Column

「留学生30万人計画」は達成されるか
戸田淳仁

今年に入り外国人観光客が増加の一途をたどり、外国人に関する話題が増えているが、留学生に関しての話題は、一時期のブームから落ち着いたように思える。2010年前後では、グローバル人材の育成とともに留学生の採用意欲が高まり、一部の企業では海外の大学・大学院を卒業した学生を採用する動きも見られた。こうした動きはその後メディアではあまり扱われなくなったようだが、現状はどうであろうか。

「留学生30万人計画」後の留学生の動向
一時期のブームを牽引した要因として、2008年に文部科学省が策定した「留学生受け入れ30万人計画」がある。日本が世界に開かれた国として、人の流れを拡大していくために重要であるとして、世界の留学生市場が急拡大することを想定し、2020年までに留学生の受け入れを当時の約2倍である30万人までに増やすという計画だ。こうした計画を背景に、世界各地で留学生の受け入れを目的としたイベントや教育機関同士の連携などが行われた。
データを見ると、2014年度の留学生の数は約18万人(日本語教育機関への留学生4.4万人を含む)となっており(独立行政法人日本学生支援機構調べ)、留学生の数は着実に増えているものの、30万人に到達するには道半ばであろう。こうしたことの背景に、「たとえ日本に留学したとしても日本企業で就職するのが難しかったり、いい仕事に就けない」といった声が聞こえる。はたして留学生の就職事情はどうなっているのだろうか。toda04

日本企業の外国人採用は増えていない
当研究所の「企業の採用動向と採用見通しに関する調査」によると、日本企業における大学生・大学院生の採用数のうち外国人にあたるのは1~2%にすぎない(図表1)。2012年卒から2013年卒にかけて割合が2倍となっており大きく変動しているといえるが、その後は横ばいだ。2013年卒あたりより企業の採用数が増えているので、人数としてはある程度増えているといえるが、大きく変化しているとは言えない。
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業種別に大学生・大学院生の新卒採用数に占める外国人の割合をみると、機械器具製造業(3.4%)や飲食店・宿泊業(2.5%)で割合が高く(図表2)、業種によって突出して高いといった状況はない。製造業では将来の海外でのマネジメントのポジションを想定した職種や研究を含めたエンジニアリングの職種が多く、また飲食店・宿泊業では、学生時代のアルバイトからそのまま就職するケースや、海外展開を進めている中で海外店舗のマネジメントが期待されている。
外国人に対して「日本人であろうと留学生・外国人であろうと優秀な人は採用したい」「日本人よりも外国人の方が意欲は高い」といった企業の声が聞こえるのは今でも変わらない。しかし、留学生を含め外国人の採用が増えていない理由として、企業側から「外国人を採用したとしても、どのように活用すればよいかわからない」といった意見がある。たしかに、日本人の新卒者と同じように研修を行い、配置をしたとしても、外国人が数年を経て離職するケースが続けば、こうした見方になるのは理解できる。

外国人の活用方針の明確化が課題
留学生を含めて外国人の採用が増えず、結果的に留学生にとって魅力的でなくなっているのであれば、やはり企業の外国人の活用方針に課題があるといわざるを得ない。比較的外国人社員の多い企業で外国人社員にヒアリングをしても、「上司である日本人は英語を話せるとしても、英語で話そうとしないのでやる気がなくなる」「自分たちの働きぶりで何が評価されているかわからない」という声が聞こえるので、こうした課題はどこの企業においてもほぼ共通しているだろう。
言葉の問題やコミュニケーション技術の問題と言ってしまえばそれまでであるが、より根本的な課題は外国人の活用方針があいまいである、または、仮に明確にしていたとしても日本人従業員にきちんと伝わっていないことだと考える。外国人は日本人とは異なるため、日本人の常識が必ずしもすべて通用しないのは当たり前だ。それを踏まえたうえで外国人の持つ強みを引き出すように考えていかないと、外国人、日本人がお互い同じ職場で働いたとしても気持ちよく働くことはできないだろう。外国人の活用方針を明確にし、働きやすい環境にすれば、より日本に対する魅力がわき、日本に関心を持つ外国人も増えると期待する。
「留学生30万人計画」は達成されるだろうか。達成するか否かは、日本企業における外国人の活用方針次第である。

戸田淳仁


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2015年11月04日