フツウでないと戦力外?精神障害者

安定した仕事と安心して話せる場を

What's this number? 6.4%

2018年度からの精神障害者雇用義務化にともない、障害者の法定雇用率が上がることが予想される。それに備え、精神障害者の雇用を模索している企業も多い。既に、精神障害者の新規就職件数は急増しており、2013年度には身体障害者や知的障害者を上回った。だが、働く障害者全体に占める割合はいまだ6.4%であり、定着率も低い。身体能力や知的能力には問題がないにもかかわらず、仕事内容や人間関係が原因で症状が不安定になり、1年以内で離職する人が多いのだ。
こうした状況のなか、三菱商事の特例子会社である三菱商事太陽では、16名の精神障害者が中核的業務を担う。なかには勤続10年目を迎える社員もいる。代表取締役社長の山下達夫氏は「安定した仕事と安心できる人間関係があれば、彼らは十分に戦力になる」と語る。
山下氏が言う安定した仕事とは、量が一定で、本人の果たすべき役割が明確であることを指す。現在、同社で精神障害のある社員が主に担っているのは、取引先の調査情報や財務データの入力だ。専門的な知識は必要だが、彼/彼女らが苦手とする突発的な事態への対応は少ない。健常者と同様に、目標処理件数を明らかにして達成率やエラー率などの数値で評価し、その結果を本人に伝えている。

精神障害者はコミュニケーションが苦手といわれるが、安心できる人間関係があれば、パーティションは不要だ。「社員同士もお互いにどう配慮すべきかを学ぶことができます」

また、職場で安心できる人間関係を構築するためには、「障害を見えるようにすることが大事」だという。その一環として、同社では、入社初日に自分の症状を全社員の前で話すことを採用前に本人と約束している。「本人にとっては大きな挑戦。しかし、不調時にそれを具体的に伝える能力があるかを判断できますし、また、症状を知っていればほかの社員も必要以上に気を使わずに済みます」
実際に、本人が「つらい」「休みたい」と申し出た場合は、精神保健福祉士の資格を持つ社員が相談に応じる。精神保健福祉士は、質問を重ねることで本人が自力で問題を解決するのを手伝う。「精神障害者が安定して働くためには、安心して話せる人をそばに置くことも重要です」

※数字データは厚生労働省「平成26年度障害者雇用状況の集計結果」

Text=湊美和