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2 高齢者就業支援
(1) 日本の場合
日本の少子高齢化は急速に進んでいる。厚生労働省が2006年6月に発表した人口動態統計月報年計(概数)によると、日本の合計特殊出生率(1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に子どもを産むと仮定した場合の平均子ども数)は、1.25と過去最低を記録更新した。諸外国と比較するとその低さがはっきりとわかる。 |
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| 出生数および合計特殊出生率の年次推移 |
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| (出所 厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)」2006年6月公表) |
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| 合計特殊出生率の国際比較 |
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| (出所 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2006年版) |
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2010年には労働力人口の約5人に1人が60歳以上の高齢者になると見込まれており、こうした中、経済社会の活力を維持するためには、高齢者がその意欲、体力、能力に応じて、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会を構築する必要がある。このような社会ニーズに応えるために、政府は、高齢者雇用安定法*2や雇用対策法の改正をはじめ、さまざまな高齢者就業支援策を打ち出している。たとえば、定年の引上げや継続雇用制度の導入等による65歳までの安定した雇用の確保、中高年齢者の再就職の援助促進、高齢特例派遣事業、シルバー人材センターなどを活用した多様な形態による雇用・就業の確保などがその例である。
中高年齢者の雇用安定および再就職を支援する制度には、各種助成金制度などがある。また、高齢者の雇用安定を図る組織として、1971年(昭和46年)に、高齢者雇用安定法(正式名称「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」)(昭和46年法律第68号)にもとづき、社団法人シルバー人材センターが設立され、普及啓発、調査研究、独自事業等の事業のほかに、臨時的かつ短期的な雇用による就業を希望する地域高齢者のために、無料の職業紹介を行っている。また、財団法人高年齢者雇用開発協会では、60歳定年を基盤とした65歳までの継続雇用の実現に向けて、企業に対する相談・援助、研修・講習会の開催、調査研究、情報提供、各種奨励金の支給、広報活動等様々な事業を展開するとともに、中高年離職者等を対象とした緊急雇用創出特別基金事業やキャリア交流プラザ事業を実施している。
高齢者の雇用安定・再就職支援のための助成金
| 助成金の種類 |
対象となる事業主 |
| 継続雇用定着促進助成金 |
継続雇用制度を設けた事業主 |
| 在職者求職活動支援助成金 |
高年齢者等への再就職援助を実施した事業主 |
| 移動高年齢者等雇用安定助成金 |
企業グループ内の中高年齢者を受け入れた事業主 |
| 特定求職者雇用開発助成金 |
高齢者をハローワークの紹介で雇い入れた事業主 |
| 高年齢雇用継続給付 |
60歳時点に比べて賃金が15%以上低下した状態で働き続ける雇用保険の被保険者給付 |
| 再就職支援会社活用給付金 |
民間の再就職支援会社を活用し、再就職援助計画対象者を離職後直ちに再就職させた事業主 |
現在、老齢基礎年金の受給開始年齢は65歳から、老齢厚生年金の場合も同じく65歳からとなっているが、65歳までの高齢者雇用が定着していない事情を考慮して、この5年間の生活を保障する目的とした「特別支給の老齢厚生年金」が支給される。「特別支給の老齢厚生年金」には、報酬比例部分と定額部分があり、1941年(昭和16年)4月1日以前生まれの者はこの両方を60歳から受け取ることができた。しかし、破綻しつつあるといわれる年金財政をやり繰りするために、老齢年金の受給開始年齢は、段階的に引き上げられている。
このような現状を考えると、65歳まで安心して働くことができるよう企業に働きかけると同時に、確定拠出年金の普及や退職後の生活をサポートする個人年金・個人口座の整備を図るのは、政府の責務であろう。
(2) 欧米の現状
後に詳述するようにアメリカに代表される一部の欧米諸国では、雇用における年齢差別を禁止している。このような政策の目的は、高齢者の雇用安定が主であるが、アメリカや欧州における高齢者の労働力率が高いというわけではない。
欧米諸国では、おしなべて高齢者の労働力率が低下しているが、今後は、平均寿命の延長、年金財政の逼迫などを受けて、引退年齢は高くなっていく可能性もある。
アメリカの高齢者の就業支援は、主として州や市レベルで行われているが、NPOの活動も盛んである。世界最大のNPOといわれるAARP(American Association of Retired Persons 全米退職者協会)は、会員数3,500万人以上、全米2,500カ所以上に支部があるというマンモス団体で、2004年度の収入は878億円を超える(AARP HP 2006年8月1日現在)。1961年の設立以来、雇用における年齢差別禁止法(ADEA)の制定、高齢者医療保険(Medicare)や医療扶助(Medicaid)の導入などを支援してきた。会員資格は「50歳以上」であることだけで、年会費はUS$12.50である(2006年8月1日現在)。AARPの活動は、各州によって異なるが、たとえば、ニューヨーク州・市のAARPでは、ニューヨーク州、ニューヨーク市、市内のNPOとのパートナーシップにより、「ジョブハブ」という高齢者の就業サポートプログラムを提供している。プログラムを提供しているのはほとんどがAARPの会員でボランティアである。このほか、ニューヨーク市には、ニューヨーク高齢者財団という組織があり、老人ホーム、シニアセンター、オンブズマンプログラム、高齢者就職支援センターなどの運営を行いながら、ニューヨーク市から助成金を得て高齢者の就業訓練、就業支援を行っている(大阪NPO通信2002)。
なお、連邦労働省の管轄のもと、各州法にもとづきNPOが実施主体となって行っている高齢者向けプログラムとしては、高齢者地域サービス雇用プログラム(Senior Community Service Employment Program)がある。これは、55歳以上の低所得者(少数民族中心)に対し、正規雇用を促すためのパートタイム労働の機会を提供するものである。このプログラムのもと、職業訓練も行われている。
アメリカにおいても日本ほどではないが、高齢化社会になりつつあり、政府として高齢者の就業を促進したいところだ。そこで、公的年金制度を就業促進的な制度にすることで、高齢者の就業促進を図っている(諸外国報告書2001年)*3。
高齢者の就業を促進する政策は、イギリスでも同様に導入されている。ニューディール50プラス、高齢者徒弟制、弾力的な段階的引退を促すための実験的な取組み、年齢による雇用差別是正法制定のためのワーキンググループの設置といった積極的な新政策が採用されている。
一方、フランスでは、65歳以上の労働力率が低いことからもわかるように、高齢者の就業意欲は低い。企業も40歳台以上の中高年齢者の職業訓練には消極的で、50歳以上の失業率は著しく高い。このような現状を打開するために、政府は、段階的退職制度の導入、公的年金制度見直し案の策定などを行っている。また、2002年には差別原因に「年齢」を含む、「職場における雇用差別禁止法」が成立している(諸外国報告書2001年)。
ドイツもフランスと同じく早期引退の傾向が高く、また「年齢差別」という概念が低いという土壌がある。高齢者の労働環境改善に向け、受身的な「高齢者労働政策」から「年齢中立的な」雇用促進政策への転換が迫られている(諸外国報告書2001年)。 |
| (2006年10月20日再掲載) |
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