Column

William He

日系企業が中国で人材獲得を成功させるためのコツを、日本人の視点と、中国人の視点の2回に分けて紹介する。2回目の今回は、Bó Lè Associates北京事務所で常務取締役と中国北部担当責任者を務めるWilliam He氏が、「昇進を阻むガラスの天井がある」「重要なポストにローカル人材を配置していない」といった日系企業に対する意見と、中国人労働者の転職や給与などに対する価値観を振り返り、管理職レベルの優れた人材を獲得するために日系企業がクリアすべき課題を提案する。

◆    新卒採用や内部昇進のほかに、人材獲得の経路を開拓する。

◆    給与や待遇のシステムの見直しが必要である。

 


中国で人材獲得競争に勝つための課題

日系企業は、大学のキャンパスで行う新卒者の採用活動は得意とするが、ミドルからシニアレベルの優れた人材の獲得に苦戦する企業が多い。その理由を振り返り、どのような人事制度やマネジメントが良いか提案したい。

「転職」に対する価値観の違い
中国に進出する日系企業は、大学のキャンパスで新卒者のリクルーティングを行う傾向があり、学生が従業員として働く前から人材管理を始めている。採用試験には候補者の知識だけでなく、資質を査定するテストも含まれる。企業は、厳しい選考を経た新入社員を、研修や人材教育を通して育成し、内部昇進ができるような、会社への忠誠心があって生産性の高い人材に育て上げる。日系企業は、「長期」雇用どころか「終身」雇用という概念が根強く、転職を繰り返すジョブ・ホッパーの雇用には消極的なため、将来有望な人材、特に経験を積んだミドル〜シニアレベルの人材を取り逃がすことになる。 経済成長の渦中にある中国では、ジョブ・ホッピングは珍しいことではない。日系企業は大学キャンパスでのリクルーティングによる新卒採用や内部昇進のほかにも、人材獲得の経路を開拓すべきである。たとえばエグゼクティブ・サーチや人材紹介会社、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、ジョブボード、従業員による紹介(リファラル)などは既に効果が認められている採用経路である。

有能な中国人に昇進のチャンスを
日系企業の昇進システムでは、戦略的に「経験」が重視されており、昇進の機会も非常に少ない。さらに、自社の技術を日本の機密として中国人の従業員とは共有しないことが多く、中国人の従業員が部長レベルに昇進することも稀なため、内部昇進に抱く期待が損なわれている。また、ほとんどのシニアレベルのポジションは本社から派遣された日本人駐在員が占めており、シニアレベルに近づいた現地の従業員は、自分の「(キャリアを阻む)ガラスの天井」を感じ取る。 能力が高い中国人の従業員は、昇進のチャンスが与えられることで、より自発的に行動し、会社への情熱を見せることだろう。

業績を反映した給与システムの構築が望まれる
日系企業は全般に、従来の日本的経営を踏襲して、従業員の能力や業績よりも勤続年数に応じた昇給や昇進を行っている。日系企業の「長期雇用」制度は採用システムを強化し、チームを安定させ、従業員同士の関係を改善するのに大変役立っている。 しかし、デメリットもある。中国の優秀な人材は、給与は業務内容、業績、任された責務に見合ったものであるべきと考えている。日本式のシステムでは、彼らは能力が評価されていないと感じ、雇用も不安定に感じてしまう。これでは中国人の従業員はやる気をなくし、仕事の効率は大幅に低下するだろう。 業績が確実に報酬に反映されることを明示できれば、中国人の労働者はやる気を出す。当地では、業務内容の定義と責務を明確にし、責務と連動した明白な給与システムを構築する必要がある。 弊社が過去3年間に人材紹介事業を通じて収集した独自のデータによると、日系企業で働く中国人の多くは、欧米企業の従業員よりも一般的に給与が20%低いという調査結果が出ている。また日系企業には、業績のいい優秀な従業員「トップ・パフォーマー」のやる気を喚起して奨励するための、評価指標や評価基準が欠けている。競争力を高めるためには、給与の額を市場の状況に合わせて変動させるべきである。

2015年03月23日