Column

テクノロジーは人手不足を解消するか
戸田淳仁

対策が求められる人手不足
2014年の春頃より、一部の企業における人手不足が話題となり、泥沼化している。これまでも外食産業、小売業、医療・福祉などのサービス業や建設業を中心に、人手不足が見られていたが、近年の景況感改善により、全体的に求人が増え、人手不足が顕著な企業においてさらに人手不足が深刻化した結果だ。

著者は2014年6月に、人手不足の状況を把握するべく、企業の人事担当者向けに調査を実施した。中途採用を実施したが計画通りの人数が採用できなかった企業に対して、採用できなかったために対応した施策について調査したところ、「未経験者も採用対象」「募集時の時給を引き上げる」「採用予算の増額」とした回答割合が高かった。次に回答割合が高いのは「業務の効率性を高める」である。

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調査上、業務の効率性を高めるといっても、無駄な業務を見直すといったレベルから、一部業務の機械化などテクノロジーの活用による自動化させるなど幅広くあると思われるが、おそらく業務の見直しレベルの認識が多いであろう。

テクノロジーが雇用を変える
近年のITを中心としたテクノロジーの発展により、雇用が奪われるという議論がある。特に海外を中心に、ブルーカラーだけでなく、今後はホワイトカラーなどの中間層も雇用がテクノロジーに代わる可能性があると議論されている。人工知能の発達により、人間ではなく機械が状況を判断できるようになり、ヒトが行う仕事が機械に代替されている。このような動きが加速すると、人間の雇用が大きく失われるという議論だ。

特にコンピューターの技術進歩は指数関数的であり、過去10年を振り返っても、スマートフォンが誕生したり人工知能の技術が革新的に進歩したりと、世の中は大きく変わっている。今後ますます進歩が加速すると、人間の雇用が脅かされるとの議論もある。

日本においても、テクノロジーが雇用を変えてきたという歴史がある。たとえば、2000年前後に機械化が導入されたことが一因となり、非正社員が増加したという分析もある。これまでは正社員が担っていた業務のうち機械化できる部分は機械化をし、どうしても人間が作業をしなければならない部分については非正社員を活用することで、対応してきた。確かに企業の人材マネジメントや活用のありかたを変える可能性はあるが、果たしてテクノロジーが雇用を奪うのだろうか。

顧客満足度がテクノロジー導入を阻む現状
このような動きは日本では現状のところあまり大きく動かないとみている。特に人手不足に悩んでいる企業ほどテクノロジーの活用を検討しているが、いくつかの兆しがあるものの、まだ大きく踏み出せていないのが現状だ。なぜなら、自社の提供するサービスの顧客満足度を考えた時に、テクノロジーの活用を限定的にせざるを得ないからだ。著者の知っているコールセンター企業の事例では、コンピューターが対応する自動応答のシステムは顧客満足度が下がるため導入に消極的だ。また、介護ロボットの製造メーカーでヒアリングをした時にも、要素技術としては十分なものが開発されているが、介護を受ける方にとってはロボットよりも介護者を希望するため、ロボットの動作や機能をより人間に近づけることに注力している。

以上の声は個社の事例と言えばそれまでであるが、日本でのテクノロジー活用については、消費者のニーズが変わらない限り大きくは進まないだろうと著者は考える。顧客満足度を下げない形でテクノロジーを導入するためには、よりテクノロジーを人間が提供するサービスらしくするか、消費者に手間をかけないような形にしないといけない。顧客満足度を下げてまでもテクノロジーの導入を進めるか、それともテクノロジーの進化を期待するか、人手不足の課題はこうした議論もはらんでいる。

戸田淳仁

 


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