全国就業実態パネル調査「日本の働き方を考える」第1子出産離職率6割に変化の兆し 萩原牧子

第1子の出産を機に6割もの女性が退職する。そして、この実態は20数年翻ってみてもほとんど変化が見られない――。 出産というライフイベントを通じて女性が就業を継続することの難しさと、その状況が大きく変わらないことを物語るこの数字は、5年に1回の頻度で実施される、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査 夫婦調査」の集計による。第1子妊娠判明時に就業していた女性のうち、第1子が1歳になった時点では無職と回答した割合を「第1子出産前後の離職率」とする。データを詳しくみると[i]、第1子出生年が1985~89年で61.0%、最新の2005~09年で62.1%と、6割が離職している状態に長年変化が見られないことが確認できる。

とはいえ、人手不足社会の到来やダイバーシティの浸透により、ここ最近は政府も企業も、女性が働き続けられる仕組みづくりに本腰を入れて取り組んでいるように感じられる。だとしたら、この数字は変化しているに違いない。

全国就業実態パネル調査(2016)で、2010年以降の変化を検証してみたい[ii]。変化を詳細に捉えるために、出生年を3年刻みで12年分を集計した(表)。その結果、2006~08年は57.0%、2009~11年は51.9%、2012~14年は44.8%と、離職率が減少傾向にあることがわかる。

表 第1子出産を機に離職した率(第1子出生年3年刻み)

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女性の第1子出産離職率に変化の兆し、あり――。長年、変化がなかった女性の働き方の変化が数値に表れ始めた。この間の政策を振り返ると、育児・介護休業法の改正(2005年施行)で育児休業制度の対象が広がり、男女雇用機会均等法の改正(2007年)で妊娠・出産を理由とした解雇が禁止され、また、育児・介護休業の改定(2010年)で3歳までの子を養育するものの短時間制度などが義務化されている。女性が活躍できる社会の実現に向けて、まずは、出産を機に辞めずに就業を継続していけるという「数」の面での前進が確認できたということだ。一方で、どのように働いているのかという「質」も重要であることは間違いない。引き続き全国就業実態パネル調査を用いて検証していくことにしたい。

[i] 国立社会保障・人口問題研究所(2011)「第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 夫婦調査の結果概要」
[ii]全国就業実態パネル調査(2016)では、末子についての妊娠時、1歳児の就業状態をきいているため、出生動向調査での第1子に関する集計に合わせるために、集計対象者を子どもの数が1人であるひとに限定した。

萩原牧子(リクルートワークス研究所 主任研究員/主任アナリスト)

本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。