リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.17 世界のトップ企業の動向から見えてくる未来(1)

キャリアクロスローズ 共同代表 マーク・メーラー氏 (Mark Mehler)

【団体プロフィール】
キャリアクロスローズ(CareerXroads):米国を中心とした人事プロフェッショナルのグル的な存在で、HRの各種コンサルティング、特に最先端のテクノロジーを駆使したHRにも詳しい。約80社の大手企業が参加する「コロキアム(Colloquium)」という会合を中心に、人事・採用などに関するベストプラクティスを共有。

分業化と効率化が進む大手企業のHR業務

コロキアムに参加している大手企業では、従来通り人探しから面接・採用までの一連の流れを1人の採用担当者が実施する企業がある一方で、ソーシングとリクルーティングを分担する「サードパーティー・エージェンシー・アプローチ」を導入する企業も多くなっています。人探しから企業に興味を持ってもらうまでをソーシング担当者が担い、それらの候補者の情報を引き継いで、面接や採用、オンボーディングをリクルーティング担当者が行うという流れです。

どちらの方法をとるかは企業によってさまざまですが、この15年から20年で、スタッフィング部門の合理化がかなり進んでいるのは事実です。レター作成や採用候補者に連絡をとって面接日を設定するなどのこまごまとした事務業務をアウトソーシングしたり、ATSをはじめとしたIT技術も社内で保有するのではなく必要な分だけ活用できるリースのような仕組みにしたり。かつては100人、150人といた正社員のリクルーターも、半分以上が契約社員という企業もあります。

そのような流れを見ていると、私は将来的に数多くのリクルーターが消えていくのではないかと考えています。たとえば、人材を必要とする現場のマネジャーが直接ATSを利用して社外のベンダーに連絡をとり、候補者を挙げてもらって面接を実施し採用する。候補者との連絡や法的なチェックなど、事務的なサポートもアウトソーシングが可能です。そうなれば、社内にリクルーターがいる必要はなくなるでしょう。

実際、このような取り組みはいくつかの企業で始まっています。リクルーティング業務を一部アウトソーシングしている企業はどんどん増えていますし、なかには、ほぼすべての業務をアウトソーシングして、社内にはその管理を行う最小限のスタッフがいるだけという企業もあります。長期的にはそのような方向に進むと、私は予測しています。

一方で、サードパーティー業者のなかでも、単に不足している人材を紹介するだけのコンティンジェンシー型の人材紹介会社は、ゆっくりと消えていく方向にあります。エグゼクティブ層の採用は少し異なりますが、一般的なポストについては、求職者自らが積極的にインターネットに履歴書を公開するようになったため、人材紹介会社の存在意味が薄れていくと思います。

そのため、コーン・フェリー・インターナショナルの「フューチャー・ステップ」など、新たなサービスを提供したり、ATSの導入やHRの他の分野に進出する企業なども増えています。個人のキャリア・プランニングを人材紹介会社が提供するということは世界各国では一般的なことですが、今後は米国でも取り組むべき重要なテーマだと思います。

HR業務で重要になる「アナリティクス(分析・解析)」

業務の効率化を図る一方で、HR業務では「アナリティクス(分析・解析)」が重要なキーワードになっています。たとえば、バンク・オブ・アメリカでは、数年前からアナリティクスを専門に行うグループを設置していますし、ペプシでもソーシャルネットワークを担当する人と一緒に業務を行うアナリティクス担当者がいます。

マネジャーたちはデータ提供に強い関心を持ち、専門家を社内に常駐させ、シニアマネジメントの意思決定に活用できるあらゆるデータを出してもらおうと考えています。これは大きな変化だと思いますし、良い方向に向かっていると思います。

「アナリティクス(分析・解析)」は、米国に限らず世界のあらゆる国・地域で必要になることだと思います。ただし、国際的なリクルーティングに関しては国や地域によって状況が大きく異なりますし、米国と同じような仕組みが導入されるには、まだ何年かかかる可能性があるでしょう。

学校教育と連携した「キャリア教育」に注目

多くの米国企業では、大学の新卒採用は重要な位置づけになっています。ゼネラルミルズ、GE、エンタープライズホールディングスなどさまざまな企業が、大学新卒採用プログラムによって毎年何千人もの学生を採用し、将来のリーダーがそこから誕生しています。

そのようななかで、エンジニアリングに関する人材不足は慢性的です。大学で十分に人材を育てていないことも原因ですし、移民政策の問題もあって大学院レベルの人たちが米国に入ってこなくなっているのも要因の1つでしょう。IT業界では最近、人材を十分に確保できないため、採用にいくらでもお金をかけるという状況にさえなっています。

また、高校や大学など教育現場に企業が出ていき、業界や仕事について理解を深めてもらう活動を行ったり、将来の可能性を示すキャリア教育に関わる企業も増えています。たとえばデロイトは高校で会計を学ぶ学生と関わっていますし、シスコも短大に出かけています。スキルを持った人材が不足するなかで、このような活動を行う企業は今後増えていくでしょう。

私の個人的な希望でもありますが、小学校、高校、大学などの若い人たちを対象としたキャリア教育がもっと盛んになってほしいと思います。大学に行って教育を受けて卒業しても、現実的な社会についてまったく知らないというのは問題です。業界と学校が連携して教育を行えば、学んでいることの先にどのような機会があって、どこを目指すことができるのかなど、具体的なイメージを持てるようになるのではないでしょうか。

テクノロジーの進化は、リクルーティングのシステムの透明性を高める

若年層はテクノロジーが完全に日常生活の一部になっていますから、この世代との接触には、ソーシャルメディアなどITを活用したコミュニケーションが欠かせません。そのため、将来のリクルーターの仕事は、これらのツールを活用して早い段階から人材候補となる若者といかに関係を築いていくか、会社のブランディングを担う役割を果たすことも重要になるでしょう。

テクノロジーの進化は、人々の働き方にも大きな変化をもたらしています。将来的には、社員は世界のどこにいても仕事ができるようになり、どこに住んでいるかは関係ない環境になるでしょう。実際すでに米国では、雇用の際、近くに大きな空港がありさえすればどこに住んでいようと構わないという企業が増えています。

現在は、海外での雇用には各種規制があるためRPOなど社外の業者に依頼するのが一般的ですが、テクノロジーの進展とともにこれらの法規制も変われば、企業が自ら海外での雇用も担うようになる可能性も大きいと思います。

さらに、テクノロジーの進化は、リクルーティングのシステムの透明性を高めると思います。最近注目したのは、求職者にいくつか質問して、「はい」をクリックしたら即面接につながるという仕組みを導入している企業の例です。この場合、求職者は2週間も待たされるなどということなく、その場ですぐに必ず企業の誰かに会ってもらえます。

採用において、「面接」そのものがなくなることはないと思います。ただし、多くの企業がテクノロジーを活用することによって、対面式のリアルな面接は減っていくと思います。同じような理由で、カレッジリクルーティングも減るのではないでしょうか。企業は、ソーシャルネットワークやその他テクノロジーを活用して学生情報を入手し、最終候補者を絞り込むことになると思います。

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