リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.13 人材サービスのプロの視点 - 英国編

英国求人雇用連盟 リサーチ・ディレクター ロジャー・トゥイーディ氏 (Roger Tweedy)

【団体プロフィール】
英国求人雇用連盟:The Recruitment and Employment Confederation(REC)。前身は1930年に設立されたThe London Employment Agencies Federation(LEAF)。英国における企業の採用・人材戦略に関する調査・支援を行う。「Rectuitment 2020」などの将来を見据えた提言なども行っている。

採用の今後の方向性を示す「Rectuitment 2020」

「Recruitment 2020」は、RECがシンクタンクのDemosと、人材ビジネス業界における傾向と特性を特定し、これらの特性が将来的に人材ビジネス業界にどのような影響をもたらすかを検証するプログラムでした。

具体的には、未来の雇用作業部会(Future of Employment Working Group)を設立しました。「Gateway to Success - Recruitment 2020 White Paper」や、人材開発協会(CIPD)と共同で「A Guide to Productive Partnerships(生産性の高いパートナーシップのためのガイド)」の報告書を作成しました。ほかには、求職者に人材ビジネス業界の情報を提供する「ジョブセーフ」プログラムや、ジョブセンタープラス(公共職業安定所)とのパートナーシップなども行いました。

「Recruitment 2020 」では、人口動態の変化を受け、2020年にはケアセクター、サービスセクターの需要が高まりという予測や、採用候補者は、企業のブランドや社会的責任、フレキシブルワークをますます重視するようになること、インターネットやオンラインのサービスの利用増加など、さまざまな未来像を描きました。

未来の雇用作業部会は2007年に発足したものですが、英国の大手企業100社の人事部長やシニアビジネスリーダーで構成しています。部会では、人材獲得競争、採用やリテンションプロセスにおけるテクノロジーの影響、スキル要件の変化、フレキシブルワークとモバイルワーク、競争優位を得るためのダイバーシティの取り入れ方、経済的な不安定さと労働力の柔軟性を高めることによるリスク回避の必要性などが議論されました。

新卒のスキル不足解消を目的とした、アプレンティスシップ制度

英国を含む欧州全体では、2020年までの欧州の経済成長と雇用に関する包括的な計画「欧州2020」において高等教育修了者の増加を目標に掲げてきました。英国でも同様で、経済危機や大学の授業料の大幅増などの障害はあるものの、大学進学率は伸びてきました。その一方で、過去20年間で大学新卒者の質が低下したと問題視もされています。特に、コミュニケーションスキルやビジネスに関する一般常識などの社会人基礎力不足が指摘されています。

また、テクノロジーなどの特定の分野では、大学で学ぶ内容や技術が実際の変革のスピードに追いついていないため、スキル不足が深刻な問題になっています。他にも生命科学やテクニカルエンジニアリングなどの領域でも、スキル不足が指摘されています。これらの分野に関しては、グローバル市場全体での人材不足も1つの要因になっているでしょう。

これらのスキル不足を解消するためにも、政府は最近、アプレンティスシップ制度を再活性化するイニシアチブを発足しました。産業界も支持しており、今後数年間は職業技能を開発させる方法として増加すると思います。

ほかに、若年者はテクノロジー分野に「オタク」というイメージを抱くため、テクノロジーの資格取得を避ける傾向もあります。しかし、企業はテクノロジー分野で重要なのは、ITスキルを持ったコンサルタントに近いオールラウンドプレイヤーとしての役割であると認識するなど、双方にギャップも生じています。

企業とリクルーティング会社との関係の変化

企業がどのように人材を惹きつけているのかという点では、エンプロイヤー・ブランディングに関する白書をリリースしました。そのなかで、大手企業は人材を確保するためのブランド確立に注力していると説いています。

一部の大手企業は、ブランドに関する深刻な問題を抱えています。たとえばBPは原油流出事故によりブランドイメージが悪化しました。またソーシャルメディアが普及したこの時代では、ブランドの透明性が非常に高まり、簡単にはブランドイメージを形作れなくなっています。情報があふれる市場のなかで、自社のブランドが目立たないという状態に陥っています。

そのような採用ブランドの構築において、リクルーティング会社は非常に重要な役割を果たせると、白書では提言しています。リクルーティング会社はコンサルタントのエキスパートのようなものであり、企業に対し率直なアドバイスを提供できます。また彼らは、市場において企業の採用ブランドを増幅することができると私たちは考えています。

特に英国のY世代の特徴として、雇用主に直接雇用されるよりも、サードパーティを介したインディペンデントな働き方を好む傾向があります。今後、そのような大きな人材プールにアクセスするためには、企業はリクルーティング会社とパートナー関係を築く必要があります。

ただし、ここには「コスト」という課題が立ちはだかります。企業とリクルーティング会社の双方にとって、リクルーティング会社が付加価値を与えるようなサービスを開発することが重要であるということは周知の事実です。ところが、企業にとっては採用におけるコストの圧縮も必要です。コストと質のバランスをいかに保つかが、重要なポイントとなるでしょう。

そのようななかで、エグゼクティブサーチ会社との関係だけは、若干様子が異なります。企業にとって非常に大きな戦略的な意味を持つエグゼクティブサーチにおいては、ベスト人材を確保したいという確実なニーズがあると予測できるからです。

グローバル化や高齢化の流れでキーとなる「人材派遣」

人材紹介会社のなかには、グローバルソーシングセンターを設立するなど、国を超えたサービスを提供する会社も出てきました。世界的に考えれば、今後ますますグローバルな流動化は起こると思います。

ただし、英国では失業率も高く、グローバルな人材流動は政治的にとてもデリケートな問題です。特に移民政策に関しては、問題はより複雑化すると思われます。国による政治的・文化的な障害をいかにクリアしていくかが、グローバルな人材流動の鍵となるでしょう。

たとえば、「人材派遣」での働き方に対するイメージでさえ、国によって異なっています。英国では派遣や契約労働者のほとんどは正社員と同等の賃金を得ていて、人材派遣での働き方はキャリアの選択肢の1つとして確立されています。しかし、ほかの欧州諸国では、人材派遣はネガティブに捉えられがちです。米国や日本でも偏見があるのではないでしょうか。

今後、社会のグローバル化が進み、さらに高齢化も進むなかで、「人材派遣」は柔軟な働き方を促進するうえで重要な役割を果たすとことでしょう。

テクノロジーの進化で手法は変わるが、採用モデルの根本は変わらない

この10年間で、採用候補者のソーシング方法について、興味深い進化が見られます。10年前は、求職者の連絡先のデータベースが中心でしたが、ジョブボードが登場し、最近ではソーシャルメディア、特にリンクトインが潜在層と顕在層のソーシングに利用されています。また、人々の過去の行動を分析することによって未来の行動を予測するという「モデリング・オブ・インテント」なども導入され始めています。

このところ、新入社員のほうがマネジャーや年配社員よりもテクノロジースキルが高いという現象が起きています。それが、さらなるテクノロジーの進化を促進すると思います。しかし、テクノロジーは候補者となる人材層の発掘や選考の効率化を進めることに貢献してきましたが、採用モデルの根本は変わっていません。

マッキンゼーが予測した「人材獲得競争」は今後も続くでしょう。そのようななかで、企業のHRや人材会社など業界全体で、スタンダードの確立やプロフェッショナルの育成に今後も重点を置いていく必要があると思います。

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