HR Technology Trendsキャリアアドバイス&コーチング

キャリアのアドバイスやコーチング

Career Advice and Coaching
代表的なサービス

個人のキャリアをサポートするHRテクノロジーは多種多様なものがある。もともと学生向けには職業に就く準備のサポートとして、基本的な情報の提供や就職の相談、将来の展望、給与相場などのアドバイス、社会人にはキャリアを構築するためのアドバイスや相談、就職や転職に役立つアドバイスの提供がされていた。その後、インターネットの進展によりキャリアサイトやジョブボート内のサービスとして、学生や求職者向けにキャリアアドバイスを行っている。
現在のサービスモデルは、SNSや動画を活用したリアルな職業情報、アドバイスの提供や、企業向けに従業員の職業教育なども行っている。
たとえば、薬剤師、ファッションモデル、金融アドバイザー、データベース設計者などの職業を動画で紹介するサイトや、職業別の給与水準が分かるサイトなどがあり、求職者は事前に十分な情報を得た上で進路を決めることができる。進路決定者向けには、就業前の準備として、トレーニングやコーチングを提供するサイトもある。

人事との関連性

基本的に求職者向けのサービスであり人事向けではないが、「キャリア・プランニングに関する助言が欲しい」というニーズを持っている従業員のモチベーション向上や、社内におけるキャリア構築に利用され、離職者も減少している。また、未経験者向けのトレーニングには、仕事のロールプレイ動画を活用することができる。近年では、リモートワークをはじめとした新しい働き方についての情報提供なども行われている。

サービス例

    1. CandidCareer.com:動画サービス
      金融やマスコミなどさまざまな業界で働く社会人が、約3分間の動画で自分のキャリアや業務内容を紹介し、就職のためのアドバイスをする。求職者は自分に合ったキャリア選びの参考にできる。メインターゲットは大学生で、大学のキャリアセンターが多く利用している。また、政府の職業情報サイトとも連動している。

    2. Imperative:目的意識を持つためのコーチング
      目的を持った働き方をテーマとしたコーチングサービスを提供する。学生には働く目的、社会人には自身の能力の棚卸しと活用、企業向けには従業員に目的を持ってもらうなど、目的志向をベースとしたサービスを展開している。数日間の短期合宿から年単位のプログラムまで多くのコーチングがある。

    3. SalaryFairy:給与額の予測
      求職者向けにリアルな給与情報を提供する。求職者がLinkedInのアカウントでログインし、職歴、経験、スキルなどを入力すると、クラウド上にある類似のキャリア実績から給与額を予測する。

    4. LearnUp:接客業初心者向けトレーニング
      物販やスーパーなど、接客・販売業のエントリーレベル職向けのスキルトレーニングを提供する。接客シーンを想定したロール・プレイングで練習することができる。

ビジネスモデル(課金形態)

下記のように、さまざまなモデルがある。

    1. 企業や団体がサービス事業者から商品を購入し、求職者に無料で提供する
      例)大学のキャリアセンターがキャリア選択に関する動画のセットを購入し、学生に提供する(CandidCareer.com)。

    1. リクルーターが求職者のデータベースの閲覧やアクセスするための料金をサービス事業者に支払う
      例)リクルーターが求職者のリストや給与情報を購入する。また、給与情報の収集はバーターで行う。サービス事業者が求職者に給与の情報を提供する代わりに、求職者はサービス事業者に自分の給与実績の情報を提供する(SalaryFairy)。

  1. リクルーターが採用決定ごとの料金をサービス事業者に支払う
    例)資格を持つ人材の情報をリクルーターに提供し、リクルーターは採用決定ごとにサービス料を支払う。また、資格を持つ人材のプールは、求職者への無料トレーニングの提供により確保する(LearnUp)。

今後の展望

ITテクノロジーを土台とするキャリアアドバイス&コーチング市場は依然として未熟で、サービス事業者はあらゆる方法を実験している段階にある。学生や求職者は常に優良なアドバイスを求めており、未だ可能性を秘めた分野といえる。一方、キャリア選択に自信のない求職者が全てのキャリアの選択肢を探求するには、既存のソリューションを含め膨大な時間を要するため、正確に素早く適正なキャリアに導くサービスが生き残るだろう。
求職者はインターネットの無料のコンテンツに慣れており、有料のアドバイスやコーチングは非常に難しい状況下にある。今後はどのような付加価値をつけるのか、もしくは、求職者の動向や情報を基にしたワンストップのサービスモデルなど、転用策などが考えられていくだろう。

グローバルセンター
村田弘美(センター長)
鴨志田ひかり(客員研究員)

HRテクノロジーマップ

※クリックすると拡大出所:TTL "Talent Acquisition Technology Ecosystem"を基に再分類し筆者作成(2016.10)

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2017年05月19日(一部改訂)