リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.10 グローバル企業の採用戦略 - BTグローバルサービスの場合

最高人事責任者ナイジェル・パークス氏(Nigel Perks)

人事バイスプレジデント ビビアン・レインスター氏(Vivian Leinster)

【企業プロフィール】
1984年に英国で設立された通信会社。現在は、世界中の大手金融機関をはじめ企業や政府機関などを相手に、170カ国以上でさまざまな通信サービスやネットワーク構築を提供するグローバル企業。

近未来の働き方にマッチしたマネジメントスタイルが求められる

パークス氏(以下P):当社で求める人材は、国や文化がさまざまなメンバーによるチームを、国境を超えてマネジメントできる人です。最近では、アジア太平洋や南米などの成長地域での採用にも力を入れています。その背景には、当社の顧客企業の多くがそれらの地域に力を注いでいることがあり、市場変化によって当社の採用も大きく変化しています。

英国国内における営業職の採用においても、以前は、特定のテクニカルスキルを持つ人材を必要としましたが、現在はより幅広いソリューションを売り込める人材を求めるなど変化してきています。幅広い知識を持ち、顧客のニーズに的確に応えられるコンサルタント的要素に期待しています。

このような新しいタイプの人材を獲得するために、「セールスアカデミー」という組織を立ち上げ、初年度は200名の採用を行いました。募集についても新聞の求人広告などは使わず、フェイスブックやツイッター、リンクトインなどのソーシャルメディアを活用し、採用プロセスの多くは電話やビデオ面接などで、アセスメントセンターで直接対面したのは最終選考のみという新しい形をとりました。

そこで大きく貢献しているのが、当社がソリューションの1つとして販売しているシスコシステムズのビデオ会議システム「テレプレゼンス」です。このシステムは、まるで相手が同じ部屋にいるかのようにリアルで、社内の会議などでも幅広く活用されています。

レインスター氏(以下L):テクノロジーは、人々の働き方にも大きな影響を与えています。

当社は、在宅勤務やテレプレゼンスの利用など、柔軟な働き方を他社に先駆けて提供してきましたが、それも今また、次の段階に差し掛かっているといえます。

具体的には、当社の顧客体験部門の未来学者が作成した白書にもありますが、自宅や勤務先近辺のカフェのような「ハブ」に出勤するという新しい次元の働き方が増えると予測しています。在宅勤務が一般化してくると、常に在宅勤務することによって孤独を感じている人が多く、実は誰にでも向く働き方とはいえないということがわかってきたのです。その点、WiFiやiPad、セキュリティの向上などにより、さらに仕事の場とは別に人々が集まってディスカッションし、創造の場となる空間を作ることが可能になりました。

実際、当社のインダストリアル・パークにある拠点の1つがハブとして機能し、従業員同士が話し合い、創造できる柔軟な環境を実現しています。たとえばグーグルでも、米国でカフェテリアのランチやディナーの営業時間を延長することで、従業員がより長くオフィスに残り、話し合いや創造を活性化したといいます。

新しい働き方のためには、従来のようなヒエラルキー型の人事制度ではなく、柔軟なマネジメントスタイルが求められるようになるでしょう。特にソーシャルメディアは自己統制に基づいており、そのようなオペレーションやさまざまなライフステージとの交流に慣れ親しんだ人々が増えてくることで、新しい動きが出てくると予測できます。

人材へのアクセスからオンボーディングまで。自社を基本とした採用へ

P:当社の採用においては、必要な人材やポストに応じて最もふさわしい手段を柔軟に取り入れています。

従業員が元同僚や友人を紹介するリファラル(縁故)もありますし、ソーシャルメディアの利用も増えています。試験的な雇用の意味でのインターンシップ制度や、世界規模での新卒採用制度のほか、卒業後、1度は働いた経験を持つ若手向けに、BT内の幅広い業務を体験しながら次世代リーダーとして育成する「ファストトラック」という制度もあります。

また、外部のプロバイダーに関しても、たとえば、上級職の採用には人材紹介会社エゴンゼンター、スペンサースチュワートの2社と契約を交わし、英国だけでなくグローバルで活用しています。一方、特定の分野、特にテクノロジーや地域に特化した採用ではブティック型の紹介会社(クリスチャン&ティンバースやランコールなど)を利用しています。

リンクトインなどを利用することで、外注していた紹介業務を社内に戻し、自社で行うことができるようにもなりました。そのため、社外のサービスを利用するよりもコストを抑えて効率化を図る、社内の紹介チームもあります。

