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3 欧米諸国における雇用保険制度と日本型雇用保険の将来像
雇用保険制度(欧米では「失業保険」「求職者手当」とよばれることもある)は、欧米のなかでも各国の社会状況や歴史を反映して、大きく異なっている。ここでは、日本と比較した場合の欧米の雇用保険の主な特徴を紹介する。
(1) 財源
日本の雇用保険の財源は、4分の1が国庫負担で、残りが労働者および事業主からの保険料で賄われている*2(ただし、雇用保険三事業については事業主からの保険料と国庫のみを使用)。日本と同様の方式を採用しているのはイギリスとドイツで、ともに失業手当の財源は労使折半による保険料と国庫で、失業扶助は国庫で賄われている。フランスの場合は、労使からの保険料、加入時の事業主拠出金、および政府の補助金によって賄われている。アメリカの失業保険制度は連邦失業保険税法にもとづくが、運営は各州に委ねられており、ほとんどの州では事業主のみから失業保険税を徴収している(3州では労働者も一部負担)。また、アメリカの特徴は、メリット制を採用しているところにあり、過去の失業保険申請状況により保険税率が上下する仕組みになっている(なお、連邦保険税率は各労働者に支払う賃金額(年間7,000ドルまで)の6.2%)。
(2) 適用対象
日本では、適用事業に雇用される労働者であって、65歳以上で新たに雇用される者等以外の者は、原則として被保険者となるが、雇用者でない個人事業主や業務委託契約などにもとづき仕事をする者は適用対象とならず、また、国家公務員や地方公務員も適用除外となっている。アメリカでは、連邦公務員、裁判官や軍人などは特別法の適用を受けるので失業税法の対象とならないが、州・地方自治体の公務員は失業税法の対象となる。また、個人事業主についてはどの州でも原則として失業税法の対象外としている(カリフォルニア州では例外的に適用される場合あり)。季節労働者、農業労働者、家内労働者も適用除外である。一方イギリスでは、公務員や自営業も加入が義務づけられているが、求職者手当は自営業者には給付されない。ドイツの場合、疾病保険の強制適用者(農業労働者、家内労働者、訓練生等も含む)が適用対象となるので、ほとんどすべての労働者に適用される。
(3) 受給要件
日本では自己都合退職の場合であっても失業給付(基本手当)を受けることができるが(ただし3カ月の給付制限がかかる)、アメリカやフランスでは自己都合の場合には支給できないというのが原則になっている。また、日本は受給要件として離職前1年間に6カ月以上の被保険者期間があることを設けており、期間に違いはあるものの、ドイツ(離職前2年間に通算12カ月の被保険者期間)やフランス(離職前22カ月のうち適用事業所における雇用期間が6カ月以上)でも同様の設定を行っている。一方、イギリスでは、原則として18歳以上で年金支給開始年齢未満の者が、失業しているか、または就労時間が週16時間未満であり、週40時間以上就労する意志と能力があり、ジョブセンターと求職者協定を締結していることが受給要件となる。これに加えて、過去2年間に一定以上の保険料を納めていなければならないという保険料拠出要件があるが、収入が一定水準以下である場合には保険料拠出要件を満たしたことになるので、実質的には納めた保険料の金額や期間は関係ない。アメリカは州によって異なるが、ほとんどの州では、最近の5四半期中4四半期を算定期間としている。
(4) 給付額
日本の基本手当の給付額は、離職前賃金の60〜80%(賃金が低い方が率が高い)である。アメリカの場合、過去52週間の当該離職者の賃金に応じて金額が異なるが、離職前賃金の約50%という州が多い。イギリスは、年齢に応じて金額が異なっており、18歳未満は31.95ポンド、18〜24歳は42.00ポンド、25歳以上は53.05ポンドとなっている(2001年現在)。ドイツの場合、基本手当として旧西ドイツ地域345ユーロ、旧東ドイツ地域331ドルが支払われるが、扶養義務のある子がいる場合は加算される。フランスは、基本賃金日額の40.4%の比例部分と定額部分62.73フランを合計した額、または基準賃金日額の57.4%のいずれか多い方となっており、最低保障日額は152.94フランである(2001年現在)。
(5) 給付期間
日本の給付期間は、年齢、被保険者期間、離職の理由等により異なる(90〜360日)。アメリカでは、申請者の算定期間における賃金額、就労日数に応じて州毎に異なるが、ほとんどの州では最高30週間となっている。イギリスの失業手当は、原則として最大26週だが、それ以降は所得援助制度(失業扶助)があり、低所得で、かつ、求職者要件を満たしていれば、無期限で支給される。ドイツの場合、被保険者期間、年齢に応じて6〜18カ月となっているが、イギリスと類似した無期限の失業扶助がある。フランスは、年齢および離職前雇用期間に応じて7〜42ヵ月となっている。
日本やアメリカの雇用保険制度は、イギリス、ドイツ、フランスと比較すると、給付額・期間ともに手薄い印象を受ける。たしかに、セーフティネットという観点からは手厚い失業保険制度が望まれるが、失業保険制度を手厚くするとモラルハザードのリスクが高くなり、失業者数が増えるおそれが発生する。現にイギリスやドイツが経験した高失業率の一因には、優れた失業保険制度があったと考えられている。日本の場合、欧米と比較すると、労働市場に問題があるための失業が多く、モラルハザードによる失業は少ないと説明されているが(第一生命2000)、制度をイギリス型やドイツ型に変えると、同様の事態を招きかねないだろう。 |
| (2006年10月20日再掲載) |
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