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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第13回講義
労働保険
1 イントロダクション
2 日本における雇用保険制度の内容と特徴
3 欧米諸国における雇用保険制度と日本型雇用保険の将来像
4 日本における労災保険の内容と課題
資料編
参考資料
2 日本における雇用保険制度の内容と特徴

(1) 雇用保険制度の歴史と内容
 雇用保険法の前身である失業保険法は、第二次大戦直後の1947年に制定された。同法は、失業者の生活の確保を最優先の課題とし、失業手当給付を主たる内容としていたが、1974年に成立した雇用保険法は、労働者にとってより望ましい雇用の確保をも目的として、それまでの失業者給付に加え、求職活動の支援、雇用構造の改善、労働者の能力の開発・向上といった労働者福祉の領域においても重要な役割を任された。
 雇用保険は、国を保険者として、事業主を保険加入者とする強制保険制度であるが、当該事業に雇用されている労働者も被保険者として保険料を分担する。ただし、農林・畜産・水産事業のうち労働者5人未満の個人経営事業は、暫定的に任意適用事業とされている。また、被保険者とならない者として、65歳に達した日以後に新たに雇用される者、短時間労働者(具体的には週所定労働時間が30時間未満の労働者)であって、季節的に雇用される者、または1年未満の短期雇用に就くことが常態となっている者、日雇労働者被保険者を除く日雇労働者、4カ月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者、船員保険の被保険者、国、都道府県、市町村等で雇用され、他の法令により失業給付等を受ける者がある。
 雇用保険の主とした機能は、「失業保険法」時代と変わらず、失業者の生活を保護すること(失業等給付)である。失業等給付には、「求職者給付」、「就職促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」がある。一般の被保険者については、基本手当、技能習得手当(受講手当、特定職種受講手当、通所手当)、寄宿手当および傷病手当の4つがある。就職促進給付は再就職手当、常用就職支度金、移転費および広域求職活動費、教育訓練給付は教育訓練給付金、雇用継続給付は、高年齢雇用継続給付、育児休業給付および介護休業給付がある。
 これらのなかで中心となるのは、求職者手当の基本手当であるが、受給資格要件は次の通りである。
 (1) 被保険者が失業し、(2) 離職日以前1年間、(3) 被保険者期間を通算して6カ月(短時間労働被保険者は12カ月)以上あるとき。
 雇用保険法は、このほか労働者福祉の増進のために雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業のいわゆる三事業を行っている。この雇用安定事業の一環として、中小企業主が事業の縮小にともなって雇用調整を行う場合の雇用調整助成金や、失業なき労働移動を支援する労働移動雇用安定助成金などがあり、能力開発事業の一環として、生涯能力開発給付金などが用意されている。
 なお、2003年4月25日、雇用保険法が改正され、同年5月1日から新制度がスタートした。その主な内容は、次の通りである。
 (1) 基本手当の給付率、上限・下限額の改正
 (2) 基本手当の所定給付日数の改正
 (3) 60歳到達時賃金日額算定の特例の廃止
 (4) 育児、介護等による休業、勤務時間短縮措置についての賃金日額算定の特例の創設
 (5) 公共職業訓練の複数回受講等の特例措置の拡充
 (6) 高年齢求職者給付金の額の改正
 (7) 就業手当の創設
 (8) 教育訓練給付の額等の引下げ
 (9) 高年齢雇用継続給付の支給要件、給付率の引下げ
 (10) 不正受給の場合の納付命令額等の改正
 (11) 雇用保険料率の値上げ

 2005年4月1日からの雇用保険料率は下表の通りだが、従来被保険者の負担分について使用していた「一般保険料額表」については廃止され、月々の給与総額に被保険者負担分の保険率を乗じて算出することになっている。

雇用保険料率(2005年4月1日より)
事業の種類 変更前 変更後 事業主負担 被保険者負担
1 2及び3以外の事業 17.5/1000 19.5/1000 11.5/1000 8.0/1000
2 ○土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、摂取若しくは伐採の事業その他農林の事業 19.5/1000 21.5/1000 12.5/1000 9.0/1000
○動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他養蚕又は水産の事業
○ 清酒の製造の事業
3 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業 20.5/1000 22.5/1000 13.5/1000 9.0/10

