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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第15回講義
賃金
1 イントロダクション
2 日本の賃金体系
3 賃金格差
4 アメリカにおける賃金と日本との比較
5 今後の課題
資料編
参考資料
1 イントロダクション

 ほんの少し前まで、日本では、賃金は上がり続けるのが普通だと考えられていた。年功賃金制度という独自の賃金体系をもつ日本においては、年齢が上昇し、勤続年数が長くなると同時に、賃金も上がるというのが、いわば日本の「常識」であった。しかし、長引く平成不況の影響により、この「常識」は覆されつつある。賃金は上がらないどころか、下がることもあるという、世界の「常識」が日本に浸透してきている。高い給与水準で知られている銀行業界においてでさえ、先ごろ賃下げを行うと発表した都市銀行もある。主要企業による「能力・成果主義」の賃金制度の導入はもはやめずらしいことではなくなった。
 会社の経営状況に応じて賃金が上下するのは、当然といえば当然である。ところが、日本では賃下げは労働条件の不利益変更にあたるため、会社は賃金規定(就業規則)を変更することにより賃金の引き下げを行う場合には、従業員代表の意見聴取と、賃下げの合理的な理由が求められる(詳細は次回「解雇・労働紛争」を参照)。
 正社員の賃下げが難しいため、企業は別の方法で人件費を削減する努力をする。たとえば、正社員から非正規社員への切り替えである。正社員の数は減りつつある一方、パートタイム労働者を中心とする非正規社員の数は増えつつある。なかには、一般職の新卒採用を中止し、派遣スタッフで代替する企業もでてきている。
 日本独自の年功賃金は、戦後まもなく導入されたものである。高度経済成長期においては、企業側が雇用者の定着率を高めるために提示するこの年功賃金とそれに伴う長期雇用関係を労働者が受け入れることによって、長期雇用が可能となっていた。
 しかし、年功賃金には、労働生産性や労働分配率と比較して賃金が高い、という欠点がある。事実、先進国と比較すると、日本の労働生産性は相対的に低く単位労働コストも高くなっている(平成14年版労働経済の分析)*1
 このような事情と、従業員の高齢化や企業の国際競争の激化などを背景として、年功を重視した従来の賃金制度を修正し、仕事の内容や成果を重視して賃金額を決定する動きが広まっている*2。年齢給の廃止、職能給の導入、業務評価による賞与の設置、そして、年俸制などがその例だが、これらは能力・成果を基軸とした人事賃金管理体系である。
 成果主義が労働者に対してインセンティブとして作用すれば、業務の効率化が可能であり、企業は優秀な社員とそうでない社員を賃金で区別することもできる。
 能力・成果主義には、日本的労使関係を根本から崩しかねないなど、さまざまな問題点が指摘されている*3。たしかに、年功賃金制度から成果主義への移行は、長期継続雇用慣行を基盤として、人材を育て、その人材の優秀さに立脚して生産活動を行うという慣行を否定するものであるかもしれない。しかし、経営状況が苦しいにもかかわらず賃下げができない、労働生産性の悪い社員に高給を支払わなければならないというシステムは世界では通用しないのである。
労働生産性のレベルと成長率
(出所 OECD, National Accounts of OECD Countries 2005, OECD Employment Outlook 2005, OECD, Economic Policy Reforms: Going for Growth 2006)
(2006年10月20日再掲載)
1 イントロダクション
2 日本の賃金体系
3 賃金格差
4 アメリカにおける賃金と日本との比較
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