Column

Wan Pang

4) 魅力に欠ける給与と定着システム
能力に応じた給与制度の導入や、現物株や新株予約権を付与するストック・オプション報酬の導入に関して、日系企業はイギリスの競合他社に立ち後れている。日系企業では個人の活躍よりもチームとしての成功が尊ばれている。

⇒終身雇用や年功序列といった概念は、イギリスでは浸透していない。人材コンサルティング会社やヘッドハンターに定期的に相談して、報酬の相場や、基本給と能力給のバランスを理解しておくことが大切である。ストック・オプション報酬を提供できないなら、長く働いてもらうために、海外での業務、プロジェクト、充実した研修など、その他の手段を検討しよう。
従業員が退職する際には、退職理由を詳しく聞いて問題の真意を把握し、残念な離職が繰り返されないようにすべきだ。

5) ビジョン/ミッションが、イギリスの従業員と共有されていない
企業にとってイギリスが戦略的にどれほど重要か、現地のスタッフをどれほど大切に考えているか、ということについて、時間をかけて従業員に伝えているだろうか。

⇒従業員にビジョンとミッションを説明する時間を割き、会社が掲げる「理念を実践している」ことを伝える。社会的責任のための活動、募金活動、チームのイベントへの参加は、理念の実践を見せるという意味で重要である。

6) 業務内容が認知されていない
比較的規模の小さい日系企業では、日本語ページを英訳しただけのウェブサイトを掲載していたり、ソーシャルメディアも活用していなかったりと、人材を惹きつけるためのツールを活用しきれていない。

⇒自社のウェブサイト、リンクトインやフェイスブックなどのソーシャルメディアを通して、ブランド力を上げるためのマーケティングをしよう。
ソーシャルネットワークを通して企業の認知度を高めるために、効果的な従業員紹介(リファラル)システムと併行して、採用キャンペーンを実施すべきである。

1997年に提唱された「人材獲得競争(The war for talent)」という表現は、今日の状況、特に開発途上の市場で手がかりを模索している外資系企業にも、当てはめることができる。いつの時代も「人材」は、会社にとって何よりも大切な資産である。イギリスで最も成功している日系企業は、ビジネスをローカライズする方法を編み出し、グローバルな慣習を受け入れ、魅力的な就労環境や報酬、従業員を定着させるシステムを構築している。

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Wan Pang (ワン・パン)氏

Reccelerate(リクセレレート)
業務執行取締役
イギリスおよびアジア全域で10年のエグゼクティブサーチ経験を持つ。不動産からテクノロジーや消費財まで幅広い分野を手がけている。2010年初めにリクルート・ホールディングスが香港でビジネス展開を始めた時に設立したRGFのオリジナルメンバー3人のひとり。2011年、Bo Le Association香港オフィスに赴任し、2013年12月までシニア・コンサルタントを務めた。その後、リクセレレート香港に移籍し、リーダーとしてリクルーティング会社や社内人材の開発を求める企業のために、アジア全域における人材獲得活動の責務を担っている。

2015年05月18日