雇用保険三事業の目的
雇用安定事業 能力開発事業 雇用福祉事業
被保険者等の失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため下記の事業を行う。 被保険者等の職業生活の全期間を通じて、能力の開発、向上させることを促進させるため下記の事業を行う。 被保険者等の職業生活上の環境の整備改善、就職の援助その他福祉の増進を図るため下記の事業を行う。
□1 景気変動、産業構造の変化等経済上の理由により事業活動の縮小のため労働者の休業や職業訓練等を受けさせる事業主に対する必要な助成・援助
□2 定年引き上げ、定年後の再雇用等による雇用延長、高年齢者の再就職の援助や雇い入れ等高年齢者の雇用安定を図る事業主に対する必要な助成・援助
□3 雇用機会増大の必要のある地域への事業所移転、通年雇用をする等地域の雇用状況改善地域での雇用安定を図る事業主に対する必要な助成・援助
□4 障害者等就職が困難な者の雇用促進・安定事業
□1 職業能力開発促進法に規定する事業主等に職業訓練等を振興させるために必要な助成・援助
□2 求職者、退職予定者に対する再就職を容易にするための必要な知識、技能修得の講習、作業環境適応訓練の実施
□3 職業能力開発促進法の有給教育訓練休暇を与える事業主への助成・援助
□4 職業訓練等の受講者等への交付金支給等
□5 生涯能力開発に対する助成
□6 育児・介護休職者職場復帰プログラム
□7 技能検定の実施に対する助成
□1 就職による住居移転者のための宿舎設置・運営
□2 労働者の就職、配置等の相談、援助、援助施設の設置、運営
□3 教養・文化・体育・レクリエーション施設その他福祉施設の設置運営
□4 求職者の就職のための資金貸付、身元保証等の必要な援助
□5 労働者の職業に対する適応性、職業安定の調査・研究・資料整備
□6 その他被保険者等の福祉の増進に必要な事業
受給資格者の就職状況(全年齢)
(出所 厚生労働省)
(2) 雇用保険制度の問題点
 冒頭に述べたように、労働政策審議会雇用保険部会が雇用保険制度の見直しを議論しているところだが、日本の雇用保険制度には次のような問題点があると指摘されている。

 (1) 高齢者向け雇用保険の問題点
 現在、給付の3割程度は60〜64歳に向けられている。この年齢層の多くは定年を迎えて失業給付を受けている人たちだ。定年直前の労働者の賃金は年功制度の影響でかなり高くなっているが、定年後の再就職先では大幅に賃金が下がることが多い。つまり、再就職するよりも、定年前の賃金で算定された失業給付を受けた方が「得」になる。これがモラル・ハザードとなり、この年齢層の就労意欲を阻害しているといわれる(小塩2000、八代2001)。また、高年齢雇用継続給付についても一定の効果は認められるものの、雇用継続給付と在職老齢年金との重複、賃金補助金の帰着、潜在的な受給資格者の顕在化といった問題が指摘されている(八代2001)。

 (2) 非典型労働者の雇用保険加入
 派遣労働者やパート労働者をはじめとする非典型労働者の数は増加する一方であるが、雇用保険の加入率は正社員と比べると低い。2001年の厚生労働省調査によると、派遣労働者の雇用保険加入率は78.7%(「労働者派遣事業実態調査結果報告」2001年)、また、パート労働者の場合は業種や職種によって異なるものの全体で50%前後だとみられる(総務省「雇用保険の適用状況等についてのアンケート調査」2002年)。これは、2001年に雇用保険制度が改正される以前、パート労働者の雇用保険加入要件には、「年収が90万円以上見込まれること」という年収要件、さらに、登録型派遣労働者については年収要件に加えて「1カ月当たりの所定労働日が11日以上」という所定労働日要件があったため、雇用保険に加入できない労働者が少なくなったからだ。これらの要件は2001年4月1日以降なくなったが、多くの非典型労働者が有期雇用契約で雇用されているため、「1年以上引き続き雇用されることが見込まれる」という要件を満たすか否の判断が実際の運用においては難しく、どこまで適用率が上がるかは少々疑問である。この問題は、非典型労働者のセーフティネットという視点と、非典型労働者の雇用保険加入率が上がることによる失業リスク上昇という視点から、今後も議論が続くと思われる。
パート労働者の雇用保険加入率(業種別)
(出所 総務省「雇用保険の適用状況等についてのアンケート調査」2002年)
 (3) 離職理由の判断
 離職者は、受給資格の決定を受けるために、住居地管轄の公共職業安定所において離職理由の判断を受ける。この離職理由によって、給付日数が変わってくる。たとえば、雇用保険の被保険者期間が20年以上で45歳以上60歳未満の者の場合、「倒産・解雇等による離職」だと給付期間は330日となるが、「自己都合」だと150日しかない*1(2006年8月1日現在)。当該離職者がどちらの場合に該当するかの判断は各公共職業安定所において弾力的に行われているが線引きは難しい。
 「倒産・解雇等による離職者」とは、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なしに離職を余儀なくされ、「特定受給資格者の判断基準」にもとづいて公共職業安定所が認めた者をいう。この判断基準によると、「上司、同僚等から故意の排斥または著しい冷遇もしくは嫌がらせを受けたことによる離職」も「倒産・解雇等による離職」に該当するとなっているが、個々の判断は各公共職業安定所の判断に委ねられるため、場合によっては「自己都合」と決定されることもありえる。

 (4) 雇用保険三事業の問題点
 雇用保険三事業(雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業)は、1975年の雇用保険改革で導入されたものだが、その中心は失業の発生を防ぐために企業に対して助成金・補助金を支給する雇用安定事業である。一連の助成金・補助金の効果は必ずしも明らかでなく、逆に「労働者の円滑な転換を妨げている」「(高齢者の雇用促進のための助成金については)企業内部の年齢間賃金格差の調整を遅らせ、長期的には高年齢者の雇用保障を妨げ得る」という指摘もされている(八代2001)。
 なお、冒頭で紹介した通り、雇用保険三事業のうち、雇用福祉事業については原則廃止の方向で見直しが進められている。また、2007年度から雇用保険料は現行の1.6%から1.4%程度に引き下げられる方針で(読売新聞2006年6月7日付け)、国庫負担率も削減される見通しだ(雇用保険部会HP2006)。
(2006年10月20日再掲載)
1 イントロダクション
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