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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第5回講義
請負・派遣
1 イントロダクション
2 構内請負の現状とアウトソーシング
3 アメリカにおける非正社員化
4 偽装請負の拡大
資料編
参考資料
3 アメリカにおける非正社員化−派遣、PEO 、請負、アウトソーシング

 アメリカでは、1960年代に自社の労働者を他社に派遣して働かせるという労働者派遣事業や、アウトソーシングの原型ともいわれる専門サービス業が生まれた。その後、企業が競争力を高めるために構造改善に着手し始めた1970年代を経て、1980年代に「アウトソーシング」という言葉が概念として定着したといわれる(斉藤1999)。アウトソーシングは、情報システム部門を中心に始まり、その後全産業に広がっていった。もっともアウトソーシングが盛んだといわれているIT部門の規模は、560億ドルにまで達している(2000年の数字。Outsourcing2001)。
 一方、アメリカにおいて、"Employment Outsourcing "といわれる、労働者派遣事業やPEO(Professional Employer Organization)事業*7も順調に市場規模を伸ばし、特に1990年代半ば以降、急速な成長を経験したが、ITバブルの崩壊や2001年に発生した同時多発テロの影響により、人材ビジネス産業全体の売上高は一時的にダウンした。その後、景気回復とともに、同産業も復興し2005年には過去最高となる695億ドルの売上高を記録するまでに拡大している(ASA2006)。
 また、最近の傾向としては、専門職派遣とオンサイトマネジメント*8の拡大があげられる。専門職派遣のなかでは特に看護師をはじめとする医療系人材の派遣が好調で市場規模も大きい。一方、派遣会社が派遣先と長期の契約関係にもとづき、派遣先事業所に大量の自社スタッフと管理者を配置して自らスタッフの指揮管理を行うオンサイトマネジメントも大企業の間に広がっている(小嶌・藤川2006)。
 アメリカ労働統計局の調査によると(BLS2005)、アメリカにも請負会社労働者が数多く存在していることがわかる。統計上、請負会社労働者は、「契約に基づいて自己の雇用する労働者を第三者に供給する会社に雇われる労働者」と定義されており、これに該当する労働者は約81万人で、就業者に占める割合は0.6%である。なお、アメリカ人材派遣協会が出している派遣労働者数は約291万人(2005年、ASA2006。労働統計局による派遣労働者の数字は約122万人)であるから、派遣市場と比較すると、アメリカにおける請負の規模は小さいようだ。
 請負会社に雇用される労働者の職種は、専門職がもっとも多く(26.2%)、以下、サービス職(21.8%)、建設・石油抽出職(19.8%)と続いている(BLS2005)。専門職が多いためか、請負会社労働者の賃金は、他の非典型労働者と比べて、高い。
 しかし、アメリカには、労働者派遣法のような法律もなければ、「派遣」の正式な定義も確立していない。日本のような事業規制はなく、製造業務での派遣もOKだ。そのため、いわゆるブルーカラーの派遣労働者が全体の3割以上を占めている。1つの企業や工場に大量の派遣労働者を就労させている派遣元事業所は、ほとんどの場合、現場に自社の管理者を置いて労働者の管理を行っているので、日本の構内請負と類似しているといえるだろう*9。しかし、労働者派遣事業につき届出制や許可制を導入していないため、実際のところ、派遣事業と請負事業の違いは明確でなく、区別は難しい。
 アメリカにおいても、派遣労働者やリース労働者をめぐる問題点は数多く指摘されている。代表的なものをあげると、(1) 派遣労働者の賃金が正規労働者と比べて低い、(2) 派遣労働者の社会保険適用率が低い、(3) 派遣労働者やリース労働者の雇用差別、(4) 短期派遣労働者による雇用保険濫用、(5) 労災保険率に関する問題、などである(詳しくは藤川2001)。アメリカ連邦議会においても、こうした問題は頻繁に取り上げられ、日本のような特別法を制定すべきだという主張もあがっている(藤川1998)。
 アメリカの雇用労働法制は極めて複雑で、しかも頻繁に法改正があるため、雇用主は常に神経をとがらせていなければならず、特に採用時や解雇時には法の遵守や手続きに大変な労力を強いられる。加えて、求人や選考にかかる費用も小さくない。したがって、雇用主にとっては、人事部門をまとめて他社に委託した方が経済的で、かつ、精神的にも楽だ。アメリカにおいて、Employment Outsourcingが成長したのは、このような背景があったからである。したがって、可能性は低いものの、将来、特別法を制定して労働者派遣事業やその他の人材ビジネスを規制することがあったとしても、この種の事業が衰退することはないだろう。
(2006年10月20日再掲載)
1 イントロダクション
2 構内請負の現状とアウトソーシング
3 アメリカにおける非正社員化
4 偽装請負の拡大
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