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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第11回講義
公共職業訓練
1 イントロダクション
2 日本における公共職業訓練
3 欧米諸国における公共職業訓練
4 今後の課題
資料編
参考資料
1 イントロダクション

 公共職業訓練とは、都道府県立及び雇用能力開発機構立の職業能力開発施設で行う職業訓練の総称のことをいう。
 日本の公共職業訓練は、「はこもの型訓練」といわれている。つまり、職業訓練のための施設を国や都道府県が建設して、その施設で専ら職業訓練を行っているのである。日本が「はこもの型」の公共職業訓練を実施してきたのは、戦後日本の産業が製造業を中心として発展を遂げてきたという背景と、訓練施設を事業所内に構えることのできない中小企業のための施設が必要であったという事情があるからだ。「はこもの型訓練」には、充実した設備で訓練を実施することができるという利点がある反面、社会ニーズへの対応が遅れがちになる、講座の内容や訓練期間が実情にマッチしない、施設を維持する上でのコストが高い、といった欠点もある。特に近年は、急速な情報技術の発展や多様化する職業に公共職業訓練施設がついていけず、コストパフォーマンスの悪さが目立つようになり、「はこもの型訓練」の限界が指摘されている。そこで、厚生労働省では、民間委託による訓練を開始し、現在、公共訓練施設における訓練約1500講座に加えて、約500講座の訓練を民間教育施設で提供している。
 このような訓練施設における訓練のほかに、厚生労働省では、雇用保険を活用した教育訓練給付金制度を設け、労働者の自己啓発を行っている。教育訓練給付金制度は、1998年に創設された制度で、雇用保険の一般被保険者のうち、支給要件*1を満たした者が厚生労働大臣指定講座を受け、一定の受講修了要件を満たして修了した場合、支給要件期間により受講料の最大で40%(上限20万円)が公共職業安定所から支払われるというものだ。
 しかし、教育訓練給付金制度を含め、現在の公共職業訓練制度は、失業者の増大や雇用保険財政の悪化、そして、就業形態の多様化をうけて、早急な改善を迫られている状況にある。以下、特に問題となっている点について説明したい。
 まず、都道府県立の職業能力開発校は、新規中学校卒業者(又は高等学校卒業者)と離職者を混合で受け入れているところが多いが、基本的な技術の習得を目指す新規卒業者と、すでに職業経験があり、就職に直結する技能の習得や向上を目指す離職者では、職業訓練に対するニーズが異なるため、両者に対応した訓練を提供するのは難しい。
 また、訓練の内容や質も社会ニーズに対応していない。たとえば、公共訓練施設においても、コンピューターを用いた訓練は行われているが、情報技術の速度に追いついていないのが現状である。
 民間委託の訓練については、訓練生の選定や民間事業者への引き渡し方法などに問題があるという指摘がなされている。就職率を比較しても、施設内訓練の修了生が78.5%であるのに対して、委託訓練の修了生は60.5%と、委託訓練の方が18ポイントも低い(2004年度の数字。雇用能力開発機構HP)。職業訓練を受講する者のなかには、再就職の意思がないにもかかわらず、失業給付の延長を受けるために、職業訓練を申し込む者もいるが、公共職業安定所では、職業訓練先に空きがあれば、このような「制度悪用者」の受講も黙認している。もともと再就職する意思がないため、訓練が終わっても仕事を探すことはない。おのずから、就職率は低くなる。公共職業安定所において、まず失業者のカウンセリングを行い、そのうえで訓練が必要だと思われる者だけに、職業訓練を受講させるという方式にしないと、公共職業訓練は単なる「失業給付を受けるためだけのツール」として悪用されてしまいかねない。
 政府はこれまでの公共職業訓練制度の有効性を高めて、若者の就業を支援するために、2004年度から日本版デュアルシステムをスタートした。日本版デュアルシステムとは、訓練計画に基づき、企業実習と教育訓練機関での教育訓練を並行的に実施し、修了時に能力評価を行う訓練制度をいい、35歳未満で、就職活動を続けているが安定的な就業につながらず、同システムを通じ、就職に向けて職業訓練を受ける意欲がある者を対象としている。なお、同システムの類型には、(1) 教育訓練機関が若年者を訓練生として受け入れる「教育訓練機関主導型」と、(2) 受け入れ企業が若年者を有期パート等雇用者として採用する「企業主導型」がある(後述詳細、厚生労働省HP)。
 しかし、企業や学校・生徒における認知度が低い、失業者やフリーター対策であり普及に限界があるという問題点を抱えており、早くも軌道修正を迫られている(日本版デュアルシステム研究会2005)。
(2006年10月20日再掲載)
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