いながら、実は個人個人の話を引き出すことに力を入れている。「集団」ではあるけれど、やっていることは「1対1のインタビュー」です。

津田 それはライターという経歴が長く、インタビュー経験が基盤にあるからでしょう。

中竹 僕はインタビュー経験が津田さんの司会のコアであることが、とても大事なポイントだと思います。まずは1対1で相手の気持ちを引き出すことを優先する。その場に参加する全員が気持ちよく、自分の意見を言える。そうすれば、一人ひとりの場へのコミットが確実に上がります。会議で発言するのが全体の2割、なんてことはなくなるわけです。

「リスナー=顧客」を意識して発言を導く

中竹 でも、同時に疑問がわいてきます。パネリストのバックグラウンドや考え方はそれぞれ異なります。その人たちがバラバラに気持ちよく言いたいことを言っていたら、場の収拾がつかなくなりますよね。会議で言えば、意見だけいろいろ出て、結論に至らない、ということになります。

津田 方法はいろいろあります。1つは質問するときに、「補助線」を引くこと。「(前で発言した)○○さんの話とつながるところがあると思いますが」と前置きをして質問すると、パネリストはその情報を踏まえて話をしてくれます。

中竹 チームワークの1つの方法ですね。バラバラに言いたいことをそれぞれ言っているように見えるけれど、ほかの人が話したことを、場を仕切る人が材料にしてつなげていく。そうすれば確かに議論はまとまる方向に向かっていきます。

津田 そして、最終的には「目の前にリスナーがいる」ことが僕にとってはとても重要なんです。

中竹 リスナーがいると、何が違うんですか。

津田 リスナーは、そのパネルディスカッションを聴くために、わざわざ来てくださっているわけですよね。面白いと思ってもらえる場にしなければ、そこに来た時間を無駄にさせてしまうことになります。僕はライターという仕事を長くやっていましたから、リスナーとしてパネルディスカッションを聴きにいったことがたくさんありました。決まりきった質問を順番にしていくような場はとてもつまらなかった。それが場をつなげて、場に意味を持たせようとするモチベーションにつながるんです。

中竹 具体的には、司会者はどのようにリスナーを意識すべき、と思っているんですか。

津田 リスナーにはそれぞれ、そこに来た目的があります。年齢も違えば職業も違う。学びたいことも違う。だから、どんなリスナーで、どんな目的で来てくれたのか、リスナーの顔を見ながら考えます。自分がその立場だったら何を知りたいだろう、ということを頭の片隅にいつも置いています。

中竹 これも重要なポイントですね。今、僕は「会議にはリスナーはいないなあ」と思っていたんですが、決してそうではない。見えないけれど、会議の先にはその会社が商品やサービスを提供している「顧客」が存在する。そこを見失わないように、リーダーが部下の発言を導くことが重要だということですね。これは、「目からウロコ」です。

その日、最も面白い意見にMVPを!

津田大介氏

津田 そういう意味では、「ディスカッションの最後にこだわる」ことも、重要かもしれません。「終わりよければすべてよし」です。

中竹 どういうことでしょうか?

津田 簡単に言えば、「その日のMVP」に最後を締めてもらうんです。これも自分がリスナーだったときの経験なんですが、その日、いちばん面白い人がいたとしても、たいてい締めはその人ではなくて、席順に「じゃあ一言ずつ」ということになってしまいます。そうすると、いちばん大事なこと、面白いことはリスナーの心に残らない。

中竹 でも、「この方が今日のMVPです」と宣言するわけにもいかないし、なかなか順番は難しいですね。

津田 そうなんです。とびとびに話を聞くのも不自然だし、「MVP」と僕が思っている人を最後に持ってくるにはどうしたらいいか、その場でぐるぐる頭を巡らせます。年齢順とか、トピックをつなぐ、とか。最後が「グダグダ」だと、損した気持ちになります。

中竹 僕は日本の会社の会議の大きな問題点は、結論を出さないまま終わることだと思っています。そういう意味でも、津田さんの「終わりよければすべてよし」は学ぶところがあります。会議の結論を先延ばしにしないためにも、あるいはただ声が大きい人の意見を通してしまわないためにも、その日、最も面白い意見を言ったMVPにはきちんとフォーカスしたほうがいい。よく言われることですが、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」を意識するべき、ということです。

津田 ……なんていろいろ話してきましたが、社長として自分の会社でこれができているかというと、そうでもありません。本やメルマガというアウトプットは、僕の名前で一人歩きします。だから、とことんまで「こうやって」と社員に指示してしまうし、彼らの意見に一生懸命耳を傾けているかというと、微妙かもしれません。

中竹 最終的なアウトプットを目にする読者を「リスナー」ととらえて、津田さんの司会者としてのあり方を会社の場づくりに持ち込んだら、すごくいい会社になると思います。

津田 そうですね。一度うちの会社でも、そうやって会議をやってみようかな。


組織とは「場」の連続でできている

中竹氏

中竹竜二氏
日本ラグビーフットボール協会
コーチングディレクター

今回の津田さんとの対談は、津田さんの司会のあり方を「ミーティングの場づくり」に持ち込んだらどうなるか、という論点で進んでいきました。そして、下記のような学びがありました。

● 参加するメンバーに「1対1」で向き合い、気持ちよく言いたいことを言ってもらって、「場」へのコミットを上げること
● 司会者となるリーダーが、常に先にいる「顧客」を意識して、発言をつないでいくこと
● よりよい結論を出すために、発言の面白かった人にフォーカスすること

多くの社内会議では活発な意見が出ません。そして、ゴールに対する意見の善し悪しではなく、声の大きさ、ポジションの高低で意思決定されることも少なくありません。ダイバーシティを本気で大切にしたいならば、それぞれのメンバーが持つ個性を引き出し、それが意思決定に反映されるような「場」を作ることに力を注ぐ必要があるでしょう。

また、今回の話は「ミーティングの場づくり」に限定した話ではありません。組織とは「場」の連続です。1シーン1シーンで生み出される成果の蓄積が、組織全体のパフォーマンスにつながります。津田さんの司会のようにゴールを常にイメージし、メンバーの個性や強みを引き出してつないでいけば、最終的なチームとしてのパフォーマンスは極大化できます。

大事なことは、パネリストが気持ちよく話していること。仕事に置き換えれば、メンバーはやりたいことをやっている気持ちになっているのです。これは、一人ひとりの力を活かす、次世代のリーダーに求められる態度だと思います。

 Nakatake Ryuji_1993年早稲田大学人間科学部入学。4年時にラグビー蹴球部の主将を務め、全国大学選手権準優勝。97年卒業後、単身渡英。レスタ―大学大学院社会学修士課程修了。2001年三菱総合研究所入社。2006年早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任。2007年度から2年連続で、全国大学選手権制覇。2010年2月退任。同年4月、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任し、指導者の育成、一貫指導体制構築に努める。2012年度はラグビーU20日本代表監督を兼任。主な著書に『判断と決断』(東洋経済新報社)、『人を育てる期待のかけ方』(ディスカヴァー・トゥエンティワ ン)、『リーダーシップからフォロワーシップへ』(阪急コミュニケーションズ)、『挫折と挑戦』(PHP研究所)、『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP社)など多数。日本におけるフォロワーシップ論の提唱者の1人。

Text=入倉由理子 Photo=刑部友康