Column

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日本企業の積年の課題の一つに、社員の自律的なキャリア形成がある[1]。ポジションアップが行き詰まる中高年以降において、キャリアの自律性が欠ければ、仕事に対するモチベーションの維持が難しくなり、定年までなんとなくやり過ごすことにもなりかねない。それにもかかわらず、日本企業の管理職の多くは、自律的なキャリアを築けないままでいる[2]。

自律的にキャリアを築くためには、自身のキャリアを棚卸しして、将来を展望する必要がある。その契機となるのが「キャリアデザイン研修」である。そこで、本コラムでは、キャリアデザイン研修の実施の有無に着目して、日本企業のキャリア形成に関する現状を概観したい。

「Works 人材マネジメント調査 2013」(東証一部上場企業238社から得た回答)によると、40歳代を対象とするキャリアデザイン研修を実施している企業の割合は17.6%、50歳代対象も29.0%に過ぎない(図表1)。キャリアについて考える機会がそもそも乏しいことがうかがえる。

図表1 キャリアデザイン研修の実施の有無と人事諸制度との関係

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次に、配置・異動における本人意思の考慮とキャリアデザイン研修との関係をみてみると、キャリアデザイン研修を実施している企業では、配置・異動における本人意思を考慮していることがわかる。人事制度をみても、キャリアデザイン研修の実施企業は、研修の対象年齢を問わず、複線型人事管理や次世代リーダーの早期選抜を取り入れている比率が高い。つまり、キャリアデザイン研修の実施企業は、研修だけでなく、実際のキャリア選択において、本人の自律性を考慮して、より多様なキャリアパスを実現しているといえる。

最後に、キャリアデザイン研修の実施の有無と人材マネジメントの成果の関係をみてみよう(図表2)。「新しいことに挑戦しようという社員のモチベーション」について5件法で質問した結果をみると、研修対象の年齢層を問わず、キャリアデザイン研修の実施企業は、社員のモチベーションが高いと答えた比率が高い。また、「社外に誇れる専門家・プロフェッショナル人材」の有無についても、キャリアデザイン研修の実施企業のほうが高く、本人の強みを引き出せているといえる。

図表2 キャリアデザイン研修の実施の有無と人材マネジメントの成果

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このクロス分析は、因果関係を厳密に示すものではないため[3]、キャリアデザイン研修が、自律的なキャリア形成のドライバーであるとはいいがたい。しかし、キャリアデザイン研修が、他の人事制度と相まって、社員の自律的なキャリア選択、モチベーションの向上、専門家・プロフェッショナル人材の創出に関係していることに鑑みると、社員との良好な関係を築けていることを表すラベルとみることができるだろう。

【まとめ】
キャリアデザイン研修の実施企業は、社員との関係が良好だろう。それは、2つの人材マネジメントの成果――社員のモチベーションの向上、専門家・プロフェッショナル人材の創出から推察できる。

[1]たとえば、リクルートワークス研究所『Works No.106』第1特集「変化の時代、キャリアの罠」参照。
[2]日本、米国、中国、インド、タイの5カ国の管理職の働き方を比較したリクルートワークス研究所(2015)『マネジャーのリアル』によると、海外の管理職の約7割が「キャリアは自分が決める」と答えている一方、日本の管理職は「キャリアは状況に応じて決まる」と考える割合が54.5%となっている。
[3]モチベーションが高い社員や専門家・プロフェッショナル人材の求めに応じて、社員向けの研修の一環として、キャリアデザイン研修を導入したという逆の因果関係の可能性もある。

2017年03月15日