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フリーランスに学ぶ、会社員の「これから生きる戦略」

 

フリーランス※1 という働き方への関心が高まっている。背景には、より自律的に働くことを希望する人や、社外のプロ人材の力を借りて、イノベーティブかつ機動的に事業を運営しようとする企業が増えてきたことがある。

フリーランスとして活動する最大のメリットは、働き方を選択しやすいこと、専門的な知識を活かして働けることだ。労働政策研究・研修機構「独立自営業者の就業実態と意識に関する調査」(2018年)でも、独立自営業者が今の働き方を選んだ最大の理由は「自分のペースで働く時間を決めることができると思ったから」(複数回答で約36%)だ。さらにフリーランスは働いている人の満足度も高いことが知られている※2 。いつかは副業で、あるいは独立して、プロフェッショナルなフリーランスとして活動したいと考える会社員は少なくないのではないか。

 

今は異なる、会社員とフリーランスの能力

だが、会社員がフリーランスに転身するのは、それほど簡単ではなさそうである。組織によって仕事がアサインされ、決まった賃金が支払われる会社員と、自らを差別化して仕事を獲得しなければ収入を得られないフリーランスでは、働き続けるために活用する力に違いがあるためだ。

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2018」では、会社員とフリーランスそれぞれに現在の働き方を続ける、あるいは成功させるうえで重要な能力・資質を聞いている。会社員とフリーランスで重視する人の割合の差が大きいものを上から順に挙げると、「自分を売る力(セルフブランディング)」(フリーランス-会社員の差:51.0%pt)、「人脈」(同:37.1%pt)、「顧客・市場ニーズの把握力」(同:34.5%pt)、「自分の幅を広げる努力」(同:23.8%pt)、「成果に結びつく専門性・能力・経験」(同:20.7%pt)となる。専門性・能力だけでなく、自分の幅を広げ、ネットワークを形成する力。そのうえで顧客・市場ニーズに基づいて自分を売り出していく力。会社員からフリーランスに転身する場合には、これらの幅広い力を発揮する必要がある。

図表1 現在の働き方を続ける、あるいは成功させるうえで重要な能力・資質

※この調査では、会社員に対して「社内調整力/社内の人脈」および「社外の人脈」を個別に、フリーランスに対しては「社外の人脈」を尋ねている(それ以外の設問は会社員、フリーランス共通)。ここでは会社員の人脈の回答割合は、社内調整力/社内の人脈と社外の人脈の回答割合を単純平均した数値とした。

出所:プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2018」

 

幅広い力が押し上げるフリーランスの年収

これらの力は、本当に年収などの結果に結びついているのだろうか。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2018」によれば、20~59歳の本業をフリーランス※3 として働く人(以下、本業フリーランス)の主な仕事からの年収は平均267万円であるが、年収400万円以上も約4人に1人を占める。

フリーランスの年収とフリーランスが重視する4つの力との関係を分析してみる。ここでは①専門性・能力は「ホワイトカラー系専門職」「技術系専門職」として働いていること、②自分の幅を広げる力は「自己啓発の有無」、③ネットワークを形成する力は「職場・仕事を通じた相談相手の有無」を代理の変数とした。最後に、④自分を売り出す力や顧客・市場ニーズの把握力に相当する変数は見当たらないため、結びつきが強いと思われる「経験年数」を代理変数にした。

結果は図表2の通りである。①~④の力はいずれも年収と有意なプラスの関係をもっていた。これら4つの力は単なる実感値であるだけでなく、実際にフリーランスが今の仕事を続けることと関わりの深い力である可能性が高い。

図表2 本業フリーランスの年収の回帰分析

※ここでの本業フリーランスは、20~59歳の自営業(雇人なし)もしくは内職をする就業者で非農林漁業の人としている。ホワイトカラー系専門職種は管理職、総務、人事、労務、広報、経営企画等を始めとする職種。技術系専門職は研究開発、各種設計、情報系職種、医療系専門職等の職種。「経験年数」は現職に就いてからの年数を示す。

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2018」

 

これからは会社員にもフリーランスの能力が必要となる

今後は、会社員もフリーランスの4つの力(①専門性・能力、②自分の幅を広げる力、③ネットワークを形成する力、④自分を売り出す力)から学ぶ必要がある。70、75歳まで働くことが珍しくなくなり、テクノロジーが人の担う仕事を塗り替える時代には、「生涯ずっと正社員」というコースを辿る人は減っていくだろう。企業が社外の人材を業務委託やプロジェクト型雇用(数年単位で組織に雇用され、プロジェクトの遂行にコミットする雇用者)などの形で活用するケースも増えそうだ。体調の変化や家族の介護などから、より柔軟な働き方を必要とする人も増えると予想される。

そのような将来を視野に入れるなら、会社員も、市場ニーズのある専門性や能力や自らを売り出す方法について思いを巡らせ、互恵的なネットワークをつくるための活動を始めたほうがいい。競争力を発揮できる専門性や能力を持っているか、持とうとしているのか、会社の外で助け合ったり、学び合えるネットワークはあるのか、会社の指示ではなくて、自分の未来を考えて何か学びにつながる行動しているかを自分に尋ねてみることが必要だろう。

これからのキャリア支援も、すべての人について、「いつか個として活動する可能性」を視野に入れて行うことが必要になるのではないか。その際、フリーランスとして働く人が発揮している幅広い能力は大いに参考になるだろう。

 


※1 フリーランスの定義は必ずしも確立されていない。中小企業庁「小規模企業白書」では、フリーランスは「ソフトウェアの設計・開発(SE)、ウェブデザイン、ライティング、翻訳・通訳など、自らの持つ技術や技能、スキルを拠り所に、組織に属さず個人で活動する」事業形態を指すとされている。一方、「フリーランス白書2018」では「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」とされ、大きく①企業や組織に属さず雇用関係をもたない独立系フリーランスと、②主となる企業や組織に雇用され、すきま時間を使って個人の名前で仕事をする副業系フリーランスに大別されるとしている。
※2 たとえば、労働政策研究・研修機構「独立自営業者の就業実態と意識に関する調査」(2018年)で働き方に対する評価を見ても、独立自営業者の約7割(68%)が「満足している」または「ある程度満足している」と回答している。
※3 ここでのフリーランスは、20~59歳の自営業(雇人なし)もしくは内職をする就業者で非農林漁業の人としている。

 

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労働政策センター

中村天江
大嶋寧子 (文責)
古屋星斗

 

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2018年10月09日