Column

リケジョの採用・活用を考える
戸田淳仁

女性活躍推進法が成立するなど、女性の活用にむけての取り組みが進められている。あわせて、新卒採用においても女性の採用比率を高める動きがみられる。このコラムでは、女性の新卒採用、特にリケジョの採用・活用の現状について見ていきたい。

製造業を中心に新卒の女性を増やす
まずは、企業の採用動向について確認しよう。ワークス研究所が昨年12月に発表した「ワークス採用見通し調査」によると、現在行われている2017年卒者に対する企業の採用活動において、女性の比率を高めるという企業が14.1%である。過去にこのような調査をしていないためこの数字について評価できないが、従業員規模や業種を見ると女性を積極的に採用しようとする企業の特徴がうかがえる。従業員規模1000人以上では20.8%、製造業のうち機械・プラント・エンジニアリングや自動車・鉄道では28.0%となっているように、規模の大きい企業や製造業を中心に女性を増やそうとしている。特に、製造業では技術職における女性比率を課題と考え、リケジョの採用に力を入れようとする動きが出ている。
リケジョの採用については、ここ2,3年において「リケジョを採用しようとしても、そもそも数が少ない」というメーカー企業の声が聞かれる。たしかに多くの企業においてリケジョの採用が増えれば、人数の点でそれだけ人材の採用が難しくなる。

あまり変わらないリケジョの就職状況
文部科学省「学校基本調査」より、リケジョの就職状況を見てみると、2005年卒、2010年卒、2015年卒の三時点を比較すると、男女ともに理系の就職する学生は2010年卒から2015年卒にかけては増えている。リケジョ自体の数も就職する学生から見る限りでは増えていると言える。ただ、就職する学生は男性が約8万人であるのに対し、女性は2万人にすぎず、この数の差を見る限りリケジョは多くないと言えそうである。

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しかし、理系出身者のうち技術職に就職する比率を見ると、男性では7割となっているが、リケジョは5割を下回ることもあり、男女で大きな差がある。「学校基本調査」をみると、リケジョで技術職に就かない学生は事務職や販売職などに就職している傾向があり、学校で学んだ専門性を生かした仕事についているかは疑問だ。
こうしたことの背景には、第1に、技術職に男性が多く、女性活躍が進んでいない。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、従業員100人以上企業の管理職に占める女性比率は8.3%だが、技術職の多い製造業は3.0%、情報通信業は6.5%と下回っている(いずれも2014年の値)。そのため技術職になったとしてもキャリアパスが描けないことが懸念される。第2に、技術職として働く環境はワークライフバランスがとりにくく、技術職への就職を敬遠することにつながっている。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2014年の月平均の総実労働時間は145.1時間であるが、製造業は163.2時間、情報通信業は163.6時間である。労働時間が長いとワークライフバランスがとりにくく、働きやすさといった観点からも敬遠されてしまう。
それに加え、企業でも新卒の女性採用について、効果的なやり方を見出せていないのが現状だ。昨年の企業の採用活動においても、新卒女性を増やしたい企業は女性向けの会社説明のパンフレットを作るなどしてアピールをしていたが、大きな効果があったとは言えない状況だ。さらにそもそも従業員に男性の多い企業では、採用の面接などで男性が対応せざるを得ない場面が多く、どのように自社の魅力を伝えるかが課題といわれている。

リケジョの活用に対して企業の役割は大きい
確かに人数の点でリケジョは少ないため、リケジョを増やすことが国の政策として必要という考え方もあるが、リケジョの数を増やす議論をする前に、男性並みの7割とまでは言わないまでも、よりリケジョの技術職就職比率を高めるようにしていくことが必要ではないか。そのためには、リケジョが技術職に目を向け就職できるようにしていくべきであり、企業に求められていることが多いと考える。採用の場面におけるアピールもさらに必要だが、それだけではなく、社外から見ても憧れを持てるような女性社員が働いているような状況になるよう、社内での活躍推進をさらに進めていくことが必要だろう。

戸田淳仁


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