Column

オードレイ・デコンクロワ
人事部 部長

EYフランスEYは会計、税務、IT、M&A、法律、人事労務、アドバイザリーサービスなどを手がける総合コンサルティング企業である。世界150カ国、700都市で展開、世界で約25万人の優秀なコンサルタントを擁している。

圧倒的なグローバルプレゼンスと柔軟な価値観を持つ同社は、ベンチャー的気質のファームとも言われている。EYの理念は「Building a better working world(よりよい社会の構築を目指して)」であり、各事業を通じてその実現を図っている。

EYフランスには7000人の従業員がおり、その75%がY世代で構成されているという。そのため、若い世代の要望を経営がうまく汲み取ることが企業発展の重要なポイントになる。優秀な若手は転職志向も高いため、EYフランスは、人材の定着のために、新しい働き方の制度導入に取り組んでいる。現在は、そのパイオニア企業として一目置かれており、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などを通じた外部への広報も積極的に行われている。人事部長であるオードレイ・デコンクロワ氏に同社のフレキシブル・ワークの取り組みについて伺った。


Y世代が望む働き方とは

激化する競争環境を勝ち抜くために最も重要な資源が優秀な人材です。弊社では社員の75%を占めるY世代の優秀な人材の引き寄せは、重要な課題と認識しています。Y世代の仕事に対する姿勢を分析する際、最も重要なポイントは仕事とプライベート両面の充実です。EYフランスでは、次の3点を柱とする改革を行いました。

1つ目はマネジメントの面です。EYフランスも以前は他社と同様に、とてもクラシカルな組織構造でしたが、Y世代がピラミッド方式のヒエラルキーを嫌い、よりフラットな上下関係を求めていたことから、大幅な組織改革を行いました。

2つ目はY世代が望むキャリアプランを実現するために、早く成長でき、早く責任のあるポジションにつくことができるような人事施策を取り入れたことです。早期選抜を可能にする能力開発(トレーニングやコーチング)のサポートも充実させています。

3つ目はワーク・ライフ・バランスの実現です。仕事とプライベート両面の充実を可能にするために、より柔軟性に富んだ働き方が導入されたのは、必然の結果だったと言えます。

EYフランスでは2015年11月から、文字通り完全にフレキシブルなフレキシブル・ワーク制度を導入しました。それは、上司や同僚などと対面する会議や仕事がなければオフィスで仕事をする必要は一切ないという非常に大胆な制度です。社員は公私のニーズに合わせて、自由な時間に自由な場所で仕事をすることができます。上司や同僚に事前に許可を得る必要がなく、会社から制約を課されることは一切ありません。業務上、上司や同僚と頻繁に連絡をとる必要がある場合でもこれまで通りコミュニケーションが確立されているならば、働き方は自由でよいというものです。

コンサルタントは日頃からクライアント先で多くの時間を費やしますので、こうした働き方への転換が容易にできたのかもしれません。ワーク・ライフ・バランスの問題は多様性の尊重にもつながりますが、70カ国もの異なる国籍の社員を抱えるEYフランスにはダイバーシティの観点からも柔軟な考えを持ち、多様な働き方を望む人々の理解が得られやすい職場環境が不可欠であると思います。

フレキシブル・ワーク制度は、従業員の70%が利用しており、今後も利用が増える傾向にあります。オフィスにいない社員の評価基準としては「成果」が全てとなりますが、これは本来の働き方として正しい姿と考えています。社員は自身の成果に責任を持つからこそ、働き方の自由を選択できるということです。サポートが必要な、入社間もない若手社員の評価も成果制です。若手社員には入社時に先輩社員をアドバイザーとして配していますが、3カ月ごとの話し合いの場で若手社員が担当した仕事の成果を確認したり、次の3カ月の目標を設定するなどします。つまり、やるべきことをきちんと行っていれば、働く場所やその方法は自由でよいということです。


企業戦略の策定にY世代を取り込む

Y世代は、企業の戦略策定にも直接関与したいという希望があります。タレントマネジメントや、職場におけるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上などのテーマにおいては、自分たちの意見が直接反映されることを要求しています。

EYフランスでは、CEOを委員長とし、入社2〜5年以内で35歳以下のY世代メンバーで構成された社内の組織改革委員会「Shadow Comex」を設置しています。委員会は月に一度開かれ、気軽に話せる雰囲気で行われます。ここでは、Y世代からCEOに数々の提案がなされ、その提案内容について、後日運営委員会で話し合いがもたれます。採用されたアイディアはY世代の発起人が中心となってプロジェクトとして進めていくことになりますので、完全なボトムアップ方式です。幸運なことに我々のCEOはイノベーティブなマネジメントの導入に積極的で、こうしたイニシアチブも自ら率先して行動しています。

ほかにも「リバース・メンタリング」と呼ばれるシステムが好評ですが、これはY世代がメンターになって、SNSや新テクノロジーに関する知識を、従来メンターの役割を担ってきたパートナー世代に伝授するというものです。思想が異なる世代同士が上下関係にとらわれることなく直接意見を交換することでパラダイムの転換が起こり、大きなシナジー効果が生まれるのです。


世代が違う社員の共存を可能にする

Y世代の意見を取り込んだ新しい働き方の導入をはじめとする組織改革に反発があるとすれば、それはY世代の直接的な管理を任されたマネジャー層で発生します。従来の方法で部下を管理して大きな案件を成功に導いてきたマネジャーらにとって、これまでのやり方から脱却し、経験に基づいた価値観や行動を即座に変えるのは簡単なことではありません。

だからこそ、躊躇を示す彼らに寄り添って計画を進めていくことが重要で、会社側も必要に応じた援助をしなければなりません。Y世代が新しい働き方を望んでいるからといって、彼らはシニアの存在を否定しているわけではありません。Y世代はシニアをリスペクトし、多くのアドバイスを求めています。これは忘れてはならない点です。

他方、新しい働き方を導入すれば、それに適したワークスペースも必要になります。昨今EYフランスのオフィスは、シェアオフィスやコワークスペース、立ったまま仕事ができるスペースなど多種多様なスペースを導入してニーズに対応しています。社外のコワークスペースも多く利用されていますが、そういったスペースとの法人契約も今後検討されていくでしょう。


ウェルネスの充実

フレキシブル・ワークが導入されてから、社員たちは仕事の合間にジョギングに出たり、スポーツクラブに通ったりといった時間を確保しやすくなり、健康管理にも貢献しているという結果が出ています。
また、EYフランスが入居する高層ビル(タワーファースト)の階下にはコワークスペースの「Kwerk」が入居しています。Kwerkは仕事ができる空間だけでなく、食事やヨガなどの各種スポーツができるスペース、さらにはメディテーションルームまで備えた最上級の総合施設です。EYフランスは「Kwerk」と法人契約を結び、社員の健康面にも配慮しています。毎年「世界で最も就職したい企業」の上位にランクインしていますが、優秀な人材にEYフランスに入りたいと思ってもらえるような要素をこれからも模索していきたいと思っています。

2018年06月28日