Column

main_03

「ダイバーシティを取り込もう」という号令があちこちで聞かれる。経済成長や組織活性化のために、多様な人材を受け入れ、活かすことが求められている。とりわけ、日本企業においては、女性、高齢者、外国人等の活躍促進を指すことが多い。しかし、その推進にあたっては、女性管理職比率等の数値目標だけが一人歩きしがちである。そこで、本コラムでは、「Works 人材マネジメント調査2013」の調査結果から、ダイバーシティと関わりのある3つの人事施策の共通点を考察して、ダイバーシティの推進につながる人材マネジメント上のポイントを提示したい。

ダイバーシティ推進の目的は何か。ダイバーシティ経営の成果として、製品・サービスやプロセスのイノベーション、顧客満足度や社会的認知度の向上、社員のモチベーション向上、職場環境の改善等が期待されている[1] 。経営戦略の推進と企業の社会的責任(CSR)の遂行を兼ねているといえる [2]

図表1.ダイバーシティマネジメントとイノベーションの関係

jinmane_03_01

ここで、前者について、定量的にみてみよう。上場企業196社の回答によると、図表1の通り、ダイバーシティマネジメントを実践できている企業は、イノベーションの自己評価も高い[3]。ダイバーシティとイノベーションにはつながりがあるといえそうだ。

次に、ダイバーシティマネジメントと人事施策との関係をみてみよう。具体的には、「Works人材マネジメント調査2013」に列挙された36の人事施策の実施有無とダイバーシティマネジメントの実践度合いの自己評価スコアとの相関係数を求めて、統計的に有意で係数が大きい順に整理した(図表2)。上位に挙がった3つの人事施策は、男性の育児支援制度、(一度離職した従業員の)再雇用制度、社員のボランティア支援制度等である。

図表2.ダイバーシティマネジメントの実践と人事施策の相関

jinmane_03_02

その意味するところは、次の通りだ。男性の育児支援制度は、男性の育児参加を促す。それは男女双方の性別役割分業意識を変化させる。再雇用制度は、離職者の復帰につながる。在職者と離職者との間の壁をなくす。社員のボランティアの支援は、仕事か仕事でないかの垣根を越えて、その人の活動全体を支える。

これらに共通するのは、区別、壁、垣根を取り払うことによって、制度支援を受ける人たち(育児する男性、離職者、ボランティア)だけでなく、それ以外の人たち(育児する女性、在職者、仕事)にも活力を与えうることである。つまり、ダイバーシティマネジメントとは、他と区別する形で多様性を取り込むのではなく、逆説的ではあるが、相違を認めた上で一括りにしてしまうことである[4] 。社員の活力を削ぐような区別、壁、垣根を取り除くことこそ、ダイバーシティ推進のポイントだろう。

【まとめ】
イノベーションに関わるダイバーシティ。そのポイントは、多様性の取り込みではなく、相違を認めた上で一括りにして、区別・壁・垣根をなくすことである。

 

[1] たとえば、経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」を参照。
[2] 東洋経済新報社の『CSR総覧2013年』では、ダイバーシティ企業ランキングの評価項目として、ダイバーシティ推進の基本姿勢(人権尊重・差別禁止等)、多様な人材活用、女性の活躍、育児・介護、働きやすさが挙げられている。
[3] ダイバーシティマネジメントを「高いレベルで実践している」企業のサンプルサイズが3社と少ない点に留意する必要があるが、このサンプルを除外したとしても、大まかな傾向に変わりはない。
[4] これはインクルージョン(包括、包含、一体性)と呼ばれる。

2017年02月15日