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人材育成を強みとする日本企業は多い。その一方で、人材育成に関する課題は数多ある。本連載の第1回では人事課題について焦点を当てたが、人事部門が認識している上位10課題のうち、半数の5つが人材育成に関わる課題であった。人材育成は日本企業にとって重要であるが、課題も多いテーマであるといえる。特に、ビジネス環境の変化のスピードが上がり、人材の早期育成と変化に対応した専門的なスキルの取得が求められる。そのような中、投資される教育研修費用は従業員の能力開発にどれだけ貢献できているだろうか?

本コラムでは、東証1部上場企業の人事部を対象とした「人材マネジメント調査2015」(回答社数:176社)の結果を用いて、教育研修費用の多い企業が実施しているOJTとOff-JT施策の特徴について考察する。

まず、教育研修への投資は人材育成に貢献できているのだろうか?調査で得られたデータを分析してみると、教育研修費用は「プロフェッショナル人材」と「イノベーションを起こす人材」の育成評価と相関があることがわかる。このことから、教育研修に積極的に投資をしている企業ほど、高度な専門性を有し、イノベーションを牽引する人材の育成が上手く行っていると評価していることがわかる。つまり、教育研修への積極的な投資には従業員の育成に効果があることがデータから示唆されたことになる。

それでは、積極的に教育研修に投資をしている企業では、どのような育成施策を講じているのだろうか。教育研修費用への積極投資群(N = 71)と消極投資群(N = 64)に分け、OJTとOff-JT施策の状況を比較した。その結果が下図になる。

図 教育研修費用の高低によるOJT、Off-JT施策の実施状況の違い

03012017人Mコラム第4回図版(修正)

注:網掛けの施策が積極投資群と消極投資群に有意な差が確認された。

 

分析の結果、教育研修に積極投資する企業では4つの特徴があることがわかった。

第1の特徴は、新入社員を対象としたキャリア研修を積極的に実施していることだ。早い段階から従業員にキャリアを意識させることで、従業員に専門性を身に付けることを意識させ、プロフェッショナルとしての成長を促している。

第2の特徴は、階層に関係なく、従業員自身で選択する手上げ式の研修を充実させていることだ。常に学習と自己啓発の機会を提供することが、その後の人材育成に関する高い評価に貢献しているものと考えられる。また、第1の特徴も踏まえると、積極投資群では従業員にキャリアを意識させ、自ら学ぶように促していることが見て取れる。

第3の特徴は、管理職を対象としたOff-JTでは自身のキャリアを考えさせ、人事と経営が主体となって選抜する研修を実施する傾向にあることだ。このことは、管理職が将来の経営幹部候補として期待されており、その意識づけとキャリアアップのための研修が人事と経営が主体となって実施されていると推察できる。

第4の特徴は、積極投資群はOff-JTだけではなく、OJTにも熱心に取り組んでいることだ。具体的には、OJTの効果を高めるために管理職層に部下育成研修を実施し、若手社員の育成を目的としたジョブ・ローテーションにも積極的であった。

以上の4つの特徴から、積極投資群ではOff-JTとOJTを組み合わせることで、プロフェッショナル人材とイノベーション人材を育成している様子を見て取ることができた。

【まとめ】
教育研修費用の多い企業では、自社のプロフェッショナル人材とイノベーション人材の育成に対する評価が高く、教育研修への投資は効果があることがデータによって示唆された。また、積極的に教育研修に投資する企業では、OJTとOff-JTの多様な施策を上手く組み合わせながら人材育成を行っていることが窺い知れた。

2017年03月01日