Column

多様な人材のマネジメントの難しさ
大久保幸夫

ダイバーシティ経営が進む中で、現場のマネジャーは多様な人材のマネジメントに直面している。2017年に現職のマネジャー約1000人を対象に調査をしたところ、その実態が明らかになった。

図:多様な人材のマネジメントに関する実態

※画像をクリックすると拡大します

 

まず多様な人材のマネジメント経験だが、やはり相当比率のマネジャーがすでに部下の多様性に直面していることがわかる。妊娠・出産から育児との両立に至る女性のマネジメントはすでに過半数のマネジャーが経験しているし、メンタルヘルスに問題がある部下もほぼ半数のマネジャーが経験している。大人の発達障害やLGBTsの部下を持つ経験も今後急速に増えてくるのだろう。
以前には職場にこのような多様性は存在しなかったために、上司や先輩のマネジメントを観察してノウハウを得るということもできない。多忙な中でマネジメントに悩んでいるようである。マネジメントストレスありと回答した比率は、各対象いずれも高い数値が出ている。

マネジメントの難しさはどこからくるのか?
なぜマネジメントが難しいのか。
ひとつは、これまでの仕事の割り当て(ジョブ・アサインメント)ではうまく回らないからである。表にある通り、すべての対象者について、「職務の設計、割り当てが難しい」「業務上の指示・命令が難しい」というジョブ・アサインメントに関する項目が上位3項目内に入っている。

労働時間に制約がある部下には、どのように仕事を割り当てればいいのか。残業をしない前提で仕事を回すことに慣れていないので、重要度の低い仕事のみをアサインすることになりがちだ。また外国人や高齢者、障がい者となると、どのような仕事が適材適所のマッチングになるのか、それを見極めないといけないが、個々の経験や能力を深く理解していないとできることではない。割り当てするときの動機づけにも特有のコミュニケーションが必要になる。メンタルに課題を抱える部下であれば、業務上の指示・命令を出すときに「もっと頑張れ」とは言えない。どこまで求め、どう配慮するべきか悩むことだろう。
本来、多様な人材がいる組織は、いい意味でのカオスがあり、多様な視点から意見が出るため、創造的な仕事が進むはずだが、現実はもっと手前のところで立ち止まっているように見える。

多様な人材のマネジメントに必要なもの
もうひとつは、それぞれの対象者ごとに、マネジメントをするうえで必要となる知識やコミュニケーションのポイントがわからないことだ。たとえば妊娠・出産を迎えようとしている部下を持つならば、出産に至るまでの基礎知識(いつ安定期に入る、いつつわりがひどくなる等)が必要だが、知らない人が多い。また産前産後期や育児両立に関する法的知識や社内制度の知識も必要だが、これも心許ないのではないか。図でも14.1%が「一般的な知識を持ち合わせていない」と回答していることからもわかる。

今回の調査対象には入れていないが、がんに罹患した部下がいる場合、がんに関する基礎知識がないと適切にマネジメントできない。がんは早期に発見すれば高い確率で治癒するようになっているが、「死に至る病」というイメージが強いために、がん治療の現状についての認識がないと、部下から報告を受けた時に絶句してしまい、マネジャーとしての適切な支援行動がとれなくなる。家族の介護を抱えた部下がいる場合は、初期の対応が重要だ。はじめて親の介護に直面したときはパニックになりやすい。親の面倒を自分が見なければと思うあまり、離職などの行動にでやすい。マネジャーに介護に関する基礎知識があれば、離職に至るリスクは回避できるだろう。また介護が発生したことを伝えると、昇進や評価に影響するのではないかと思い、介護を隠す(隠れ介護)ことにもなりやすい。それだと介護に関する様々な支援制度が受けられないため、行き詰ってしまうだろう。

仕事の割り当てのスキル、そして基礎的な知識やコミュニケーションのポイントなど、これらは今後ダイバーシティの研修などで現場のマネジャーに伝達していくとともに、専門部署が情報を蓄積して提供し、外部の支援機関を活用してマネジメントにあたるマネジャーを支援するなどの対応が必要になる。
ダイバーシティ経営が本来あるべき経営効果を生み出すためにはここが正念場なのではないだろうか。

大久保 幸夫


[関連コンテンツ
ジョブ・アサインメントスキルがマネジャーを変える
働き方改革 個を活かすマネジメント
人事視点による持続的生産性向上モデル

2018年02月07日