リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.4 グローバル企業の採用戦略 - デロイトの場合

デロイト 人材獲得部門グローバルディレクター ケント・カーチ氏(Kent Kirch)

【企業プロフィール】
国際名称「デロイト・トウシュ・トーマツ」(Deloitte Touche Tohmatsu 略称DTT)。1845年にロンドンで会計事務所としてスタートし、現在はニューヨークが本部。加盟する会計事務所は世界150カ国に及ぶ、世界四大会計事務所の1つ。

世界中で、年間5万人近くの採用を実施

私がデロイトで働き始めて20年以上が経ち、この10年ほどはグローバルディレクターとして全世界の採用の基盤づくりを進めてきました。

2001年にグローバルディレクターに就任した当初は、世界で統一したプラットフォームがあったわけではなくゼロからのスタートでした。

そのため、最初の5年間は各国で活躍するリクルーティングリーダーたちのためのコミュニティを構築し共通点を見出したり、必要とするサポートや将来の目標の設定など、基本的な事柄に取り組んでいました。

つまり、共通するインフラの整備や基本となる採用戦略づくりに多くの時間を割き、ローカルレベルで実行するグローバル戦略を構築していた時期といえるでしょう。この頃はまだ国境を越えた採用活動はほとんどなく、現地のビジネスと人材確保力との最適化を図るというものでした。

その後は、本格的にグローバリゼーションに焦点を当て、世界規模での人材の流動性を念頭に置いた仕組みづくりを推し進めてきました。それによって、世界中のどこにいても人材を調達し、そのうちのかなりの割合を需要のある地域に送り込むことも可能になりました。

現在デロイトでは、世界中で年間4万5,000~5万人の採用に取り組んでいます。多くは主にプロフェッショナルや相応の資格が必要なポジションで、大まかに言うと半数が経験者、半数が新卒者の採用となっています。

そのため、私は大学生のインターン採用から、パートナー(共同経営者)やエグゼクティブ採用など、あらゆるレベルの採用戦略の立案・実行を、グループ会社とともに行っています。

また、採用だけでなくすべてのプロフェッショナルの国際流動性を管理しています。デロイトでは、常に4,000人くらいのプロフェッショナルが世界のどこかで任務についているので、その人材配置のための枠組みや方針、プログラムの作成なども行っています。

これらの業務を遂行するため、私の元には30名のグローバルグループのメンバーがいて、世界10カ国、約20都市に分散しています。

さらに、国別に各事業部門を代表する複数のリクルーティングリーダーで構成されたグローバル協議会があり、現地で実行する戦略もあれば、グローバルレベルで構築する戦略もあります。その体制があるからこそ、明らかによい成果が出ますし、リクルーティングリーダーたちは、戦略の発展の過程に関わることで自分たちがなすべきことに自信を持ち、責任を持って職務を遂行しています。

特に、各国のリクルーティングリーダーたちはこの10年間で年齢層が上がり、確実に経験を重ねてスキルが伸び、事業部門の中での信頼度や影響力が大きくなっています。過去に比べて労働力計画プロセスにも大きく関与するようになりました。そして、より戦略的に事業計画を採用計画に反映させるという難題に、現在取り組んでいるところです。

学生へのアプローチ方法は、国により異なる

BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字BRICに、最近は南アフリカも加えBRICSとすることも)諸国での採用が、国境を越えた採用戦略の1つとして注目されています。

一般的に、これらの国で大量採用業務のリーダー経験が15~20年ある人材を探そうとしても、市場として未成熟で難しいという面があります。そこで、ビジネスの成長に遅れずについていける人材採用機能の構築のため、まずは多くの時間を費やしてリクルーティングリーダーへのコーチングを行い、さらに世界各国に留学している学生へのアプローチを強化しました。

中国やインドなどの国々では、優秀な学生の多くが海外の大学に留学しています。現在、およそ100万人の外国人留学生が欧州と北米の大学に留学していますが、その多くが5年前に比べてずっと多い確率で、帰国して自国で活躍したいと考えています。そこで、これらの学生に確実にコンタクトをとっていくことが重要になっているといえます。

学生へのアプローチという観点では、国や文化の違いなどによって、さまざまな取り組みを行っています。学生へのアプローチという観点では、国や文化の違いなどによって、さまざまな取り組みを行っています。

米国では、インターンシップが大きな役割を果たしています。現在、採用者の40~50%は、インターンシップからエントリーをしているほど、エントリーレベルではリクルーティング戦略の大きな部分を占めているといえます。

ただし、以前のような数百人程度の採用の際にはターゲットを絞ったハイ・タレント戦略を行っていましたが、年間数千人規模の採用になっている現在は、選考への参加資格といったようなアプローチに変化しています。

一方で、北米以外の多くの国ではインターンシップはそこまで活用していません。クラブやリーダーシップカンファレンス、アルバイトなど、さまざまな形で当社のビジネスに触れ、経験を得ることで、学生と当社の双方がお互いを知る機会にしていこうと考えています。

たとえば、当社が行っているオンラインゲーム“Virtual Team Challenge”(チーム制高校対抗ビジネスシミュレーションゲーム)などもその1つです。これは、川で流出した原油の清掃に必要な資金集めをチームで競うというゲームで、高校のカリキュラムのなかで行えるように全5回の授業としてコンテンツを提供しています。

このゲームによって、学生にビジネスに興味を持ってもらったり、大学の専攻分野を選ぶ際や就職を意識した際に、最初にデロイトのことを頭に浮かべるようになってもらえればよいと考え実施しています。

ソーシャルメディア本来の活かし方が、カギになる

リクルーティングにおいて、明らかに変化しているのがソーシャルメディアです。大企業のほとんどは、ソーシャルメディアを通じてブランドを確立し、ファンなどの大きなプレゼンスをソーシャル上に築いています。しかし、ソーシャルメディアを本来の目的通りに利用できているかというと、まだ課題は山積しています。

1対1でのやりとりや、お互いに興味を持ったグループ同士でのリアルタイムのコミュニケーションが本来あるべき形なのですが、その方法は手間もかかり複雑です。だからこそ、どうしたら本当に自分たちの役に立つかを必死に考え、探ってゆけば成功に近づけると思っています。

その点、当社のニュージーランド部門は比較的事業規模が小さいので行動が速く、フェイスブックやツイッターをうまく使ったユニークな試みを多く行い、ほぼリアルタイムでやりとりすることができており、非常に盛り上がっています。

その状況を見ていると、従来のようなキャリアサイトがどの程度必要になるのかは、今後の課題だと思います。ソーシャルメディア上で多くの人が求めている情報は、デロイトがどういう企業かという内容ではなく、従業員やパートナーがどんな一日を過ごしたか、どのような業務を行ったかということです。このことからも、キャリアサイトのコンテンツは将来大幅に縮小されるかもしれません。オンラインジョブボードやキャリアウェブサイトなど関連するすべてにおいて、様相が一変する可能性があると私は考えています。

だからこそ、今後のリクルーターにはテクノロジーに関する興味や知識、能力といったものが重要になると思います。

一方で、グローバル化が進むほどHRに関わる人間の専門化が進むと思います。特に、ビジネス視点からのマーケティングとブランディングのバックグラウンドのある人が、これからも採用ブランディングに対応していけるでしょう。

そして、異なる文化を理解し環境や国民性が異なる地域で人々に受け入れられ、意思決定に影響を与えられるだけの信頼を獲得する――。

非常に難しいけれど、大きなやりがいのある挑戦であると考えます。

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