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ユニリーバがHRテクノロジーを活用し内定辞退を大幅削減

ユニリーバは、特定の大学からの採用もレジュメによる書類選考も止めて、テクノロジーによるアセスメントで学生のポテンシャルを測ることを1次審査にした。ユニリーバの雇用主ブランドマネジャー、ケイティ・ロブ=アンブローズ氏は、伝統的な新卒採用手法から、さまざまなテクノロジーを活用した手法へと一新した取り組みを詳細に紹介した。

学生の半数が応募途中で離脱し、選考へ進んでも多数が内定辞退

ロブ=アンブローズ氏によると、ユニリーバは長年、新卒社員の8割を米国北東部にあるトップ大学から採用し、2割をエグゼクティブの親戚といったコネクションから採用していたという。しかし、新卒選考プロセスを見直したところ、次のような問題が浮かび上がった。

● 応募フォームは入力に45分かかるもので、5割以上の学生が途中で離脱していた
● リクルーターが学生に内定をオファーするまでに平均6カ月かかっており、ほとんどのオファーが辞退されていた。つまり、特定の大学に限定して募集しているにもかかわらず、人材を逃していた
● 1,000件未満の求人に対して応募が数千件に上り、リクルーターは候補者をしっかりと評価する余裕がなかった

 

コンファレンスの受付エリア

最近では、候補者を消費者として考えることが主流になっている。選考の結果採用されない候補者も自社の消費者になりうる。また、人材不足を背景に、候補者に悪い印象を抱かせれば他社で働かれてしまう。このようなことから、企業の成功のためには候補者にも消費者のようにスムーズな体験を提供しながら採用活動をしなければならない、ということである。ユニリーバは、アマゾンやグーグルなどと比べて意識改革が遅かったそうだ。

ユニリーバは、著名なブランド(ベン&ジェリーズ、リプトン、クノール®など)を多数持ち、世界人口の3分の1が日々同社の商品を使っている計算になる。ビジネス界を牽引する立場であるにもかかわらず、将来会社で必要になるリーダーを育成していないと気付いた。そこで、人材の経歴や知識でなく、ポテンシャル、好奇心や順応性の有無などに焦点を当てることにした。ポテンシャルを測るには、従来のキャンパスリクルーティング手法は使えないということで、対象校に赴いての採用活動やエグゼクティブからの紹介による採用を廃止した。現在は、学生にレジュメを提出させておらず、大学の成績も確認しないという。

5つのテクノロジーで採用プロセスを6カ月から2週間へ短縮

1. ウェブサイト上の応募フォームには、リンクトインのプロフィール内容がより多く自動入力されるようにし、5分で完了できるようになった

2. Pymetricsを利用し12種類のゲーミフィケーションで認知能力、情緒的特性、社会的特性などを測定。所要時間は20分で、候補者は結果を即座に知れる

3. プロセス1と2を通過した候補者は、HireVueを利用したオンライン面接へと進む。候補者は、リクルーターがあらかじめ用意した質問に対する回答を録画し、オンライン上の指定の場所へアップロードする。HireVueのAIが面接の回答や話し方、表情を分析し、その人の仕事ぶりを予測する

4. プロセス3を通過した候補者は「ディスカバリーセンター」へと進む。生ビデオ面接で、初めてリクルーターと候補者が接触する。候補者同士がオンラインで連絡を取り合い、面接前に情報交換できるサービスも提供している。ディスカバリーセンターでは、ユニリーバでの典型的な一日を見ることもできる

5. 採用が決定すると、候補者は雇用契約をDocuSign(電子署名によるオンライン契約書)で締結する。すると、オンボーディングサイトへの案内が届き、チャットで全世界のユニリーバ社員とつながれるようになる

