Column

アフリカ

採用にあたって、人材のソーシングの具体的な方法は、他の地域と大きく変わらない。大学就職課からの紹介、人材紹介会社経由や新聞広告、競合からの引き抜き、ネットワークからの紹介などで適任者を見つける。日本と比べると、人材の資質や能力にはばらつきが大きい。選考にあたっては、プレゼンテーション能力が高いアフリカ人材によく見られる書類上の経歴の輝かしさやアピール力に騙されずに、自社が期待する働き方や職務内容に適した人材であるかどうかを見抜くことが求められる。面接では、具体的な経験やものの考え方についてしっかり尋ねてほしい。また、新卒の場合は本採用前にインターンシップを行うことも有効だ。

法律・政策面での注意点
採用段階における目利きが重要なのは、一般的に労働に関する法律や判例に労働者保護の色が強い国が多いことにも由来する。従業員の解雇は簡単ではなく、争議は長引き、雇用側に有利に運ばないことが多い。雇用条件や解雇を巡るトラブルによって、元従業員から危害を加えられたり、政府当局や税務署などへの告発が行われることもある。信頼関係が損なわれた結果パワーハラスメントなどで訴えられることもある。現地のルールを順守し、あらかじめ雇用契約を結び、日本での一般的な労使関係よりも緊張感をもってつきあうことが必要となる。

南アフリカで現地法人を持つ場合は、「BEE政策」への対応が必須である。BEE(Black Economic Empowerment)政策とは、アパルトヘイトのもとで不利な状況に置かれた黒人の人々のビジネスへの参加を促すため、一連のアファーマティブ・アクションを定めた各種法令から成り立っており、全ての企業が取り組むよう奨励されている。経営への参加、雇用均等(管理職への登用)、従業員の技能開発費用への支出といった指標と基準が決められており、その達成度合いによって企業はランク付けされる。ランクの値は政府調達の際に考慮要素となる。BEEランクの高い企業を調達先として優先的に選定することも指標のひとつであるため、ランクが低ければ、政府のみならず民間企業の調達においても不利となる。

日本企業の理念を踏襲する現地管理職の育成
味の素は1991年から24年間にわたり、ナイジェリアで工場運営と販売を行っている。約400人の工場労働者と約500人の営業スタッフを抱え、ナイジェリア人管理職も10人以上いる。2013年以降ケニア、カメルーン、南アフリカといった他のアフリカ諸国へ事業を拡大しているが、これらの国の拠点立ち上げを行ったのも、ナイジェリア人管理職たちだった。現地人材がマネジャーとして育てば、その知見やネットワークを活かした事業運営や組織運営ができるようになるだけでなく、企業理念や企業ウェイを他のアフリカ諸国や他の事業領域に拡大する際のスピードも上がる。味の素の営業スタッフは、アフリカ各国で路地や市場の小規模店舗を周り、足で稼ぐ「日本流の」地道なセールスを行っている。

日本は、アフリカ人にとって、「よい印象があるけど、詳しくは知らない国」である。働きたいと憧れるのは、ヨーロッパやアメリカの企業であり、日本企業であるからといって、それが大きなアドバンテージにはならないと思っていた方がいい。一般的に、日系企業は日本人駐在員とローカルスタッフの間で、共有する情報や育成方法を使い分けることが多く、フェアでないと不満を抱かれやすい。アフリカの現地人材、特に幹部候補になるような人材の、労使関係への認識や働くことへのモチベーションの持ち方は、先進国の人々のそれとほぼ変わらないと捉えてよい。企業の価値観を明示的に伝え、段階に応じた経験の機会と意思決定の権限を与え、将来のキャリアプランを示し、国籍の区別なく育てていく姿勢が求められる。

梅本優香里氏梅本 優香里(うめもと ゆかり)氏
アフリカビジネスパートナーズ パートナー。
日本で唯一のアフリカビジネスに特化したコンサルティング会社であるアフリカビジネスパートナーズ(www.abp.co.jp)を創業。日本企業のアフリカ事業開発に関わるビジネスマッチング、現地パートナー選定、交渉支援、市場調査、ビジネスモデル策定、事業立ち上げ支援及び事業開始後の経営支援を行う。ケニアに現地法人を持ち現地スタッフを雇用。アフリカで事業を行っている日本企業をまとめた「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト」を毎年発行。

2015年04月13日