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4 アメリカにおけるアウトプレースメントの歴史と現状
アメリカでアウトプレースメント・サービスが始まったのは1962年。チャレンジャー氏が、弁護士としての仕事を通し、貢献度の高かった役員や上級管理職が解雇された後に再就職に苦労する姿を見て、解雇した企業の経営者にその再就職に必要な援助をする責任があると訴え、アウトプレースメント会社、チャレンジャー、グレイ&クリスマス社(Challenger, Gray & Christmas)を設立したのが始まりである(チャレンジャー1999)。同社は、現在アメリカとカナダに多数の拠点を持ち、フォーチュン誌の全米上位企業500社の70%以上を顧客とするアメリカ最大のアウトプレースメント会社となっている(チャレンジャーHP)。また1967年には、著名な心理学者であったドレーク氏とビーム氏が、キャリア・アセスメント、教育訓練、組織開発、職業設計を専門とする人事コンサルティング会社、ドレーク・ビーム&アソシエイツ社(Drake, Beam and Associates)を設立している。同社は、その後、ドレーク・ビーム・モリン社(Drake Beam Morin Inc.)と社名を変更し、世界85ヶ国に230ヶ所の事業所を置き、毎年25万人以上にサービスを提供するアウトプレースメント会社に発展している(2006年現在、DBM2006)。
アメリカでは随意雇用原則"employment at will"のもと、使用者は自由に解雇を行い、労働者は頻繁に転職を繰り返す、というイメージがある。しかし、実際には、解雇については、雇用差別禁止法、判例法、労働協約、就業規則などにより、ある程度のルール化ができており、経営者が恣意的に労働者を辞めさせることはできない。また、労働者も年齢が高くなるにしたがって安定志向が高まり、長期雇用を希望するようになる。アメリカでは、企業がリストラクチャリングを余儀なくされた場合、在職期間の短い者からその対象となるため、年齢にかかわらず、在職期間が長い労働者の方が、有利なのである。企業としても、優秀な従業員には長く勤めてほしいと思うが、経営上の理由により、企業が労働者をレイオフしなければならなくなるときもある。そのようなとき、アメリカでは、企業がアウトプレースメント会社と契約するのが一般的になっている。アウトプレースメント会社は、離職を余儀なくされた労働者に再就職支援のためのコンサルティングを行う一方で、経営者にレイオフに伴う雇用労働法上のアドバイスや精神面でのケアを提供する。アウトプレースメント会社が、レイオフという厳しい状況に置かれた経営者と労働者をさまざまな点で支援するのである。また、レイオフを行う前段階で、会社がアウトプレースメント会社と契約し、レイオフを回避するための手段を相談することもある。
アウトプレースメント事業が始まった当時、企業は、解雇する人たちに援助を差し出すことを嫌っていたが、アウトプレースメント・サービスを受けた人たちから、日々の生活や人生にプラスの影響を得、失業期間を短縮でき、適職を得ることができるサービスであるとの報告があり、次第にそのサービスの良さが知られるようになった。企業にとって何よりありがたかったのは、アウトプレースメントを受けた人たちから解雇に関する訴訟が起きないことだった(チャレンジャー1999)。
訴訟が起きない大きな理由の1つとして、アメリカにおけるアウトプレースメント・サービスが、コンサルティングとカウンセリングを中心にしていることがあげられる。解雇された労働者は、自分を解雇した企業を恨むよりも、自分自身の将来について考える方が大切であることを知らされ、経験豊かなカウンセラーと共にライフプランを練っていくというプロセスを通して、次に進もうという前向きな姿勢に変わるという(チャレンジャー1999)。アメリカのアウトプレースメント・サービスは、職業紹介よりも、こうしたコンサルティングやカウンセリングに重点を置いている。
サービスの対象者となるのは、役員クラスから中間管理職クラスの者が多い。コンサルティング料は対象者の年収に応じて決められる場合もあれば(通常10〜20%)、1人当たり数千ドルというように定額の場合もある。大規模なレイオフが行われたときには、社内や会社の近くにアウトプレースメントセンターを設置し、再就職支援にあたる。2000年度のアウトプレースメント事業全体の売上高は、11億ドルで、人材ビジネス業界全体の売上の1%弱を占めている(SIA2000)。 |
| (2006年10月20日再掲載) |
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