Column

「困難な仕事、ただし、成長あり」のマザー求人のすすめ
萩原牧子

人手不足社会の到来とダイバーシティの浸透により、企業は女性の活用に本腰を入れて取り組み始めている。特に、自社の女性が出産育児を経ても働き続けられるような環境づくりに熱心な企業は増えつつある。一方で、中途採用のターゲットとして、あえて子供をもつマザーを狙って活動している企業は、人手不足が深刻な飲食サービス業界と女性がメイン顧客であるファッションアパレル業界を除けば、ほとんど存在しないのではないだろうか。

女性の社会進出が進んだといわれて久しいが、第一子の出産を機に6割もの女性が退職しているという実態は、ここ30年を遡ってみてもほとんど変化が見られない※1
そして、いったん退職すると、彼女たちの働き方はかなり限定される。

出産育児で退職するか否かで「異なる」現在の働き方
例えば、就業形態について。現在働いているマザーを、出産育児を理由に退職した経験のあるマザーと、退職しなかったマザーとに分け、現在も正社員で働く割合を比較してみる(図1)※2。退職しなかったマザーの8割弱が現在正社員として働いているのに比べ、退職したマザーの正社員割合は、12.5%にしか過ぎない。社会にでて初めて就いた仕事(初職)の就業形態を比べてみると、両者ともに正社員で働いていた割合は8割強とほぼ同じであるにもかかわらず。

図1 現在と初職時の正社員として働く割合
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出産育児を理由に退職したマザーは、就業よりも育児に対する優先度が高いために、現在はその働き方を選択しているのだ、という意見があるかもしれない。そこで、望ましい働き方について尋ねた設問についても比較してみよう。

AとBのどちらが望ましい働き方に近いかを4段階(Aに近い、ややAに近い、ややBに近い、Bに近い)で尋ねた2つの設問。このうち、ひとつめは「A:成長しないが低負荷/B:高負荷だが成長できる」ことに関して、もう一つは「A:昇進にこだわらない/B:昇進する」についてである(図2)。

出産育児で退職するか否かで「変わらない」望ましい働き方
とても興味深いことに、両設問ともに、マザー間で回答傾向はほとんど変わらない。そして、回答はAとBのどちらかに偏るのではなく、分かれていることも重要な情報だ。マザーの過半数は負荷が低くて、昇進にはこだわらないと回答した一方で、別の半数近くのマザーは負荷が高くても成長する仕事を望み、3~4割は昇進することを望んでいる、と回答している。

図2 望ましい働き方
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ところが、先ほどもみたように、一度退職するかしないかで、マザーの働き方は大きく異なる※3。世の中にでている求人情報に目をとおしても、マザーを歓迎する求人内容はほぼ同じ。「時間が短く」「難しくないので安心、未経験者もOK」で、そして、「非正規」である。

マザーの活用=「時間制約」×「責任負荷を減らす」、は正しい?
これまで私たちは、マザーの活用といった場合に、時間に制約があることと、責任や負荷を減らすことを、一律に組み合わせてきたのかもしれない。いや、そもそも、時間の制約があるという捉え方も疑わしいのではないか。たとえば、保育園のお迎え、夕食の準備には、フルタイムでも残業なしできっちり帰れれば、間に合うというケースも多いだろう。日本の企業風土では、残業がある働き方を前提としてきた。それが、フルタイムで働いていたとしても、残業ができないだけで、マザーは時間に制約があると捉えてきた背景にある。だが、長時間労働を前提にすること自体、今、多くの企業で見直しが始まったところである。

企業にとって大切なのは、長時間労働によって仕事を成し遂げることではなく、効率よく仕事をして生産性を高めることの方だろう。それならば、まだ競合相手が少ないうちに、優秀なマザー人材を狙って、いち早く採用活動を始めることをお勧めしたい。「求む、マザー。残業なし-困難な仕事、ただし、成長あり-」。合わせて、成果でしっかり評価して、昇進への道を用意することもお忘れなく。

 

※1 国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査 夫婦調査」
※2 首都圏で働くひとを対象にした「ワーキングパーソン調査2014」(リクルートワークス研究所)の子供をもつ現在50歳未満の母親を集計対象とした。
※3 離職せずに就業を継続し、現在正社員で働いているマザーが、望ましい働き方を実現できているというわけではない。子供をもつという会社側からの配慮もあり、挑戦的な仕事や責任の重い仕事を任せられる機会や経験が減少し、その先のキャリアについて悩むワーキングマザーは多い。

萩原牧子


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