社内にリクルーターとソーサーの両方を設置し、当社ではソーサーのことをリサーチャーといっていますが、リクルーターとリサーチャーがチームになって、リンクトインなどの候補者データベースにアクセスし、候補者リストを構築します。

それによって、採用プロセスを以前より包括的に捉えられるようになったと思います。候補者との最初の接点から、選考のプロセスを経て、最終的にはオンボーディングプロセスまで見届けることができるということは、入社してもらった人にとっても、より良い効果をもたらすのではないかと期待しています。

少し前にも、アジアで大規模な事業拡大を図った際、検討した課題の1つは、社内で採用チームを構築するべきか、もしくは採用プロセスをアウトソースするのかという点でした。比較検討した結果、適材の採用は自社にとって非常に重要なことであるため、社内で行うことを選択しましたが、採用プロセスをまったくアウトソースしないというわけではなく、候補者データベースの構築といったリサーチの領域をアウトソースしました。また、グローバル規模ではアクセンチュアに採用プロセスの一部でサポートを受けています。要は、何を外注するかをきちんと整理して実行することが大事なのです。

:選考においては、アセスメントにも重点を置きました。特に、シニアクライアントパートナーやクライアントデリバリーディレクターなどの上級の役職者の採用において、社外のアセスメントも活用しながらじっくりと選考するようになりました。

これらのポストは採用人数が少ないだけに、いかにぴったりの人材を見つけるかが長期的に見てより重要になります。つまり、適材を見つけるためには、選考プロセスに多くの時間をかける必要のある役職があるということです。

P:新卒採用や従業員の研修におけるアセスメントは、当社のアセスメントセンターが中心となって実施しています。たとえば新卒採用の場合、候補者を20人くらい集め、半日から1日かけてさまざまな個人やチームへの課題を与え、その取り組む方法や働き方など多方面から確認するといった手法です。これは従業員向けの研修でも活用し、アセスメントの結果に応じて育成計画を作成します。ほかには、サイコメトリクスやオンラインツールも活用しています。

ちなみに、新卒採用に関して言えば、採用のプロセスにおいて、MBAを除きキャンパス内での採用活動は行わない傾向にあります。従来は大学に企業が出向き面接を行う「ミルクラウンド」が一般的でしたが、現在はすべてテクノロジーを介して行うようになりました。学生はオンラインで応募し、電話面接を行うのが一般的で、多少はジョブフェアも実施していますが、やはりソーシャルメディアを活用したほうが学生とは接点を作りやすいと考えています。

インド・南米など世界各地域で将来のリーダー候補を採用し育成する

P:当社では、グローバル新卒採用制度を導入しています。以前は主に英国でのみ採用を行っていたのですが、アジア太平洋や欧州、米国などにも新卒の人材プールを構築するようになりました。

これは、当社の従業員10人中6人は英国外のグローバルサービスに従事しているといった事業のグローバル性を反映した動きです。実際、経営陣のダイバーシティにも同じことがいえて、米国人、オランダ人、ベルギー人、スペイン人、インド人など多様な文化的背景を持った人々によるリーダーチームを意図的に築いています。

L:そこで、南米やインドでの採用も今後の大きな課題となります。これらの地域はほかの大手企業と競合する地域のため、スキルの高い人材プールが存在します。そのため当社に優秀な人材を引っ張ってこられる一方で、当社から競合へ人材が流出することも多いのです。企業間の従業員のネットワークが強く、口コミの影響も非常に大きいといった特徴があります。

今後は新卒も視野に入れて、どうすればこれらの地域の新卒をゼネラルマネジャーまで育成できるか考えることが重要になるでしょう。現在は、カントリーマネジャーは社外から迎えていますが、5~10年後には社内の人材を昇進させられるようになりたいと思っています。

P:従来は、英国や米国の多くの企業は自国の社員をそれらの地域に「輸出」してきました。たとえば従業員を3年間、家族とともに住宅や学費も補助するという非常にコストのかかる長期型海外赴任を行うといった形で。しかし、こうしたケースは減少傾向にあり、当社では「ローカル・プラス」という現地の報酬パッケージに住宅など一部の手当を上乗せするといった最長1年間のより柔軟な短期型海外赴任が増えています。また、ローカル人材の採用も検討するようになりました。

L:インドでは国外へ出る人よりも帰国してくる人のほうが増えていて、シニアレベルの人材の質は高まっています。今後は、各地域でリーダー候補人材を採用し、それらの人が英国や米国に短期間赴任して経験を積み、自国に戻ってリーダーとして活躍する。そういうケースが増えることを期待しています。

Page Top