リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.9 グローバル企業の採用戦略 - ウォルマート・ストアーズの場合

コーポレートリクルーティング部門シニアディレクター マイク・グレニエ氏 (Mike Grennier)

【企業プロフィール】
1962年米国アーカンソー州で1号店を開店。現在は世界27カ国でスーパーセンターやディスカウントストアなどを1万店舗以上展開する。従業員数は、米国140万人以上、インターナショナル78万人以上、全世界合計で220万人以上にのぼる。

マーケティング的スキルを活用した戦略へ

ウォルマートでは、グローバルに採用のサポートを行うCOE(Center of Expertise)という組織を設けています。そこで私は、リクルーティングテクノロジー、ブランディング、キャンパス&ダイバーシティー、リクルーティング戦略、複雑なソーシングなどのグローバルソーシングのサポートをしています。

また一方で、米国の本社におけるITやファイナンス、法務、HRなど各オフィス向けの採用のバックアップもしています。

この10年で大きく変わってきたことは、マーケティング的な発想での仕事にシフトしてきた点。以前は、応募者の管理などをはじめとした採用に関する管理的な仕事が重視されていましたが、最近は候補者を探す助けとなるマーケティングコンセプトやツールをより重視するようになりました。

それは候補者が思い描いている自社のイメージはどのようなものか、エンプロイメントバリューポジションは何か、なぜ人々はグローバル規模で会社を探そうとするのか、というようなことです。

そのため、採用ブランディング専門のスタッフの設置、当社のマーケティング部門が利用するツールの活用など、アクティブにアプローチすることが、以前とは大きく異なります。

たとえば、「ウォルマート」は認知度の高いブランドで、どんな会社かを伝えることにあまり時間をかける必要はありません。しかし、それが問題にもなります。

ウォルマートといえば、店頭でのサービスというのが一般的に多くの人が持つ仕事のイメージです。そのため、実際はファイナンスやIT、法務、仕入れなど、さまざまな分野で非常にプロフェッショナルな能力を求めているということを知ってもらう必要があるのです。

今後もその傾向は強まると考えています。当社のリクルーターには、HR的なスキルはあまり必要ではなくなるでしょう。どうしたらこちらから積極的に候補者を見つけ確保できるかといった、マーケティングやセールス的なスキルがもっと必要になると思います。

旬のソーシャルメディアを積極的に活用する

採用経路は、現在も従業員によるリファラル(縁故)が大きな比率を占めています。これは今後も利用し続けるでしょう。それ以外には、リンクトインやフェイスブック、ツイッターなどのソーシャルメディアやグーグル、Bingなどのテクノロジーを利用して、以前はこちらからアプローチできなかった難易度の高い層にも積極的に働きかけています。

HRのなかでも、リクルーティング部門のITの活用は、ほかの部門に比べて非常に劇的に変化していると思います。ソーシャルメディアがあり、クリック報酬型広告があり、ビデオ面接テクノロジーがあり……、まさに今行っているインタビューもビデオ面接システムを利用していますが、変化のスピードがとても速くなっています。

キャリアフェアで配布していた分厚いパンフレットはCDになり、USBメモリになり、どんな情報でもダウンロードできるQRコードになりました。

面接も、アーカンソー州ベントンビルからだけで年間何千件もの映像インタビューを実施することができ、効果を挙げているところです。

当社のリクルーティングの支出の対象は、大規模なジョブボードから、クリック報酬型広告などのマーケティング部門がいつも使用している新規テクノロジーへと劇的に変化しています。

私がいちばん好きなリクルーティングに関する言葉は、「魚のいるところで魚をつかまえろ」です。求職者はソーシャルメディアの輪のなかにいる。その輪のなかに加わりメッセージするということです。そのために企業も最新のスキルセットをある程度維持することが必要です。リーダーはリクルーティングの世界で何が起きているか正しく把握し、時間を投じて今起きていることを知ることが非常に大事です。

ソーシャルメディアは欠かせない存在になっています。私たちのチームのなかには、ソーシャルメディア・グル(教祖)と呼ばれている担当者がいて、常に新しいテクノロジーや採用経路を探し、ソーシャルメディアにメッセージを発信し、ツイートも行っています。

ソーシャルメディアのトレンドはなくならず、これからも進化し続けるでしょう。どのようなソーシャルメディアのなかに私たちの求める人材がいるのでしょうか。

今は、リンクトインかもしれませんし、フェイスブックやIT系の人たちが使っているゲームサイトなど、ユニークでニッチなソーシャルメディアツールかもしれません。肝心なのは、その輪に加わり、彼らに向かってメッセージを発信することだと思います。

それぞれの国にマッチしたアプローチ方法を選択する

ウォルマートでは、IT系採用などの比較的小規模なアウトソースプロジェクトから、ほぼすべてのエグゼクティブレベルの採用にリサーチ会社を利用することもあり、あらゆるケースで、世界中にたくさんのパートナーがいます。インドやバングラデシュ、中国などの比較的小規模な都市での採用では、最初から多くの外部パートナーの力を活用しています。

ただ、基本的な考え方としては、社内での実施が最良であると考えています。時間をかけて構築していた知識が蓄積されているからです。

ウォルマートの物流になぞらえてみると、毎週・毎日、確実に基準の出荷量があり、その流れはしっかり構築しています。しかし、ある商品が急増するなど需要の急激な変化には、サードパーティーのトラック会社にアウトソースして対処します。リクルーティングでもほぼ同じです。

こういったことは、社内の多くの部門から学びます。ブランディングではマーケティング部門からたくさんのことを学びますし、サプライチェーンパートナーのやり方をどのようにリクルーティング戦略に応用できるかなども学びます。

また、米国内でのやり方だけでなく、英国などの優れたブランディング活動や候補者のアセスメント方法なども学びます。

グローバル企業への転換をはかっている過渡期だからこそ、地域や部門を超えた成功事例を積極的に活用していくことが大切だと考えています。もちろん、国際経験やグローバル人材の確保も欠かせません。

現在、米国内のMBAスクールにプログラムを用意し、デューク大学やミシガン大学などで学んだ外国人学生を採用しています。彼らには2年間くらいベントンビルで働いてもらい、そこで得た知識やスキル、ウォルマートの文化などを持って帰って自国でのローカライズに役立ててもらいたいと期待しています。

逆に、米国で働く人々にも、3カ月や6カ月といった期間で海外に行き、経験を積める方法を模索しているところです。

さまざまなツールの変化や環境の変化はありますが、結局リクルーターにとって大事なのは、いかに候補者へのチャンスを作り、やり取りをして話し合い、評価できるかであることには変わりありません。テクノロジーは進化しても、生身の人間が行う活動であるということを忘れてはいけません。

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