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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第14回講義
ジェンダー&ワークライフバランス
1 イントロダクション
2 ジェンダー論と性差別禁止
3 欧米における雇用差別禁止
4 ワークライフバランス ―イギリスの取組み
5 ワークライフバランス ―日本と先進国における取組み
資料編
参考資料
1 イントロダクション−ポジティブアクション

 「ポジティブアクション」とは、男女の均等な機会および待遇の確保の支障となっている事情を解消することを目的とした取組みで、その基本的な考え方は「女性であるがゆえに優遇する」ことではなく、これまでの性別役割分担意識等によって生じた差を解消することを通じて、均等な機会・待遇の実効性を確保するところにある。
 1999年4月に施行されてた改正均等法は、女性の能力発揮の促進について、企業が積極的かつ自主的に取り組むこと(ポジティブアクション)ができるように国が援助を行う旨規定している(20条)。
 厚生労働省では、女性の活躍推進協議会を通じて、(1) 労働意欲、生産性の向上、(2) 多様な人材による新しい価値の創造、(3) 労働力の確保、(4) 外部評価の向上、のためには、ポジティブアクションが必要だと推進を図っている。
 具体的には、ポジティブアクションでは、個々の能力や実績に関係なく、結果的に男性優遇となっている制度は見直す、男女ともに多様な働き方を可能にする環境づくりを検討する、性別を超えた「個」の視点で、意欲・能力に応じた抜擢と育成をするという対応が求められる。
 ポジティブアクションは、もともとアメリカでアファーマティブアクションとして始まった。包括的な差別禁止法である1964年公民権法の翌年に出された大統領令11246号にもとづくプログラムで、雇用における機会均等を確実にするために、単に差別をしない、と言う消極的な取り組みだけでなく、女性・マイノリティー・障害者・戦争復員など、保護されるべきグループについて、採用、昇進、昇給、トレーニングをはじめとする全ての雇用側面において、積極的に平等化を推進することを政府契約企業に対して義務づけている。ポジティブアクションがもっとも進んだ形は、格差是正のために、企業に、女性など被差別グループの一定数の雇用等を強制的に割り当てる優遇制度(クォータ制)であるが、この制度を導入している国はほとんどなく、アメリカでもカリフォルニア州などごく一部の州だけである。なぜなら、クォータ制は、性別で割り振られた数の帳尻合わせのために、高い能力と豊かな経験を持つ者が採用されず、それほど高い能力も豊かな経験もないにもかかわらず採用される、という現象を生じさせるからで、最近、「逆差別」にあたると厳しく批判されている。
 アメリカではアファーマティブアクションを30年以上実施してきたこともあり、雇用の場における男女の機会均等はかなり進んでいる印象を受ける。応募や採用段階で、女性が不利な取扱いを受けることはほとんどなく、賃金も性別を理由に格差をつけられることはない。日本の均等法には規定のない間接差別*1もアメリカでは禁止されており、間接差別もほとんどない。仮にあったとしても雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commision)への救済申立てや個人による提訴が可能であり、差別禁止法(公民権法第7編、障害を有するアメリカ人法)にもとづく訴訟では懲罰的損害賠償の請求も認められているため、高額の賠償金を受けられる場合もある。企業は、訴訟に負けた場合、財政的にもイメージ的にも大ダメージを受けるので、訴訟に発展しかねない行為は自然と避けるようになる。
 日本の改正均等法は、ポジティブアクションの規定を盛り込んだという点、セクシュアルハラスメントについて事業主の配慮義務と指針策定を定めたという点(21条)、そして、募集・採用、配置・昇進における差別的取扱いを努力義務規定から禁止規定に変えたという点は、高く評価してよいだろう。
 しかし、均等法に違反する行為が発生した場合の救済手段は、アメリカほど万全ではない(後に詳述)。裁判に訴えた場合でも損害賠償額は低く、企業にダメージを与えることは少ない。
 とはいえ、ポジティブアクションの取組みは、まだ始まったばかりである。厚生労働省だけでなく、都道府県においても、積極的に実施を進めており、少しずつ効果がでることを期待したい。
(2006年10月20日再掲載)
1 イントロダクション
2 ジェンダー論と性差別禁止
3 欧米における雇用差別禁止
4 ワークライフバランス ―イギリスの取組み
5 ワークライフバランス ―日本と先進国における取組み
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