クールじゃないジャパン日本人は「本音と建前」の使い分けをやめるべきだ

ネパールにいた頃から、日本人の謙虚さや真面目さ、そして思いやりにあふれた日本文化が大好きだったというタパ・ケサブ氏。来日から十数年たった今でも、日本を愛する気持ちはまったく変わっていない。しかし日本への愛が深いゆえ、日本人の「本音と建前の使い分け」に対してはあえて苦言を呈したいのだという。
「日本政府は表向き、外国人労働者の受け入れを進めると表明しています。しかし、外国人が日本で住居を借りるのはいまだに大変ですし、役所に行っても英語のマニュアルは未整備。『本当は外国人を歓迎していないのでは?』と感じてしまいます」
本音を隠すコミュニケーションスタイルは日本人特有のものであり、そこにストレスを感じる外国人は極めて多いと、ケサブ氏は指摘する。
「たとえば、飛行機の長距離便で隣の人に話しかけたとき、日本人以外は迷惑であればNOと明確に言いますし、歓迎であれば話がはずみ、目的地に到着する頃には友だちになれます。しかし日本人は、本音では迷惑だと思ってもニコニコ笑っていることがありますよね。また、来日後に勤めた会社では、上司に笑いながら賛同していた同僚が、上司がいなくなったとたん悪口を言い始めたり、それまで親しげに話をしてくれていた同僚がある日突然、私に不満を爆発させたりしたことにも面食らいました。こうしたコミュニケーションは外国人にとって不可解で、大きな混乱をもたらすのです。それを嫌い、日本企業から外資系企業に転職する外国人も少なからずいます」
相手のため心を砕く「おもてなし精神」は、日本人の美徳。そして建前も、相手を不快にさせない配慮なのだろうとケサブ氏は理解を示す。しかし、特にビジネスにおいては、建前をやめるほうがずっとうまくいくというのが、ケサブ氏の信念だ。
「悪い点を率直に指摘するのは気まずいかもしれませんが、それは態度や行動の変容につながるのですから、結果的には相手のためになりますし、率直なコミュニケーションに慣れている外国人の側もいい気持ちで働けます。日本人はもっと、本音で仕事の話をするべきだと思います」

Text=白谷輝英Photo=平山 輪

タパ・ケサブ氏
Keshab Thapa ネパール生まれ。トリブバン大学卒業後、2004年に来日。2006年からデザイン・印刷業に携わり、外国籍経営者の広告宣伝などを担当。2009年、外国籍人材の紹介などを手がけるBGPLUSMEDIAを創業した。2016年には、外国籍経営者専用サポート事業「WinWinJapan」を設立。