Column

Eiko_Kawamura

労働法を順守して雇用関係を保つ
フランスは労働法上の規制が厳しいのではないか、との懸念を示す日系企業も多い。他方、規制が体系化されているだけに、明文化された規則をマニュアル通りにきちんと尊重していけば問題が起こりにくいというポジティブな面はあまり認識されていない。正規雇用であれば、文書による雇用契約も義務ではない。ただし、問題が起きた場合に備える意味からも、雇用契約を通じて条件を明文化しておくことが望ましい。係争や解雇の必要性が発生した場合にも、専門家のアドバイスを受けてルールを一つひとつクリアしていけば雇用主は必ずしも損をしない。正当な理由による解雇は、法的に認められた雇用主の権利である。
フランス人は決して怠け者ではなく、特に管理職クラスは納得した仕事であれば時間を惜しまずに働く。ただし、残業が続いた次の週には時短に気を配るなど「平均」で週35時間という法定労働時間を順守し、残業代は月単位でこまめに支払い、年間で最低5週間はある有給休暇も「聖域」として認める配慮が必要である。サービス残業という考え方を押し付けてはいけない。サービス残業を受け入れているように見えても、いったん対立が起こると数年間の残業代をまとめて請求されることにもなりかねない。

現地管理職を雇用するには、両国の文化的相違を意識したうえで、社内の方針をフランス風にするか日本式を維持するかを決め、後者の場合には十分な説明努力を行うことを勧めたい。フランス人は合理的であり、説明に納得すれば対応する能力もある。労働法規も、順守している限り雇用主にとってとくに不利ではない。
フランス人が「社風に染まる」ことは期待できないため、フランス人の中でも性格的に日系企業の風土や流儀に適応度が高いと思われる人物を、人材の専門家の目利きを得て選ぶほうが間違いない。
フランス人は日系企業について概ねよいイメージを持っている。しかし、外から見たときには日本人の長所と映る真面目、堅実、礼儀正しいといった風土も、いったん組織内に入ると、フランス人にとっては理不尽な拘束と感じてしまう場合もあるため、こうした点についても事前の説明が有益である。

 

河村 映子(かわむら えいこ) 氏
Eiko KawamuraJouet-Pastre InternationalのJapanese Operations Director 。
1970年名古屋市生まれ。在仏15年。
日本の大学でフランス語を専攻したことをきっかけに渡仏。2004年、Jouet-Pastre International入社。Japanese Operationsの責任者として、欧州、とくにフランスの日系企業向けに顧客開拓と労務面でのサポートを含めた人材紹介を行う。「企業は人が作る。企業は人を成長させる。」を信念としている。

 

「取材・執筆協力」:KSM NEWS & RESEARCH

 

2015年06月08日