定点観測 日本の働き方家事育児(2019年3月版)

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5年に1回の調査である総務省「社会生活基本調査」から家事育児時間を調べると、6歳未満の子どもをもつ夫(夫婦と子どものみの世帯に限る)の1日当たりの家事育児時間は、2016年で1時間23分と増加傾向にある(図1)。しかし、その伸びは緩やかなものにとどまっており、政府目標※1の達成は難しい状況にある。

毎年の調査であるリクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」では、公的統計とは集計が異なるため、数値自体の比較はできないが※2、家事育児時間の近年の変化を追うことができる。6歳未満の子どもをもつ夫(夫婦と子どものみの世帯に限る)について、JPSEDをみると、2016年に2時間21分であった家事育児時間は、2017年に2時間45分となっており、足元ではその伸びを強めている。しかしながら、女性(2016年に7時間03分、2017年に7時間52分)と比べると、その水準は依然として低く、さらなる伸びに期待したい。

JPSEDを用いて、6歳未満の子どもをもつ夫(正規雇用者に限る)の仕事の柔軟性と週当たり労働時間別の家事育児時間をみてみる(図2)。すると、柔軟性が高い仕事についている、あるいは週当たり労働時間が短い場合では、家事育児時間が長い。特に、仕事の柔軟性は家事育児時間に大きく影響している。残業時間の短縮よりも、自宅でテレワークをする方が、通勤の負担などがなくなり、子どもの送迎や世話、家事を行いやすくなると考えられる。

女性の就業推進や少子化対策には、男性の家事育児従事の高まりが欠かせない。そのためには、男性の長時間労働の是正に加え、テレワーク制度などによる柔軟な働き方の推進など、働き方改革による職場環境の整備がより一層求められる。

※1 政府目標:2020年に夫の家事育児時間を2時間30分以上に延ばす。
※2 JPSEDの家事育児時間はほかの行動をしながらを含む広義の家事育児時間であり、社会生活基本調査よりその時間は長くなる傾向がある。

図1 6歳未満の子どもをもつ夫の家事育児時間(夫婦と子どものみの世帯に限る)
出典:総務省「社会生活基本調査」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2017、2018」
注:JPSEDは「同居家族が配偶者と子どものみ」「末子の年齢が6歳未満である」回答者を集計対象としている。家事育児時間は、(働いている日の家事育児時間×5日+休日の家事育児時間×2日)÷7日で算出。x17とx18を用いたウエイト集計を行っている。
注:総務省「社会生活基本調査」では、指定された2日間のそれぞれ24時間について20種類の行動のどれを実施していたのか、15分単位で1つ選ぶ形式で聴取している。一方、.JPSEDでは、直接働いている日と休日の平均的な家事育児時間を実数(10分単位)で聴取している。そのため、JPSEDではほかの行動をしながらの家事育児時間も含めた広義の家事育児の時間を捉えている可能性があり、社会生活基本調査よりも実数値が大きくなると考えられる。

図2 6歳未満の子どもをもつ夫の仕事の柔軟性と週当たり労働時間別の家事育児時間(2017年、正規雇用者に限る)
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2018」
注:正規雇用者に限定している。x18を用いたウエイト集計を行っている。

文責:孫亜文(アナリスト)
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