Column

ZIPWORK(基幹業務×時短×昇給)の可能性
中尾隆一郎

ZIPWORKキャンペーン始まる
9月19日の日経新聞朝刊に「リクルート、基幹業務に時短社員 成果など反映し昇給も」という記事が載った。見出しには、「基幹業務」×「時短」×「昇給」というキーワードが並ぶ。これはリクルートホールディングスのiction!事務局が中心になって行うZIPWORK(ジップワーク)という新しい働き方の提案だ。各自が専門性を持ち運び、時間をギュッと圧縮して短時間で働くという意味をZIPと表現した。リクルートグループ各社から展開し、今後この働き方に賛同する企業を募り、どんどん広めていくという。
※iction!:「子育てしながら働きやすい世の中を、ともに創る」プロジェクトの名称。

ZIPWORKそもそも、仕事を探す時、どのような軸があるだろう。世界最大級の求人検索サイトindeed.comでは、2つの検索窓があり、『キーワード(職種、会社名)』と『勤務地』を記入するようになっている。制約条件の少ない人は、キーワードに職種を入力し、勤務地は東京都など広めに選択ができる。ところが、例えば子育て中、介護中、勉強中の人は、時間に制約があり、勤務地を狭く選択せざるを得ない。ところが専門性を活かせる仕事は、フルタイムである事が多い。結果、時短(1日5時間など)や日短(週に3日など)を希望した瞬間に、専門性の優先順位を下げるしかなくなる。

企業の側がその制約条件を無くすことで、新しいマッチングができるのではないかという仮説のもとスタートしたのが、このZIPWORK。事業企画、人事、総務、経理、広報、統計解析などの経験者で、時短や日短で働きたい人に、まずはリクルートグループ各社で就業してもらおうというトライアルだ。グループ各社に趣旨を説明したところ、すぐに20職種30人の求人募集が集まった。一部の仕事はリモート勤務も可能。これら、時間、場所の制約を外すことにより制約条件がある人が専門性を活かせる就業の可能性が高まる。

ZIPWORK拡大の可能性とその意義
ZIPWORKが広がるかどうかには、5つのポイントがある。
①企業側のニーズがあるのか
②専門性に見合った報酬になるのか
③個人側のニーズがあるのか
④両者のニーズが一致し、マッチングできるのか
⑤企業は一定期間後評価を行うのか
⑥その評価によって昇給するのか。

まず、①企業側のニーズは、リクルートグループにはある事が分かった。②の報酬も専門性から、それに見合う額が設定できている。⑤評価と⑥評価による昇給は、一定期間後の振り返りが必要だが、リクルートグループ各社では、振り返りを実行する。残りは③個人のニーズ ④マッチング。応募の出だしは上々だ。

子育てや介護、健康面で働きたいが働けない人は全国に300万人以上いるとみられる。趣旨(専門性を活かせる仕事×短時間×昇給機会)に賛同する企業が増えれば、ZIPWORKという働き方が広がっていく。結果、個人の選択肢が増えていく。

このZIPWORKは別の見方もできる。UberやAirbnbなど車や部屋のストックの有効活用がビジネス化している。私たちの時間もある意味ストック。このストックを有効活用する1つの可能性がZIPWORKだと考えられる。Uberの時間当たりの収入は、フルタイムのタクシーの運転手より多い。その意味では、時間と言うストックを有効活用できている。今後、日本は労働者人口が減っていく。介護含め制約条件がある人が増えていく。専門性のある人材を有効活躍できる仕組みが必要だ。ZIPWORKには、そのきっかけになってほしい。

中尾 隆一郎

2016年10月05日