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4 労働組合の役割と変化
労働組合の役割と目的
労働組合は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させることを目的に結成される。そのために、労働組合は使用者(企業)と団体交渉を行う。1対1では労働者が使用者と対等に交渉することは難しいので、労働組合という団体を結成して団体の代表が使用者と交渉するのである。使用者は、正当な理由なく団体交渉を拒むことができず(労働組合法第7条第2項)、また、誠実に交渉する義務を負う。にもかかわらず、使用者が団体交渉を拒否したり、誠実交渉を怠ったたりしたときは、不当労働行為が成立する。
次に、労働組合の役割としてあげられるのは、労使協議である。労働者の賃金等労働条件や雇用確保といった問題だけではなく、労働者の主張を経営に反映させることを目的に、今日では、経営側の事業計画から人員計画など日常の業務に至るまでが労使協議の対象となっている。同時に労使協議の場において、労働組合の政策をどう反映させるのかも、企業内の労働組合の役割を再確認する上で重要である。
団体交渉
団体交渉の方式は、各国の歴史的経緯や団体の形態などによって異なる。たとえば、ドイツでは伝統的に産業別労働組合と産業別・業種別の使用者団体が、地域的規模で、または全国レベルで交渉を行う形をとっているが、イギリスでは、職業別あるいは産業別労働組合がそれに対応する使用者団体と全国的規模で交渉を行うことが多い。また、フランスはドイツ型と類似した方式で団体交渉を行う。ヨーロッパの場合、全体的に見て、全国レベルでの統一交渉が一般的のようだ。この方式には、企業レベルの交渉で足並みをそろえやすいという利点がある一方、実際に職場に働く労働者の要求が反映されにくいという欠点もある。こうした欠点を補うものとして、19世紀の終り頃から、職場における労働者の具体的な要求・不満をとりあげ、経営者と交渉し、労働者の日常の利益を擁護するための機関が、労働組合の組織の一部として、現れるようになった。この代表例が、イギリスのショップ・スチュアードである。
ヨーロッパでは現在も労働組合組織が強い発言権を保持し、確固たる地位を確保しているのに対して、企業別組合を中心とする日本の労働組合組織は統一性を欠き、弱体する傾向にある。それは、次に述べる春闘の役割の変化にも強く見られるものだ。
春闘の役割と変化
春闘が始まったのは1955年だが、春闘の役割も約半世紀の間に大きく変化した。春闘は、パターンセッターと呼ばれる産業別連合組織が賃金引き上げ回答を先行して引き出し、その引き上げ幅がその後の企業における賃金引き上げ回答に波及していく形になっている。パターンセッターの所属する産業は、1950年代においては化学、石炭、私鉄、1960年代においては鉄鋼、1970年代においては造船、電機、1980年代においては電機、自動車、1990年代においては電機、自動車、電力、通信と、時代とともに変化してきた。また、1970年代においては、ストライキを伴う春闘が頻繁に見られたが、近年ではストライキのない春闘が一般的である。
春闘は、伝統的に大企業の賃上げ水準が中小企業に波及するという効果を持っていたが、大企業が積極的にリストラ、新しい賃金体系を導入し、大企業の組合もそれに対抗できない状態となり、労働条件決定における春闘の役割は失われつつあるといわざるをえない。事実、最近の春闘は賃金引き上げよりも、労働者の生活維持にその主体を置いているように見える。しかし、春闘による賃金引き上げが困難になると、かつて労働者の労働条件向上のために闘ってきた労働組合の存在意義はますます薄れていくことになりかねず、この点に危機感を募らせる組合は少なくないだろう。
変化しつつある労働組合
労働組合法が制定されてから60年余りが経ち、日本の労働市場や雇用制度は大きく変貌した。労働組合法が想定する労働者は、長期間同一企業に勤務する男性の正規労働者であるが、現在の日本の労働市場には、転職を繰り返す労働者、空いた時間にのみ就労することを希望するパートタイム労働者、1つの企業に拘束されるのを嫌う登録型派遣労働者、より自由な働き方を好むフリーター、特別な技能や専門知識を活かして企業と契約ベースで仕事をする契約社員など、50年前には存在していなかったさまざまな形態の労働者が存在する。また、長期雇用、年功賃金といった日本特有の雇用慣行も徐々に姿を消し、それらに代わる能力給が導入されるようになり、各企業の労働組合が伝統的に行ってきた団体交渉を通して労働条件を交渉するという方式は困難になってきている。
このような雇用慣行や労働条件決定方式、あるいは、労働市場を構成する労働者像の変化、そして、産業構造の変化に影響されて、日本の労働組合組織率は低下する一方である。この事実は、2つのことを示唆しているといえるだろう。1つは、これまで労働組合が焦点を当ててきた正規労働者以外の雇用形態に就く労働者の組織化が必要であるということと、もう1つはさまざまな社会変化に対応して労働組合の役割も変化しているということを認識する必要があるということである。特に、労働条件の個別化にどのように労働組合が関わっていくかについて、検討を進めていくべきだろう。
たとえば、ニュージーランドが1991年に制定した雇用契約法のように、労働者個人が使用者と労働条件を交渉できる制度を構築し、そのうえで、労働者が代理人として労働組合を指名することを可能にするという方法も選択肢の1つに入れられてもいいだろう。いずれにしても、時代の流れにマッチした新しい労働組合が生まれる時期にきているといえる。
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| (2006年10月20日再掲載) |
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