リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.15 人材サービスのプロの視点 - 人材マネジメント

Profile CMGグループ CEO/米国人材マネジメント協会 元COO/元DBM北米社長 チャイナ・ゴーマン氏(China Gorman)

世界約140カ国25万人以上の人事プロフェッショナルが入会する組織、SHRM(Society for Human Resource Management)の元代表。クリスチャン・サイエンス・モニターなどの新聞社や企業で、30年以上の人事コンサルティングやリーダーシップ開発、エグゼクティブコーチングなどの経験を持つ。現在はグローバルな領域で活動する人事・採用などのHRコンサルティング会社CMGグループの最高経営責任者(CEO)。

企業文化と従業員満足の向上が、人材獲得に大きく影響

この10年間、リクルーティング業界にいくつかの変化がありました。 1つには、M&Aや企業再編、業績の悪化などさまざまな理由から解雇された離職者が、解雇ベネフィットの一環として、セルフマーケティング戦略の立案や履歴書の作成方法、面接対策、交渉方法などの再就職支援を受けられるようになりました。

また、職探しをする場合に、多くの人が自分のネットワーキングを通して行うのは、今も昔も変わりませんが、ソーシャルメディアの登場によって、“ネットワーキングの手法”が変化しました。

たとえば、私がある人材紹介会社からアプローチを受けた際、その組織について勉強する時間が3日しかなかったにもかかわらず、ソーシャルメディアのネットワークを通じて、その会社のカスタマー3人、競合企業の人、その会社に事業を売却したことのあるビジネスリーダー、元従業員数人と話すことができました。わずか3日間で、たくさんの情報を収集することができたのです。

新聞広告一辺倒だった求人広告は、インターネットの誕生によって、monsterやジョブボードなどの求人掲示板が急成長しました。企業側では、タレントコミュニティ構築という概念の探求や実験が行われ、monsterや「.jobs」サイトを通じ、自社サイトを訪れたあらゆる求職者と、就業開始時期を問わず関係を築こうとしています。

これは、求職者にとっても、自分のキャリアの方向性やキャリアアップのために誰と手を組むべきかなど、将来についての見識や洞察を深める良い機会になると思います。

先頃、グローバル規模で「民主的組織」の構築というムーブメントを起こしているWorldBluという会社が、世界で最も民主的な企業52社を発表しました。このランキングの指標は、従来のような福利厚生や給与などではなく、透明性が高く公平で、支配や命令や恐怖ではなく尊敬・尊重をもとに統率しようとする社風や組織内の環境であるかどうかです。今後は、このWorldBluのような組織がさらに成長し、影響力を持つようになるでしょう。

さらに、社風が、その企業の説明と実際のオペレーションで一致していない場合も、ツイッターやglassdoorなどのSNSを通じて、すぐにわかってしまうようになりました。だからこそ、従業員を惹きつける文化を築き、従業員満足の向上に力を入れ、従業員の定着をはかることが、採用にも大きな影響を与えるようになると思います。

そのためには、リクルーターの評価基準も、従来のような採用に要した時間や採用単価などではなく、10年後の従業員の定着率や採用後の訓練・育成状況など、プロセスではなく組織としての成果にしていくべきだと考えています。

2020年、人事は3つに機能分化する

2020年を展望すると、HRは、人事、コンプライアンス、ファイナンスの3つに機能分化するでしょう。また、複製可能で繰り返し行われる業務はすべてアウトソースされるであろうと考えています。

具体的には、人事の機能は採用からオンボーディング(定着)、育成、後継者の計画までの一連の領域を1つの部門とし、またコンプライアンス領域は、米国以外の国、アジアや欧州などにある法制度と、雇用や組合に関する規制への対応が、必要に迫られ専門分化します。また、ファイナンスは財務部門に移行されるのではないかと思います。

リクルーターには、よりマーケッターとしてのスキルが求められる

20年後には、ほぼ世界中で、人材不足が深刻な問題となるでしょう。そのとき、スキルや人材の獲得は非常に重大な問題であり、自社のコアコンピタンスにするべきだと思います。

その際、リクルーターに求められるのは、マーケッターの役割と、アセッサー(評価者)の役割の両面だと考えられます。リクルーターは、人をマッチングさせる単なるキューピッドではなく、より能動的に自社を採用候補者に売り込む力が必要になります。そのためには、高いマーケティング力も必要になるでしょう。

場合によっては、人材に関する領域がマーケティング部門に移管されるかもしれません。人材から見たブランディングや採用候補者獲得の視点と、マーケティングの視点はとても類似していますから。

また今後は、私たちが行っていることはすべてテクノロジーによって増強されるでしょう。そのため、生涯にわたってアクティブな学習者であるか、新しい考え方やテクノロジーの新しい活用方法に適応する力を持っているかということが、採用において重要視すべき基準だと思います。

経営者の視点から見ると、テクノロジーに関してアーリーアダプターとしての手本を示すリーダーも必要です。それには、ツイッターやリンクトインのファン数やコネクション数が多いかどうかではなく、新しいツールを気軽に使えることが大事だと思います。

一方で、テクノロジーだけでなく、面と向かって一対一で話す能力が、多くのキャリアにおいて重要なスキルの1つになることを私は願っています。

以前、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された記事によると、インドでは毎年数万人ものエンジニアが大学を卒業しているのに、コミュニケーションスキルの欠如から雇用に適さない人が多いのが現状だそうです。そのため、フィニシングスクールビジネスを立ち上げようとしている友人もいます。MBAなど何らかの学位を取得しテクノロジーには精通しているが文章を書くのが苦手、対人スキルが低いなどの新卒者を対象に、ビジネスにおけるキャリアとは何かをはじめ、初対面の人と会ったときは握手をするといった基本を3週間で教えるというビジネスです。雇用市場で勝ち残るだけでなく、インド経済やグローバル経済の成長に大きく貢献することを目指すのだそうです。

当然のこととはいえ、コミュニティ構築のためのテクノロジーの導入と並行して、コミュニケーションスキルの形成も、今後必要になってくるのだと思います。

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