全国就業実態パネル調査「日本の働き方を考える」2018柔軟な働き方は、仕事の満足度を高めるのか 野村旭

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近年、各人の多様な生活に合わせた柔軟な働き方の実現に向けた「働き方改革」の議論が盛んであるが、仕事の柔軟性は仕事の満足度にどのように影響するのだろうか。「全国就業実態パネル調査」を用いて、雇用者の仕事の柔軟性が、仕事満足度に与える影響について分析を行ってみよう。

仕事の柔軟性は年々高まっている

「全国就業実態パネル調査」には、調査年の前年12月時点における、勤務日・勤務時間・勤務場所について自由に選ぶことができるかどうかを問う設問が存在する。勤務日・勤務時間・勤務場所の自由度それぞれに関して、「あてはまる」から「どちらかというとあてはまる」「どちらともいえない」「どちらかというとあてはまらない」「あてはまらない」の順に5、4、3、2、1と点数化し3つの質的変数を作成した。まず、ここ3年間のその数値の推移をみると(図1)、仕事の柔軟性は年々高まっていることがわかり、近年の働き方改革の流れをくむような動きがみられる。

図1 仕事柔軟性の推移
注:勤務日・勤務時間・勤務場所の自由度それぞれに関して、「あてはまる」から「どちらかというとあてはまる」「どちらともいえない」「どちらかというとあてはまらない」「あてはまらない」の順に5、4、3、2、1とし3つの質的変数を作成。雇用者における各年の平均を算出した。

仕事の柔軟性を高めることは仕事満足度を高める

続いて、仕事の柔軟性が仕事の満足度に与える影響を推計する。分析対象は正規雇用の男女で、検証方法としては、能力の違いなど個人の特性による影響をなるべく取り除くために、固定効果分析という方法を用いた。推定結果(図2)の数値は、限界効果、つまり仕事の自由度が1上昇した時に仕事満足度がどの程度高まるのかを示す値である。また、数値の右側の*は、統計的に影響があるということを意味している。たとえば、正規雇用男性において、勤務日・勤務場所の自由度を高めることは統計的にみても仕事満足度を高める、ということであり、働き方の柔軟性を高めると仕事満足度も高まることが示された。

図2 推計結果(正規雇用)

注:図中の数字は限界効果を表す。仕事満足度は高い順に5、4、3、2、1と点数化して推計。***:1%水準で有意、 **:5%水準で有意、*:10%水準で有意。

我が国の仕事満足度は国際的にみても低い水準にあると言われている。そのため、仕事の柔軟性を高める施策を実施することによって、仕事満足度を高めていくことが重要である。勤務日の柔軟性を高めるには有給休暇取得率の向上、勤務時間の柔軟性を高めるためには時間単位での有給取得やフレックスタイム制度などを浸透させていくことが重要だ。また、勤務場所の柔軟性を高めていくために、テレワーク勤務などの取り組みをより広く実施していくことなども考えられよう。

野村旭(一橋大学大学院 博士前期課程 JPSEDインターンシップ生)

・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。