Column

人事部の、最も重要であるのに、全く解決されない課題
城倉亮

今、人事部にとっての最も重要な課題とは何か。
リクルートワークス研究所は、昨年「Works人材マネジメント調査2017」(以下、本調査という)を実施し、東証一部上場企業197社から回答を得た。本調査のなかで、人事課題として考えられる30項目について、「まったく課題として認識していない」から「特に重要な課題だと認識している」の4段階で回答してもらっている。その結果を1~4点で得点付けし、平均スコアを算出した。そのランキングトップとなった課題は何か。

ここ数年「働き方改革」が世の中の大きな潮流となってはいるが、多くの企業が取り組んでいる「労働時間短縮への取り組み」は意外にも3位にとどまった。また、高い有効求人倍率に代表されるように、人手不足も人事部門を悩ませているが、「新卒採用の強化」や「中途採用の強化」も、順位は上がったものの1位の人事課題ではなかった。
「次世代リーダーの育成」。
この項目こそが、最も重要性が高い人事課題である(図表1)。Works人材マネジメント調査は2001年から2年に1度実施しており、2017年で9回目となったが、「次世代リーダーの育成」は、2007年の調査を除き、トップの人事課題であり続けている。

図表1:企業の人事課題(全産業スコアの高い順)

出所:リクルートワークス研究所「Works人材マネジメント調査2017」

 

では、これだけ長い期間にわたり、課題だと認識され続けてきた「次世代リーダーの育成」について、企業ではどのような取り組みがなされているのか、本調査の結果から見ていきたい。

課題だと認識していながら、取り組みが進まない
「次世代リーダーの育成」という課題を克服しようとするときに、どんな施策が打てるだろうか。たとえば、次世代リーダー候補の人材プールを見える化するために、タレントマネジメントシステムを導入する。次世代リーダー候補に早くから帝王学を教えるために、早期に人材選抜を行う。そういった施策が考えられるだろう。しかし調査結果を見ると、実際にそれらの施策に取り組んでいる企業は決して多くない。

図表2は、タレントマネジメントシステムの導入状況について、回答企業全体と「次世代リーダーの育成」を「特に重要な課題だと認識している」と回答した企業を並べたものである。
全体では、63.5%がタレントマネジメントシステムを導入しておらず、「次世代リーダーの育成」を特に重要だと認識している企業であっても、56.1%が導入していないという結果であった。これでは、次世代リーダー候補の可視化が進まず、育成につなげることはできない。

同様に、図表3は早期選抜人事制度の導入状況について、回答企業全体と「特に重要な課題だと認識している」企業を比較しているが、こちらも導入していない企業が67.0%を占め、特に重要だと認識している企業でも、59.2%は導入していない。これでは、次世代リーダー候補がいても、早い段階から適切な責任と役割を与えて、経営者として育成することはままならないだろう。

図表2 タレントマネジメントシステムの導入状況

出所:リクルートワークス研究所「Works人材マネジメント調査2017」

図表3 早期選抜人事制度の導入状況

出所:リクルートワークス研究所「Works人材マネジメント調査2017」

 

今こそ本腰を入れて「次世代リーダーの育成」に取り組むべき
早くから課題に対する施策に取り組んでいる企業でも、なかなか成果にはつながらない現状もみられる。たとえば、「特に重要な課題だと認識している」企業において、早期選抜人事制度を「導入しているが、見直す予定だ」と回答している割合が10%を超えている。先進的に取り組む企業は、既に施策に取り組んでいるが、成果につなげるための改善策を模索している状況なのだろう。「次世代リーダーの育成」は、施策を導入すれば、すぐに成果が出るというシンプルな課題ではない。

昨今、人事は「戦略人事」であるべきだと叫ばれ、より経営と一体となって業務に取り組むことが求められている。そのような人事部にとっては、この「次世代リーダーの育成」こそ、最も緊急度も重要度も高い課題である。まだこの課題解決に取り組めていない企業は、一日も早く検討を始めるべきであり、取り組んでいる企業も、成果につなげるためには、施策をブラッシュアップし続ける必要がある。今こそ、人事部が「戦略人事」として確立するために、「次世代リーダーの育成」にむけて本腰を入れて取り組むべきである。

城倉亮


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2018年04月03日