上記5つのプロセスにかかる期間はわずか2週間。候補者の時間を5万時間短縮し、リクルーターの審査時間を75%削減したという。

新卒採用向けのオンラインプラットフォームを複数活用

サンディエゴのハーバー

リクルーターが特定の大学を訪問する代わりに、オンラインツールで大学生をリクルーティングする方法を取ることにした。セッションでは、その一部が紹介された。

● WayUp(学生向けジョブ・インターンシップマッチングサイト)をとおしたキャンパス大使の設置、学生からの継続的なフィードバック収集、企業ブランドを押し出したページへの求人掲載
● フェイスブック、インスタグラムなど学生やインフルエンサーがよく利用するSNSを活用
● Enactus(社会課題解決を目指す学生向けのNPO)をとおして会社のミッションに合致する学生団体に接触し、イベント開催やスポンサーシップを提案
● Handshake(学生向けジョブボード)に求人を掲載することで、特定大学のみでなく全国から学生を募集

覆された3つの通説

上記の改革をとおして、ユニリーバでは3つの認識が変わったという。

通説1.候補者はアセスメントを嫌う
結果を見ると、実際はそうでないことが分かる。
● 候補者の98%がアセスメントを完了した
● ポジションに適さない候補者を別の求人とマッチングできた
● 各候補者はフィードバックを受け取ることができ、自身の強みや向上点を自覚できた
● Universumが集計する雇用主ブランドランキングにおいて、ユニリーバは過去最高位にランクインし、複数の候補者体験賞を獲得した
● 候補者アンケートでの評価が3.0点から4.5点にアップした

通説2.人間の方がテクノロジーよりも良い採用をできる。アセスメントは質の低い候補者の採用につながり、ダイバーシティも損なわれる
● 人は、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)により自分と似た人を選ぶ傾向にある(性別、人種・民族、出身校など)ため、テクノロジー導入により初期選考における偏見を取り除けた
● リクルーターは、選考の最終段階で会社とポジションに最も適した候補者を見極めることに注力できた
● オファー率、オファー承諾率共に80%を超えた
● 3,000校を超える大学の200を超えるプログラムから採用した

通説3.テクノロジーが選考すると人間味を失う
採用選考での人間味を増すためにテクノロジーを導入するのは、一見直感に反しているが、今の世代にとって「人間味」の意味は変化した。直接人のところへ赴いて会話することだけが「人間味のある行動」ではない。バーチャルでの会話も、プロセスの過程でフィードバックを受けることも、SNSでのつながりもすべて人間味があると言える。

候補者は潜在的消費者であることを忘れない

当コンファレンスでは、BT(ブリティッシュ・テレコム)やロレアルのセッションでも候補者体験を消費者体験と同レベルに持っていく取り組みが紹介され、今やHRの仕事もマーケティングと切り離せなくなっていることを実感した。

BTでは、まずい面接によって重要なポストへの内定を辞退する候補者が続出していたそうで、その潜在的な損失額は1,000万ポンドと計算した。面接担当者向けに短いガイドブックを作成し、候補者の扱い方や面接準備の仕方などを啓蒙した。また、従業員にベスト面接担当者を推薦するよう呼びかけたところ、200件以上の推薦があり、従業員のエンゲージメントを高める結果にもつながったという。

ロレアルも利用するmyaのブース

ロレアルもユニリーバと同じく、上位大学に限定した採用を廃止してポテンシャルの高い学生を採用するため、最新テクノロジーの活用を始めた。候補者に良い体験を提供し、採用にかかる期間を短縮した。myaというチャットボットによる初期審査と基本的な質疑応答。SeedlinkというAIによる企業文化との適合性分析。そして360度見渡せるVR眼鏡を活用した、同社で働くイメージの提供。

日本でも、消費者にはリアルタイムで対応し、一人ひとりにサービスをカスタマイズしていながらも、候補者には画一的で人間味のない、遅い対応をしている企業は多くないだろうか。テクノロジーは単に業務を自動化する効率的なツールではなく、より人間的なサービスを可能にして事業成長へとつなげるものと認識されつつある。リクルーターは、自分たちが機械に置き換えられると脅威に思わず、適したテクノロジーを選択できる審美眼を持って、候補者や従業員に快適な体験を与えることが求められている。

 

グローバルセンター
石川ルチア

 

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2018年11月12日