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 Works University
―労働政策講義― Works Institute
リクルートワークス研究所
第10回講義
高齢者就業支援
1 イントロダクション
2 高齢者就業支援
3 定年制の歴史と現状
4 年齢差別禁止という考え方
5 今後の論点
資料編
参考資料
1 イントロダクション−あなたは何歳まで働きたいですか?

 日本人はどうも働くのが好きらしい。わが国の高齢者の就業意欲が高いことは一般に知られているが、55歳以上69歳以下の高年齢者を対象としたアンケート調査で、「何歳で仕事を辞めたいか」(引退希望年齢)という問いに対して、男女ともに65歳〜69歳(男性41.2%、女性41.2%)と答えたものが最も多かった。この引退希望年齢は、回答者の年齢が高くなるのと比例して、上昇しており、男性の場合、55歳〜59歳の年齢層だと「70歳以上」と答えた割合は、12.6%だったのに、65歳〜69歳の年齢層になると、83.1%にまで上昇している(高年齢者就業実態調査2000)。実際に自分がその年になってみると、まだまだ体力知力も十分あり、働くことができると実感したといったところだろうか。
 日本の高齢者の労働力率を諸外国と比較してみると、その高さが顕著に表れている。2006年版(平成18年版)国民生活白書によれば、日本の60〜64歳男性の労働力率は70.7%だが、アメリカ57.0%、フランス19.0%、ドイツ37.7%、スウェーデン65.3%ともっとも高い(国民生活白書2006)。
 また、引退年齢を比較しても日本は国際的に高いことがわかる。たとえば、男性の場合、ドイツ60.3%歳、アメリカ62.2歳、スウェーデン62.0歳と、欧米では60代前半が一般的なのに対し、日本は65.2歳となっている。
平均引退年齢の国際比較
男性 (単位:歳)
  ドイツ   スウェーデン アメリカ    日本  
1965-70 64.7 65.7 64.1 66.6
1980-85 60.6 63.7 62.9 64.7
1990-95 60.3 62.0 62.2 65.2
女性 (単位:歳)
  ドイツ   スウェーデン アメリカ    日本  
1965-70 63.0 65.5 65.3 63.8
1980-85 60.3 62.8 62.9 62.4
1990-95 59.9 62.0 62.7 62.9
(出所 ユースフル労働統計2006)
 引退年齢が欧米よりも高い理由として、日本の社会保障制度が不十分であることをあげ、高齢になっても働かざるを得ないのが現状だとする意見もある。確かに、ドイツやスウェーデンなど多くのヨーロッパ諸国では、高負担高給付の社会保障制度を採用しているため、引退後の公的年金依存度は高い。高齢者の生活の主な収入源について尋ねたアンケート調査によると、「公的な年金」で生活費をまかなっている割合が、日本(67.5%)、ドイツ(75.8%)、スウェーデン(80.1%)、アメリカ(56.6%)となっている(高齢者の生活調査2001)。アメリカの公的年金依存度が比較的低いのは、老後の生活費について、「働けるうちに準備し、家族や公的な援助には頼らないようにすべき」と考える人が多く(高齢者の生活調査2001)、また、実際に受け取る老齢年金の金額が低いためであると思われる(65歳から月額697.3ドル)。
 日本の社会保障制度は、ヨーロッパほど充実していないかもしれないが、アメリカに比べると、医療制度、公的年金制度は、整備されているといえそうだ*1。それなのに、なぜ日本人はアメリカ人よりも高い年齢まで働くのか。
 そこにはどうも「働くこと」に対する考えの違いがあるような気がする。たとえば、アメリカで65歳を過ぎても働いている高齢者に対して、多くのアメリカ人は、「65歳にもなってまだ働かなければならないのか」というどちらかというとネガティブな印象をもつようだ。キリスト教の「労働は苦役」という考えがベースにあるからだろう。
 一方、日本では少々事情が異なる。65歳を過ぎても働いている高齢者に対して、我々日本人は「あの人は働き者だ」「雇ってくれる会社があるなんて羨ましい」と、好意的な印象をもつ人が多いのではないだろうか。現実は、家に居ても何をしていいかわからないので、働きに出た方がましだからという人や、家に居たら妻に煙たがられる(男性の場合)という人が多いのかもしれないが、日本の場合、「労働は苦役」ではないのである。逆に、働くことに生き甲斐を感じる人も少なくないはずだ。
 少子高齢化による労働力不足が議論されるなか、高齢者に長く働いてもらうことで、労働力を確保しようと、さまざまな高齢者就業支援策が打ち出されている。また、明治以来、日本雇用の柱となってきた「定年制」についても、廃止論や延長論が飛び交い、アメリカのような年齢差別禁止法を導入してはどうかという意見もあがっている。いずれも、高齢者の雇用を促進するためのものだ。崩壊寸前といわれる公的年金の負担を軽くするためには、老齢年金の支給時期を遅らせる必要があるという事情もあり、これから先、日本の引退年齢はさらに遅くなるに違いない。
(2006年10月20日再掲載)
1 イントロダクション
2 高齢者就業支援
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