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職場で役立つテクノロジー

職場で役立つテクノロジー
アシスタントはボット

「ヘイ、Siri」、「OK、グーグル」
Siriとグーグルアシスタントは、AIアシスタントの代表格である。スマートフォンに向かって話しかけると、レストランまでの道順を教えてくれたり、好きな音楽をかけてくれる。機械学習技術により、AIアシスタントを使えば使うほど、ユーザーの好みや特徴をつかんでより適切な回答をくれる。

音声でのやりとりではなく、画面に文章を入力するチャット形式の、チャットボットというAIアシスタントもある。フェイスブックが自社のメッセンジャーアプリをチャットボット開発促進のために開放したこともあり、2016年はチャットボットが飛躍的に増加した年だった。デジタルのツールと言えば、少し前まではアプリが勢力を持っていたが、今はダウンロードや使い方を覚える必要がなく、ログインもせずに話しかけるだけで業務を処理してくれるチャットボット(以下bot)がアプリの成長率を凌駕した(※1)。

チャットボットとは、AI(人工知能)と自然言語処理を利用してコンピューターが人間と対話をする、
「チャット」と「ボット」を掛け合わせたツール。
よく知られているものに、IBMのWatsonや、囲碁の世界王者に勝利したAlphaGoなどがある。

ボットリストはbotのディレクトリのようなサイトで、1万1,000以上のbotが掲載されている(2016年10月現在)。毎週200以上の新しいbotが掲載されている。同サイトのカテゴリはテーマ別に特化しており、アナリティクスからニュース、HR、ショッピングまで27種類ある。
メール、OS、メッセンジャーアプリなど、botによって作動するプラットフォームはさまざまである。社内向けコミュニケーションツールの「Slack」利用者がここ1、2年で急増しているためか(※2)、「Slack」上で利用するbotがひときわ目立つ。

ここでは、職場で重宝する海外のbotを、リクルーターと営業マネジャーならこう使う、というシナリオに絡めて紹介する。

Case 1:リクルーター

応募者の経歴を確認した「Mya」から、候補者のリストを受け取る。

応募者にデータ分析関連の経験を尋ねるMya応募者にデータ分析関連の経験を尋ねるbotの「Mya」

Mya採用アシスタント・ボット
リクルーターの代わりに応募者とチャットをして、経歴を確認したり彼らの質問に答える。携帯電話のSMS、フェイスブック、スカイプ、メールなどを通して行う。
Myaは候補者が応募した職種によって異なる質問をし、優先順位を付けてリクルーターにリストを提出してくれる。候補者が求人条件を満たさない場合でも、Myaは候補者になぜ自分がその仕事に適しているかを説明する機会を与え、選考プロセスが人間味を失わないようにしている。

個別対応が最も難しい選考の初期段階でbotを活用することによって、候補者は早いうちに企業風土や企業が求める人材について質問でき、また自身の選考状況について知ることができるため、透明性やポジティブな候補者体験につながる。
1カ月に季節労働者3万名以上からの応募がある企業をはじめとする約12社が現在Myaを利用しており、700社以上が順番待ちをしている状態である。(http://trymya.io/

 

地方での面接を行うため、「Alterra」に飛行機とホテルの予約を依頼する。
希望は部屋に無料Wi-Fiがあり、社内規定内の1泊200ドル以下のホテル。

Alterraに希望のホテルを伝えるユーザー「Alterra」に希望のホテルを伝えるユーザー

Alterraトラベルエージェント・ボット。これまで、途中で人間が介在するタイプは存在したが、AIアルゴリズム100%のトラベルエージェントは初めてだという。フェイスブックメッセンジャー、TelegramとSlackに対応している。

たとえばフェイスブックメッセンジャーを利用する場合は、Alterraを検索して友人に追加するとチャット形式で話しかけられるようになる。
「ロンドンの3つ星か4つ星ホテルを予約して。8月15日から5泊。1泊200ドル以下、無料Wi-Fiとジムがあるところがいい」
などと語りかけると、
Alterraは「5件見つかりました。ほかに希望するアメニティはありますか?」など、ユーザーの条件を尋ねてくる。
Alterraの質問に返答することで、条件を満たす飛行機とホテルをトラベルサイトや航空会社のサイトから探し出し、予約してくれる。目的地の観光スポットやアクティビティも提案してくれる。(http://alterra.ai/en/

 

面接をする候補者との日時調整を「Amy」に依頼する。

左は自分で日程調整をする図、右はAmyに任せる図 ※クリックすると拡大左は自分で日程調整をする場合、右は「Amy」に任せる場合
※クリックすると拡大

Amy Ingramスケジュールアシスタント・ボット
ユーザーが、会議参加者へのメールにAmyもCCに入れて「来週会議をしましょう。アシスタントのAmyとスケジュール調整してください」のような内容を送る。するとAmyは参加者にメールを送り、ユーザーのカレンダーをもとに日時と場所を提案する。参加者はAmyに自身の空き時間を返信する。全員の都合の良い日時が確定すると、Amyは全員に会議招集通知を送信し、ユーザーのカレンダーに予定を追加してくれる。リスケやキャンセルにも対応可。

ユーザーはAmyを使用する前に、よく利用するミーティングの場所、時間帯、昼休みの時間、各予定との間に空けておきたい時間などをメールで伝えておくと、それを考慮してスケジューリングしてくれる。
始めの数回は、Amyと相手とのやりとりに自身がBCCに入るため、Amyの仕事ぶりを確認できるようになっている。自然言語を理解し自然な文章を打つため、相手はAmyがAIだと気づかないほど精度は高いそうだ。しかし、たとえば「今日話したいのだけど状況が変わったので、今度コーヒーでも飲みながら話しましょう」といった遠回しな表現は、キャンセルを伝える内容だと認識できないという。(https://x.ai/

 

出張先で車を借りる際に会社の規定を確認するため、「Obie」に出張規定の保管場所を聞く。

Obieが第4四半期の料金表をグーグルドライブから探し出した図 ※クリックすると拡大「Obie」が第4四半期の料金表をグーグルドライブから探し出した図
※クリックすると拡大

Obieは、Slackの過去のスレッドや同期してあるグーグルドライブから必要な情報を探し出してくれる、社内ウィキペディアのようなbotである
「オフィスのWi-Fiパスワードは何?」「プリンターへの接続方法は?」「経理課長の名前は?」などを聞くと、チャット形式で社内の情報を瞬時に教えてくれる。
「Flow」を作成しておけば、新入社員のオリエンテーションや社内で新たなソフトウェアを導入したときの使い方の説明など、自己学習やeラーニングツールとしても活用できる。(https://obie.ai/

 

※1 Citigroup Inc.の報告によると、アップルのアプリストア開設後3カ月目から6カ月目の成長率が100%だったのに対し、フェイスブックメッセンジャーのボットプラットフォームが稼働して3カ月目から6カ月目の成長率は170%だった。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-09-15/the-bot-economy-is-growing-even-faster-than-the-app-economy-didより
※2 2016年10月20日現在、1日のアクティブユーザー数は400万人、有料アカウント数は125万個 http://expandedramblings.com/index.php/slack-statistics/より

グローバルセンター
石川ルチア

【関連コンテンツ】
・職場で役立つテクノロジー:アシスタントはボット 後編

2017年01月24日