ワークス研究所 プレゼンツ WORKS PRESENTS

被災者の再就職支援には何が必要か? ― ワークス研究所 研究員 中村天江 (2011年8月8日)

もうすぐ震災から5カ月。震災後、特例措置で平時より90日間長く受け取ることができた失業給付も、早い人はあと1カ月で受給資格がなくなり、収入源が絶たれる事態に直面する。仕事を失った被災者の再就職はさしせまった大きな課題である。

震災によって仕事を失った人々

宮城・岩手・福島の3県ではすでに12万人もの離職者が発生した。6月5日までにハローワークで離職手続きをした人数なので、実態はさらに多い。津波の被害が甚大だった宮城県・岩手県の沿岸部では漁業や水産加工業、原発事故の影響が大きい福島県では農業や建設業の従事者が多く、高齢者比率が高い(総務省「国勢調査」)。

仕事は、住居や学校などと並ぶ生活の基盤だ。厚生労働省の「震災による雇用の状況」によれば、離職者の3割以上はそもそも失業給付の受給資格がない(失業給付は雇用保険の加入状況によって異なるため)。収入のめどが立たなければ、将来への不安はどれだけ大きいか。生活費の負担を避けるために、仮設住宅の入居を辞退するニュースが相次ぐのも、背景には仕事の問題がある。

強い地元志向と求人とのミスマッチ

ハローワーク石巻が5月下旬に実施した調査によれば(回答者2850人)、再就業を希望する地域が「宮城県外」なのは、求職者のわずか0.5%だった。「宮城県内」でさえ4.3%にとどまり、95.2%が「ハローワーク石巻管内」を希望。東京23区に住みホワイトカラー職種で転職を考える場合、人によっては、千葉県や神奈川県の仕事も選択肢に入りうる。地域への根差し方が、都会とは違うのだ。

しかし、ハローワークに集まった4.2万件の被災者向け求人のうち、宮城・岩手・福島県の求人は1割(6月3日時点)。県外求人への応募は少なく、再就職はなかなか進んでいない。

求人・求職者間のミスマッチもある。ハローワーク仙台の5月の「職業別求人・求職バランス表」によれば、求人が多い職種、求職者が多い職種は一致しない。さらに、仙台では女性求職者数が男性求職者数を上回る。震災前は主婦だった女性も、配偶者を失うなどの事情で仕事を探すようになったからだ。復興事業の中心は、体力が必要とされる瓦礫撤去や建設・土木関連の求人。このような仕事につく女性も出てきているが、女性向きの雇用機会が十分かという問題も生まれている。

地域復興につながる仕事、人材育成につながる仕事

地域への強い愛着は、復興への期待と表裏一体だ。復興プランが見えない中で、地域を、これまでの仕事をあきらめ、新天地に挑むという判断はしがたい。そのため、被災者の再就職支援で最も優先されるべきは、産業復興による地域の雇用創出と、それが軌道にのるまでの「つなぎ雇用」での雇用維持だ。政府は緊急雇用創出事業等によって20万人分の雇用を生み出すと発表した。行政サービスの補助、避難所の運営サポート、仮設住宅でのコミュニティ維持などさまざまな領域で被災者の雇用が始まっている。

加えて、もうひとつ重要な観点がある。学生を含む若年者の就業支援である。被災地の主力産業である1次産業と製造業は、グローバル化によって、今後さらに激しい競争にさらされる。そのような時代に、地域を活性化し、地元の次世代を担う人材を育成するために、一時的には県外で武者修行するような仕組みも重要だろう。

具体的な就業支援策は、このような雇用政策のベースとなる。ミスマッチを緩和するための教育訓練を含む、求職者一人一人の能力・経験、希望、転職可能性などに応じた、個別性の高いていねいな就業支援が求められている。