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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第17回講義
労働統計
1 イントロダクション
2 労働統計の入手方法
3 主要な労働統計
4 労働統計の基礎
資料編
参考資料
1 イントロダクション

 労働統計とは、文字通り労働に関する統計のことで、よくTV等で耳にする「完全失業率」や「有効求人倍率」などが代表的な労働統計としてあげられるだろう。しかし、「完全失業率」という言葉や、現在の日本の失業率を知っていても、完全失業率がどのように出されるのか、失業者とはどういう人たちのことをいうのか、といったことを知っている人は意外と少ないかもしれない。また、失業者といっても、国が変われば、定義も変わってくる。アメリカと日本では失業者の範囲が違っていたりすることもあまり知られていない。
 日本の完全失業率とは、労働力人口に占める完全失業者の割合のことで、完全失業者とは、満15歳以上で、就業を希望しつつ、求職活動をしている失業者のことをいう。毎月末の1週間、全国の約4万世帯(約10万人)を対象にした総務省の労働力調査に基づく推計値として算出される。失業中の一時的アルバイトも従業者に分類されるため、完全失業率が失業の実態を正確に反映しているかどうか疑問もある。
 一方、アメリカでは、就職先が決まって自宅待機中の者や一時解雇の者も失業者に含まれるため、失業者数が大きく出る可能性がある。
 また、アメリカでは、失業者を労働力人口で除した公表失業率を含めて、次のようなU1からU6まで6つのタイプの失業指標を発表している。
U1:(失業期間が15週間以上の失業者)/(労働力人口)
U2:(非自発的離職失業者)/(労働力人口)
U3:(失業者)/(労働力人口)[公表失業率]
U4:(失業者+discouraged workers)/(労働力人口+discouraged workers)
U5:(失業者+all marginally attached workers)/(労働力人口+all marginally attached workers)
U6:(失業者+all marginally attached workers+total employed part time for economic reasons)/(労働力人口+all marginally attached workers)
 この指標にもとづき日本とアメリカで比較してみると、次図のようになる。U3〜U5はほぼ同じ水準だが、U1やU2、U6では日米の格差が大きい。
(以上、ユースフル労働統計2006)
図 U1〜U6の日米比較(2005年)
(注:日本のU6の数値は不明)
 さらに、失業はいくつかに分類することができる。たとえば、失業の原因によって分類すると、自発的失業と非自発的失業に分けられる。自発的失業とは、自分の意思で失業しているとか、いい仕事が見つかるまで失業している状態を意味し、非自発的失業とは、いますぐに働くことを希望しているにもかかわらず仕事を見つけることができない状態を意味する。会社を解雇されての失業、自ら転職を希望しての失業では大きく意味が異なるのだ。
 次に、失業の形態によって分類する場合、摩擦的失業、構造的失業、循環的失業に分けられる。摩擦的失業とは、労働者の地域間移動、転職、新卒者といった労働市場への参入など労働状態の変更に伴う失業であり、短期かつ自発的であることが多い。構造的失業とは、労働市場の需要と供給のミスマッチにより発生する失業のことをいう。たとえば工場が閉鎖されて職を失ったが、再訓練を受けないと次の仕事が得られない場合などがそうである。循環的失業とは、景気循環に応じて発生する失業で、非自発的失業と自発的失業を含む(以上、イミダス2002参照)。
 いつも聞き流している「失業」という言葉に、このように深い意味があると理解してから統計を見ると、新たな発見に結びつくことがあるかもしれない。
 よく耳にするもう1つの労働統計用語として「有効求人倍率」も紹介しておこう。有効求人倍率とは、公共職業安定所へ申し込まれている求職者数に対する求人数の割合のことをいう。倍率が1を上回っていれば、求職者以上の求人ニーズがあり、下回っていれば求人が不足している状況だと判断できる。たとえば、有効求人倍率が0.5であれば、10人の人が職を求めているのに対して、5件の仕事しかないことを意味する。バブル崩壊後、有効求人倍率は急激に下がっており、1993年から2005年まで、有効求人倍率は1を大きく下回った状態が続いている。
 日本は、かつては、終身雇用など日本独自の雇用慣行を背景として、欧米に比べて低い失業率を誇ってきたが、1990年代半ばより失業者は増加し続け、現在、失業率は2001年から2003年まで年平均5%以上に悪化した(2005年平均の完全失業率は4.4%、2005年(平成17年)労働力調査年報)。しかも、日本が抱える失業者の大半は、構造的失業によるものであるため、これまで日本が行ってきた各種助成金を活用した失業対策はあまり効果を発揮しないといわれている。現代の失業問題を解決するためには、労働市場における需給のミスマッチを解消することが不可欠である。そこで、今、日本がなすべきことは、雇用の流動化を可能とする労働市場を構築し、労働者のエンプロイヤビリティ(就業能力)を高めて就業機会を広げる策を講じることだといえる。 (末廣2002参照)
 失業者の数を減らすことも重要だけれども、失業の質を改善することの方がもっと重要なのだ。労働者が自分のスキルや能力を信じて自由に転職することができる労働市場になれば、失業をおそれずに済む。それを可能にするための構造改革が待ち遠しい。

<注>
・marginally attached workersとは、現在は仕事も求職もしていないが職を希望していてすぐに仕事に就くことができ、過去に求職活動をしたことのある者を指す。
・discouraged workers とは、marginally attached workersのうち、適当な仕事がありそうにないために職探し諦めてしまった者を指す。
・total employed part time for economic reasonsとは、フルタイムの仕事を希望してそれにすぐ就くことができるが、不況等のために不本意ながらも短時間労働に甘んじている者を指す。
(2006年10月20日再掲載)
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