Column

2025年、働き方づくりの要は何か?
中村天江

わたしたちは現在「2025年の「働く」予測」に取り組んでいる。シミュレーション結果の一部を先んじて紹介すると、今後も過去のトレンドが続けば、人口減少や少子高齢化を受けて、2025年には、就業者は減少し、平均賃金も減少する(詳細は報告書の発行をお待ちいただきたい)。このように働き手が減少していく未来に、企業はどう向き合っていけばいいのだろうか。

「泥沼化する人材不足」でも取り上げたように、昨今、人材不足に悩む企業が増えている。「2025年の「働く」予測」のデータは、この問題が長期にわたって続くことを示唆している。

人材不足の3つの真因
人材不足は一般に「人が採れない」問題だととらえられているが、実際は「人が採れない」だけでなく、「人が辞めてしまう」、今いる「人を活かしきれていない」ことが複合的に起因している。

例えば、建設業は「人が採れない」ことにより人材不足に陥っている。建設業は、バブルが崩壊した1990年代半ばから、公共投資の削減などにより事業規模が縮小し、賃金も低下の一途をたどった。その結果、建設の仕事で食べていける見込みがたたず、建設の仕事は敬遠されるようになった。

一方、「人が辞めてしまう」ために人材不足に陥っている企業は、飲食などのサービス業で散見される。他の仕事に比べ、賃金や労働時間などの労働条件が厳しく、その一方で高度な専門技能を必要としないため、個人にとって不満を抱えながら仕事を続けるインセンティブが弱い。しかも同じような条件の求人は、人材マーケットに常時溢れている。このような環境下で、企業が社員の離職を抑止することは容易ではない(参考:「東京オリンピックがもたらす雇用インパクト」 )。

「人を活かしきれていない」ことにより人材不足になっているケースは、製造業を含め様々な企業でみられる。環境変化に合わせて事業ドメインを見直す際、縮小事業の既存人員の雇用を維持しなければならないものの、既存人員は新規事業に求められる技能や経験は有していないというジレンマが発生する。その時、人材を再配置して活かすのではなく、余剰人員として抱えつつ、新規の人材募集を行うということが、まま起こる。

企業の人材不足の背景には、このように、人が採れない「採用」、人が辞めてしまう「定着」、人を活かしきれない「活用」の3つの問題が潜んでいる。

人材の多様化の裏側にあるもの
人材不足の原因が採用・活用・定着にあるなら、その解決策もまた人材の採用・活用・定着にある。

まず採用に関しては、人口減少により人材プールが小さくなり、しかもその構成比が変わるため、これまでとは異なる層の人材も採用対象とする必要がある。高齢者や主婦、外国人だけでなく、リモートワークで働く人材や複数の仕事を掛け持ちする外部人材など。このような、時間配分や能力、価値観やバックグラウンドなどにおいてこれまでの人材とは異なる特徴をもつ人材を受け入れていくには、人材マネジメントのありようを見直す必要がある。なぜなら、彼ら・彼女らの志向や制約と両立する働き方を、日々の業務プロセスに組み込まなければならないからだ。

さらに、このような多様な人材を活かす鍵が、日々のマネジメントにあることは論をまたないだろう。日本企業の多くはこれまでモノカルチャーのもと人材を「マス管理」してきた。そのためひとりひとりを見て個別的なマネジメントすることができていない。「1on1」型のマネジメントに切り替えていく必要がある。

人材の離職抑止の鍵もまたマネジメントだ。組織の構成員がそこから離脱するのは、その組織や仕事に不満があるか、より魅力的な選択肢が外部に存在するからだ。彼・彼女らの希望を理解し、それを日々の仕事と接続し、不満の目を早期につむことができるのは上長に他ならない。人口減少で個人と組織のパワーバランスが逆転する今後は、これまで以上に、社員への目配りが重要になる。

多様な人材を受け入れ、ひとりひとりが持ち味を発揮できるよう活かし、辞めずに働き続ける環境をつくる。人口減少社会の人材確保策の鍵は、多くの人材を採用することではない。多様な志向や事情を抱える個人を、企業の競争力向上と両立する形で活かす。そんなマネジメントにある。

中村天江

 


[関連コンテンツ]
「2025年の働く」予測プロジェクト 
人材不足の実態に関するレポート
東京オリンピックがもたらす雇用インパクト
就業構造・人材移動の研究レポート

2015年04月01日