リクルーティングの未来グローバル企業の採用戦略 ジョンソン・エンド・ジョンソンの場合

Vol.7 エディ・スチュワート氏(Eddie Stewart) ジョンソン・エンド・ジョンソン製薬部門リクルーティングディレクター

グローバルリクルーティングへのシフトチェンジ、標準化を図る

ジョンソン・エンド・ジョンソンにおけるリクルーティングの体制は、近年大きく変化しました。

以前は、多数の異なるオペレーティングカンパニーの集まりで、それぞれが独自にリクルーティングを行っていました。

しかし、約5年前にリクルーティングプロセスを中央に集中させ、すべてのオペレーティングカンパニーに中央リクルーティンググループを利用するよう義務付けました。グローバルネットワークを構築し、標準化させたのです。

現在私は、製薬部門のなかのR&D(研究・開発)とサプライチェーンの2つのグローバルグループのリクルーター24名をディレクションしています。

グローバルベースではほかに、コンシューマー部門と医療機器部門のそれぞれを統括する2人と、世界を地域で区分けしたリージョナルリクルーティングディレクターが、EMEAに1人、南米に1人、アジアに1人います。

これは当社に限ったことではなく、業界のリクルーティング関係者と話すと必ずグローバル化についての話になります。

それだけ、リクルーターにとっても求職者にとっても、国際経験は非常に重要になっていて、特に各国での雇用に関する法制度を理解し、社外のベンダーをマネジメントする方法などにも精通するリクルーターはとても大切な存在になります。

今後、少なくとも大企業にとっては、地理上の境界線は薄れ、世界中をもっと大きな視点で見る必要性が出てくるでしょう。

担当国の法制度や事業内容に精通し、戦略的にリクルーティングを実行

グローバル化だけでなく、私たちの仕事は大きく変化してきました。

たとえば、リクルーターは単にリクルーティングプロセスに精通すればよいというのではなく、事業に関してより深く理解しなければならなくなりました。事業を理解し、人材の需給のギャップを認識し、そのギャップを埋められる人材がどこにいるかを積極的に特定するリクルーティングプロセスの設定が必要になったのです。

私が今担当している製薬部門でも、サプライチェーンで必要とされる人材は大きく変化しました。

かつては、組み立てラインで働く労働者が必要でしたが、現在はシステムを管理できるコンピュータ技術者のような人材が必要とされています。

また、以前は1つの薬を専門に売る営業担当者が必要とされていましたが、規制緩和により1人がさまざまな種類の薬を販売するスタイルへと移行し、求められる営業モデルも大きく変化しました。

それだけ業務に密着したリクルーティングが必要となるため、我々の勤務先も本社ではなく事業所へと移り、事業を理解したアセスメントとオファープロセスを通じて採用を管理するようになりました。

ソーシャルメディアや戦略的パートナーとの連携を強化

当社のリクルーティングにおいて、数年前からソーシャルネットワーキングの利用価値が高まっています。

たとえば、製薬部門の腫瘍科やウイルス科など、非常に限られた分野の経験を持つ医者が必要といったような場合、求人サイトに募集を出すよりは、あらかじめ長期にわたってネットワークを築いておくほうが効果的に適任者にアプローチできるからです。

現在はリンクトインを中心に、特定のニッチサイトなども利用しています。

テクノロジーの活用では、マーケティンググループが非常に優れた活用をしており、彼らの活動とリクルーティングをつなげられないかと模索しています。マーケティンググループが成功していることは何でも学び、リクルーティングに活用する方法を見つけたいと思っています。

一方で、従来のキャリアフェアなども活用していますし、新卒採用では学内イベントを通じて採用を行っています。

ここ数年、学内イベントの運営管理や大学からの候補者確保のフローはベンダーに委託するようになり、我々はその後のアセスメントやオファーまでのプロセスを行うようになりました。

すべてを包括的に委託するというのではなく、必要に応じてRPOを活用していくことは必要だと考えています。その点、セールス分野の採用に大いに期待していきたいと考えています。

さらに現在、契約社員の採用ではWorksense※1とリレーションシップがありますが、この先さらに関係を強化していけるかもしれません。

当社のような専門的な内容が多い事業では、新しいスタッフにグループ企業や製品の知識を十分つけてもらうのに何カ月もかかります。そういう情報を把握し、迅速に対応してもらえる戦略的パートナーを強く求めています。

優秀なリクルーターに必要なのは関係構築のスキル

優秀なリクルーターといえば、以前は、新聞広告の載せ方に精通しているとか、電話での声のトーンで求職者を見分けることができる人といわれていました。しかし現在は、ツイッターやフェイスブックでの求職者とのやり取りに長けているなど、時代とともにテクニック的なスキルは変化しています。

しかし、結局変わらないのは、昔も今も、いかに良好なリレーションシップを築くことができるかという点です。

候補者とも、担当事業部門とも良い関係を構築し、人脈づくりがしっかりできる人というのが、優秀なリクルーターの重要なコンピテンシーであることは変わりません。

※1 Worksense
人材会社ケリーサービスが、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの派遣スタッフ採用を元請けとして一括管理する派遣採用制度。

Profile

エディ・スチュワート氏(Eddie Stewart)
製薬部門リクルーティングディレクター
【企業プロフィール】
ジョンソン・エンド・ジョンソン 世界60カ国、250以上のグループ企業を有するトータルヘルスケアカンパニー。主に、消費者向け製品、医療機器・診断薬、医薬品の3分野において、数万アイテムにのぼる製品を提供するリーディングカンパニー。