Column

インターンシップの未来
村田弘美

新卒採用活動時期の変更にともなって、インターンシップに興味を持つ企業や学生が増えている。どのようなプログラムを実施すればよいのかと試行錯誤する企業も多いようだ。海外に目を転じれば、グローバル企業では、インターンシップが採用に直結するなど様相は異なっている。米国では、インターンシップ経験者の入社5年後の定着率が57.3%と高いことから約9割の企業が制度を導入しており(1)、100年の歴史から日本企業が学べることも多くある。昨年から今年にかけて実施した主要国の調査などから、3つの疑問にアプローチしてみたい。

1. どのように優秀な学生にオファーしているのか
近年、最も話題となったのは、F1インフィニティ・レッドブル・レーシングチームが世界12カ国からタレントを選抜したインターンシップだ。選考基準は大変厳しいが、勝ち残った2名の学生は英国で1年間、最先端の就業経験と高額な報酬、住居を提供される。欧米では、インターンシップの募集にはルールや規制がなく、自由な発想でエリート学生にアプローチすることができる。

インターンシップの募集は、キャリアフェアやオンキャンパスリクルーティングを中心に行うのが一般的である。最近では、リファーラルや専用の求人サイト、ソーシャルメディアも活用されているほか、エリート校11校に対象を絞ったiNet(2)や、上位校22校限定のUCAN(3)という独自の情報提供ネットワークも活用されている。
「Internship 2015(4)」によると、グローバル大手企業は「ターゲット(指定)校制」をとっている。たとえば、デロイト社は全米の約300校の学生に限定しているが、指定校の選定には、大学の規模や教育プログラムの質の高さ、定着率などの実績、パフォーマンス、大学の学部ランキングなどの外部評価を参考にしているという。大学名だけでなく、本当に質の高い学生を生み出す場を再考する機会にもなっている。

2. なぜ学生のうちから即戦力となり得るのか
企業は指定校制に加えて成績も重視する。米ビジネスウィーク誌の調査では、インターンシップ選考の際に、学生に重要な資質として、専攻分野、大学のGPA(成績)に加えて、リーダーシップ、分析力を挙げる企業が多い。コミュニケーション能力や社風への適性などを重視する日本企業と比べて、グローバル企業は、早期から未来のリーダーとなり得る人材に絞りこんでいることが窺える。

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3. どのような仕事を任せているのか
グローバル企業のインターンシップは、「社員同等型」「社員補佐型」「プロジェクト型」の3つに分類できる(5)。「社員同等型」は、従業員と同じ職務が与えられる即戦力として働くもので、職種ではアナリストやコンサルティング、エンジニア、販売などが挙げられる。「社員補佐型」は、マーケティングや番組制作などで、例えば人事部での仕事は人事管理や給与データの解析、支払い業務で社員の職務をサポートするほか、ジョブシャドウィングを通じて、スキル、技術、取り組み姿勢、効率性、チームワークなどさまざまなことを習得させる。「プロジェクト型」は商品企画や競合分析、調査、イベント企画などの専業に多いが、顧客体験など、社外人材としての立場から商品サービスを評価させることもある。全体としては、単純作業などはほとんどなく、むしろITや金融業など、インターンシップ人気ランキング上位の企業では難易度の高い職務に就かせている。

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インターンシップの未来は
若年者のキャリア支援で大切なことは3つある。
1つめは、リアルな情報を知ること。イメージやバーチャルな世界ではなく、労働の現場の事実を伝え、知らせる機会を持たせることが必要である。業界や職業情報、職業教育などのリアルな情報提供は、結局のところキャリア選択や職業選択の近道となる。自分の選択した職業の需要や、地域の産業構造の変化、収入などの現実的な側面を知ることも必要だ。
2つめは、学業と職場の連携である。長期のインターンシップといった現場を知る機会を持たせ、就業可能性や職業適性に加えて、職場を自分の肌感覚で知ることは、職業選択の決め手となり、かつ、就職後の定着にも繋がる。
3つめは、実際に仕事をして修羅場の経験を積むこと。これがキャリアへの一番の近道だ。キャリアを積むというのは、プランをたてることではなく、実際に仕事をすることからはじまる。経験から得られるものはとても大きい。

グローバル企業の取り組みに照らして考えると、日本のインターンシップは、対象×時期×期間×回数という枠組み、また、採用選考との連動性についても見直す時期にある。何年生のいつから開始というように就職活動を一過性のイベントとせず、低学年から職業に正面から向き合う機会を複数つくることが重要である。就業を通じて教育機関で学ぶべきことが明確になり、自分を知る機会にもなる。学生と企業の双方が、互いの現実をありのままに見せて評価する長期のインターンシップはミスマッチの解消にもつながるだろう。
また、企業側も自由な発想をカタチにする機会と捉えてチャレンジをしてほしい。

村田弘美

(1)全米大学就職協議会(NACE)2013-2014調査
(2) iNetは、ハーバード大学、デューク大学、ジョージタウン大学、MIT、NYU、ノースウェスタン大学、ライス大学、スタンフォード大学、ペンシルバニア大学、南カリフォルニア大学、イェール大学に限定したネットワーク。
(3) University Career Action Network(UCAN)は、ハーバード大学、ボストンカレッジ、ブラウン大学、ウィリアム&メアリー•カレッジ、デューク大学、エモリー大学、オベリ ン大学、ペッパーダイン大学、プリンストン大学、サザン•メソジスト大学、スワースモアカレッジ、チューレーン大学、シカゴ大学、デンバー大学、マイアミ 大学、ノートルダム大学、リッチモンド大学、サンフランシスコ大学、ヴァンダービルト大学、ウェイクフォレスト大学、ワシントン大学セントルイス校、ウィリアムズ大学に限定したネットワーク。
(4)CareerXroads社、リクルートワークス研究所。調査対象は大手グローバル企業41社。2015年4月実施。※詳細は近日公開予定。
(5)「インターンシップの就業内容比較」リクルートワークス研究所。調査対象は大手グローバル企業50社。2014年5月実施。

 


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2015年04月28日