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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第10回講義
高齢者就業支援
1 イントロダクション
2 高齢者就業支援
3 定年制の歴史と現状
4 年齢差別禁止という考え方
5 今後の論点
資料編
参考資料
4 年齢差別禁止という考え方 −アメリカの「雇用における年齢差別禁止法」

 日本型雇用は、伝統的に、定年制と年功賃金という2本の柱によって支えられ、長期的に安定した雇用をその特徴としてきた。しかし、勤続年数と年齢があがるにつれて賃金が上昇するという構造は、逆にいえば、「勤続年数と年齢があがらなければ賃金が上がらない」ということを意味し、最初に就職した企業を辞めて転職する者(会社が変わると賃金が下がる)、40代、50代になってから離職し、再就職する者(高い賃金を要求されるため会社が敬遠する)にとっては、非常に不利な労働市場となっている。
 そもそも、求職者や労働者の「年齢」が採用時や退職時に考慮されることに問題はないのか。日本のようにある一定の年齢に到達すると同時に労働契約が終了する、あるいは、解雇されるという定年制は、本人の労働意欲、能力、体力、経験といったエンプロイアビリティとは直接的には関係のない事実によって、労働関係を切断しようとする行為である。また、採用の段階で、「30歳まで」というように求職者の応募年齢を制限する行為も、エンプロイアビリティとは直接的に関係のない要素によって、求職者の雇用機会を制限するものである。
 このように、「年齢」を採用時・退職時の判断材料にすることは、かつてはアメリカにおいても行われていた。1960年代は、高齢の労働者が高齢であることを理由にレイオフの対象となることがあった。しかし、公民権法制定から3年後に制定された「雇用における年齢差別禁止法*6」(以下、ADEA)(1967年12月15日成立。1968年6月12日施行)によって、使用者が、採用、解雇、昇進、訓練、報酬または雇用条件に関し、高齢労働者を差別すること、年齢を理由に労働者を制限、分離、分類し、雇用上の機会を失わせ、その他その地位に不利な影響を与えること、本法に従うための労働者の賃率を低下させること(4条(a))、が禁止された(詳細については、藤川2000、プレイヤー1997を参照) 。同法は、「年齢ではなく能力にもとづいて高齢者の雇用を促進し、雇用における恣意的な年齢差別を禁じ、年齢が雇用に及ぼす影響から生じる問題に対して、使用者と従業員が対応策を見いだせるよう支援すること」を立法目的とし、対象となる労働者を40歳以上に限定しているので*7、包括的な「年齢差別禁止」を謳っているわけではない。また、適用事業所の規模についても20人以上の事業所に限定している点に注意が必要だ。
 ADEA施行後、表向きには年齢を理由とする高齢労働者の差別は禁止されたが、高齢の労働者や求職者に対する不当な取扱いが完全になくなったわけではない。現実には、年齢差別をうけたと訴える労働者や元労働者による訴訟も数多くある(藤川2000)。また、ADEAが高齢者の雇用をかえって狭めているとする識者も存在する(森戸2001)。
 確かに、ADEAが高齢者の就業機会を改善してきたことを示す証左はないが、高齢者の雇用保護にある程度貢献していることは否定できないだろう(リックス2001)。というのは、ADEAにもとづき雇用機会均等委員会(EEOC)に申し立てる者の数は毎年1万件を大きく超えており、信用や費用の面から差別訴訟を嫌う使用者は、差別的行為を避けようとするからである。
 さらに、ADEAの立法目的が高齢者の雇用保護と雇用促進であるとはいえ、アメリカ労働市場全般に影響を及ぼしていることも否定できない。特にこれは募集や採用段階において顕著である。たとえば、ADEAは、その職業がBFOQに該当する場合を除いて、求人広告において年齢制限や年齢による優遇措置を設けることを禁止している。具体的には、労働者の募集において、事業主が「25歳〜35歳までの者」、「大学生」、「新卒者」といった表現を用いることは違法となる(29CFR1625.4(a))。また、ADEAの保護対象となる年齢層のなかでも、「40歳〜50歳まで」、「65歳以上」といった特定の層を限定した表現を用いることも違法とされる(29CFR1625.4(a))。また、採用面接時に応募者の年齢をきくこと自体は違法とはいえないが、応募者が40歳以上である場合にはADEAの保護対象となるので、事業主が応募者の生年月日を尋ねたり、年齢を推定させるような誘導的質問をするときには、事業主に高齢者の採用を避けようとする意図があるととらえられ、年齢もとづく差別であるとみなされ得る(29CFR1625.5)。これらの点を考慮すると、ADEAのアメリカ労働市場における役割も評価することができるのではないだろうか。
 アメリカで制定されたADEAの影響をうけて、ヨーロッパ各国でも年齢差別を禁止する方向に向かっている。ヨーロッパの場合、早期引退の傾向があるため、退職時ではなく採用時の年齢差別を中心に議論が進んでいるようだ。したがって、定年延長策を模索している日本とは、少し論点が異なるかもしれない。次章では、日本における今後の方向性について考えてみたい。
(2006年10月20日再掲載)
1 イントロダクション
2 高齢者就業支援
3 定年制の歴史と現状
4 年齢差別禁止という考え方
5 今後の論点
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